インタビュー

小児のてんかん-小児科医が診るべきCommon Disease(ありふれた病気)としてのてんかん

小児のてんかん-小児科医が診るべきCommon Disease(ありふれた病気)としてのてんかん
高橋 努 先生

済生会宇都宮病院 小児科 主任診療科長

高橋 努 先生

この記事の最終更新は2016年06月23日です。

小児期に多くみられる疾患のひとつである「てんかん」は、精神疾患であるかのように誤解されている面があります。済生会宇都宮病院小児科主任診療科長の高橋努先生は、てんかんをCommon Disease(ありふれた病気)として、小児科医が診ることができなければならない病気であるとおっしゃっています。小児のてんかんについて高橋努先生にお話をうかがいました。

てんかん自体はどの年齢でも発症しますが、小児期に非常に発症率が高く、30〜40代になると発症する人が少なくなります。その後、アルツハイマー型認知症などと関連して高齢になると再び発症数が増加します。したがって、てんかんは小児で非常によく見られる病気、いわゆるCommon Disease(ありふれた病気)であり、喘息(ぜんそく)などと同じように普通にてんかんの診療を行っていく必要があります。

私自身は、脳波を見ることも小児科医として必要なスキルのひとつであり、てんかんは小児科医として診ることができなければいけない病気であると考えています。もちろん、中には一定の割合で治療が非常に難しい難治てんかんの方もいらっしゃるため、そういった場合はてんかん専門の医師に診てもらう必要があります。しかし、すべてのてんかん患者さんをてんかんの専門医が診るというわけにはいきません。1種類ないし2種類の薬剤でコントロールが可能な初期の方については、一般の小児科医が診るべきであろうと考えます。

多くの小児科医は、脳波を見るといったことについてトレーニングされていないため、どうしても苦手意識があります。しかし済生会宇都宮病院の地域における役割を考えれば、意識消失やてんかんの疑いなどで開業の小児科医から患者さんを紹介されることは非常に多く、そういった部分は自分たちでしっかりと診られるようにしておかなければなりません。

ちゃんと脳波を見て診断をして、治療方針を立てて適切な薬剤を選び、必要に応じて薬剤の変更や追加を行うところまでは、研修に来た医師もできるように指導・協力をしながら診療を行っています。

通常、外来で診ている患者さんの多くは、いわゆる特発性てんかんといって、MRI(Magnetic Resonance Image:磁気共鳴画像)を撮っても何か病気が見つかるわけではありませんが、脳では電気的に異常な興奮が起きてけいれんしてしまうという状態です。特発性てんかんの方は比較的薬物反応がよく、薬が効きやすい方が多いです。特に小児の場合は、一定期間脳波や発作が改善されていて経過がよい方は、薬剤の減薬や中止を検討できることも少なくありません。

一方で小児のてんかんのもうひとつの特徴として、一部の方では基礎疾患があっててんかんを発症している場合があります。たとえば発達障害や脳・血管の奇形など、何か病気があっててんかんを併発するもので、これを症候性てんかんといいます。症候性てんかんは往々にして難治である場合が多く、多剤併用療法が必要になる方もいます。

小児科医である以上、一定の割合で発達障害や脳の先天性の病気を診る機会があります。その中には必然的にてんかんを併発している患者さんも含まれますので、てんかんを発症したからといってすぐにてんかん専門医のところへ行っていただくというわけにはいきません。薬が1種類では効かず、2剤、3剤と使わざるを得ないような難治てんかんの方も、やはり場合によっては一般小児科で診ていくことが必要になってきます。

てんかんは精神的な病気というよりもむしろ脳や神経の病気です。その点でまず世間一般の認識とずれる部分があるのではないかと感じています。もちろん精神疾患の方がてんかんを合併していることもあるのですが、てんかんそのものは純粋に神経の病気ですので、発作をきちんとコントロールすれば日常生活を普通に送ることができます。

てんかんは喘息と似たところがあり、体質的な要因も関わっています。遺伝子というよりはむしろ体質的なものであり、たとえばアレルギーなどのように、ご両親が喘息だとお子さんも喘息だということはしばしばみられますし、同様にてんかんにも家族歴というものが関係してきます。

喘息のお子さんはひとたび発作が起こると苦しい思いをして、そのときは「病気」の状態にあるわけですが、発作がなければみんなと一緒に体育の授業を受けられる子も大勢います。てんかんも発作時以外は普通に学校で生活できますし、みんなと一緒に授業も受けられます。つまり、どちらも通常の社会生活を送れるものなのです。

ただし、そのためには発作が起きることを予防する必要がありますし、発作が起きたときにはそのための治療もしなければなりません。その点でも喘息とてんかんは似ている部分が多いのです。

 

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