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子どもの心の病気にはどのような疾患があるのか―発達障害や摂食障害の発症...
千葉大学医学部附属病院には、「精神神経科・こどものこころ診療部」という、こどもから成人まで、こころの問題の診断と治療を包括的に提供する診療科があります。その中のこどものこころ診療部は、児童思春期...
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子どもの心の病気にはどのような疾患があるのか―発達障害や摂食障害の発症の可能性は?

公開日 2016 年 07 月 14 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

子どもの心の病気にはどのような疾患があるのか―発達障害や摂食障害の発症の可能性は?
中里 道子 先生

国際医療福祉大学医学部精神医学 主任教授

中里 道子 先生

千葉大学医学部附属病院には、「精神神経科・こどものこころ診療部」という、こどもから成人まで、こころの問題の診断と治療を包括的に提供する診療科があります。その中のこどものこころ診療部は、児童思春期のこころの問題を扱う診療部門であり、子どもの発達障害、行動、気分の問題を様々な側面から診療し、支援を行っています。千葉大学「子どものこころの発達教育研究センター」特任教授の中里道子先生は、2005年から2007年までロンドン大学精神医学研究所・モーズレイ病院の摂食障害ユニットに留学され、帰国後に「こどものこころ診療部」で診療や支援に携わってこられました。この記事では、子どもの心の病気にはどのようなものがあるのかについて、中里先生にお話をうかがいました。

児童思春期精神科における「子ども」の定義

現在、心の問題を抱えている子どもや若い方が増えています。「こどものこころ診療部」では主に中学生までの子ども(年齢的には15歳以下の患者さん)を対象としていますが、中には3歳前後の幼児から青年期まで、精神神経科と連携して幅広い年代の児童青年期の患者さんに対して診療を行っています。

子どもの心の病気には何がある? 身体表現性障害や摂食障害などの疾患の種類

【発達の偏り】

「こどものこころ診療部」を受診される方のうち、発達の偏りや不注意、多動の問題を抱える患者さんは、全体のおよそ4分の1を占めています。その中には自閉スペクトラム症-いわゆる発達障害やADHD(注意欠陥・多動性障害)などがあります。

※関連記事:本田秀夫先生記事『自閉症スペクトラムとは―特徴と症状、どんな人が当てはまるのか?』

最近では親御さんや学校の先生方にも発達障害という概念が広く知られており、成人にもADHDや発達の偏りのある方が自ら受診されたり、家族や周囲の方に勧められて受診されることも増えてきました。

【身体表現性障害】

DSM-5の診断基準では操作的診断(横断的な症状のうち何項目当てはまるかによって病名を判断する)によってカテゴリー化されています。

たとえば大人のうつ病(大うつ病性障害)では、2週間以上気分の落ち込み、やる気が出ないなどの意欲低下、興味の喪失、さらに社会生活機能が低下し仕事や学業に支障が生じているというような症状が診断基準となります。

一方、子どもさんの場合は、気持ちの落ち込み・やる気がしないといった症状を自覚できなかったり、言葉で表せなかったりすることがあり、「お腹が痛い」「頭痛がする」「なんとなく疲れる」など身体的な症状として出やすいことがあります。

うつ病の身体症状として腹痛を訴える場合と身体表現性障害は鑑別が難しい

初診時に体の症状(腹痛や頭痛など)が主にみられ、小児科や内科などの身体科において、器質的な検査をしても問題がない場合には精神的な要因の精査のために、紹介いただくことも多いです。そういった方に対しては、どうやら心の問題があるのではないか、つまりうつ病や不安症などの鑑別診断を念頭に置いて診療を行っていきます。

【摂食障害】

欧米では摂食障害の中でも過食症の有病率が高く、イギリスのダイアナ元王妃が過食症を公表されたことを契機に薬物療法や認知行動療法の多施設研究が盛んに行われ、受診する患者さんが爆発的に増えました。

イギリスでは摂食障害の患者さんが専門医の治療を受けるまでの時間が長くかかってしまい、NHS(National Health Service:国営の医療サービス)のシステムでは受診待ちの患者さんが非常に多いという状況がありました。その後インターネットやセルフヘルプといった形で、病院を受診しなくても認知行動療法等のエビデンスに基づく治療のツールが手に入るようになったことで、最近では、過食症の患者さんが減ってきていることが知られています。

千葉大学医学部附属病院精神神経科・こどものこころ診療部では、患者さんの診療に「過食症サバイバルキット-ひと口ずつ、少しずつよくなろう-」(ウルリケ・シュミット・ジャネット・トレジャー著)というモーズレイ病院でも用いられている、成人ばかりでなく思春期の過食症患者さんに対しても有効性が確立されている、認知行動療法セルフヘルプ本を役立てています。

拒食症の患者さんは、心の病気の中でもっとも致死率が高く、非常に危険であるとされています。循環器障害や電解質異常など生命を維持する機能に問題が生じることもあり、自殺率も高いということがわかっています。したがって、摂食障害の中でもとりわけ拒食症の患者さんに対しては、できるだけ早い時期に地域のかかりつけ医を受診され、重症化する前に専門の医療機関で治療を開始することが非常に重要です。

【双極性障害】

子どもの中にもうつ病や双極性障害という病気がみられます。双極性障害は、躁うつ病や気分障害とも呼ばれることがあります。子どもや思春期の若い方の場合、気分が落ち込んでしまっている、あるいは高揚し過ぎてしまっているということがなかなか自覚できない場合があります。

たとえばうつ状態のときには周りから見ても元気がありません。しかし、逆に躁状態になると一転して非常に活動的になり、夜も寝ないで友達と朝まで起きている、あるいは非常にアクティビティが高くなって趣味や勉強に没頭するなど、気分の波がみられます。

このような場合、子どもでも気分障害と診断されることがあり、さらに診察を進めていくと双極性障害だと分かることもあります。

診断を早めにつけて、しっかりと治療方針を定めた上で薬物療法や認知行動療法を行い、長期的に病気と向き合っていくことが必要です。

子どもの心の病気はどのように診断するのか―子どもの行動や考え方から病態を診察する

精神医学の領域においては、ご家族や本人からの問診や病歴を丁寧に聴取し、診察の際の表情や行動、質問に対する患者さんの反応、熟練した精神科医が診察する中で表出する行動、アイコンタクト、その患者さんの置かれている環境、認知や気分、行動などから、総合的に症状や病態を正確に診察する技術が求められると考えています。

たとえば言葉で不安な気持ちや落ち着きのなさ、衝動性など、気分、認知、行動上の問題を表現できない子どもであっても、なんとなくそわそわしたり、自分が座っている椅子をぐるぐる回したりするといったことから診察で明らかにされる症状があるのです。

発達と治療―成長していく子どもの心の病気を治す

最近の研究では、脳の中の前頭前野・前頭葉という領域は、20代以降、青年期〜成人期になってもまだ成長する可塑性(かそせい・神経の働きや機能が変化すること)がある領域だといわれています。治療というとどうしても「元の状態にする」と捉えられがちですが、子どもや思春期の方は発達の途中ですので、まだ柔軟で可塑性があります。そこでしっかりと安心できる環境や、良好な家族関係、社会との関係性の中で、脳やこころの働きを育んでいくことによって、自然に正常な発達を遂げていく時期だといえます。

治療ではチーム全体で患者さんにかかわり、支援する

精神医療ではチーム医療が非常に重要です。私たちの診療科もチーム全体で患者さんにどのように関わっていくかというところを大事にしています。

チーム医療では、チーム全体が患者さんを中心に治療と支援のための関係性を持ち、入院、外来治療では、年代の異なる多職種のスタッフの支援を受けていただきます。こうした環境的な支援や、様々な年代の患者さんとの相互作用により、社会的なスキルを習得できます。

実際、入院治療の中ではデイケアなどで創作活動をしたり、話し合いやレクリエーションのような時間を設けています。その中で若い患者さんもカラオケを一緒に楽しんだり、手芸やゲームをしたりと、様々なことを体験しながら人と関わって、コミュニケーションのスキルを高めたり、人との信頼関係を構築し、社会生活機能の練習をしたりしていきます。

病棟や外来もまた一種の社会ですから、そこで看護師や臨床心理士など、親以外の大人との関係性を持つことが、良好な信頼関係の構築に役立ちます。

また、病棟でのかかわりの中で非常に安心できる環境を体験することによって、たとえ自分が失敗をしてしまっても許されること、とはいえ人を傷つける行為はしてはいけないということを理解し、その中で自分自身の行動を客観的に立て直していくことができます。

就労支援としての集団認知行動療法-やがて社会へ巣立つ子どもたちへ

精神神経科の外来では現在、成人の方を中心に、発達の偏りのある患者さんに対してプログラム化された集団認知行動療法を提供しています。これは一種のグループ療法で、毎回決まったテーマの中で他の人とのコミュニケーションをするというトレーニングです。

この集団認知行動療法は、最終的に就労支援・就職活動に結び付けていくことを目指しています。実際に地域の発達障害支援センターで就労にかかわっている方に来ていただき、就労にあたっての面接の練習など実践的なアドバイスをいただく機会も設けています。

私たちは、患者さんが子どもから思春期を過ぎて青年期になり、いずれ社会に出ていくまでの道標を模擬体験していただくという目的で、さまざまな治療のプログラムを外来と入院診療で取り入れています。そういった行程を子どもたちに経験していただくこと、その方が将来社会で生活していくことを見据えた環境を提供していくことが重要です。

 

小児精神医療(中里道子先生)の連載記事

2005〜2007年にロンドン大学精神医学研究所へ留学、モーズレイ病院の摂食障害ユニットで研修、過食症に対する認知行動療法を学ぶ。帰国後は千葉大学医学部附属病院に新たに発足した「こどものこころ診療部」で子どもや若者の心の問題に対する認知行動療法を軸とした支援・治療に取り組んでいる。2017年より千葉大学大学院医学研究院精神医学特任教授、国際医療福祉大学熱海病院心療・精神科に勤務。

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