【インタビュー】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 b967f14c c157 4fcb b317 f0da890b15e1
不妊の定義・主な原因と病院での一連の検査
現在日本では晩婚・晩産化の増加に伴い、不妊に悩まれる方が増えています。そもそも「不妊(症)」とはどのような状態を指すのでしょうか。また、病院ではどのような検査を行うのでしょうか。多岐にわたる不妊...
Male consulter resolved
クリップに失敗しました

不妊の定義・主な原因と病院での一連の検査

公開日 2016 年 07 月 19 日 | 更新日 2017 年 05 月 08 日

不妊の定義・主な原因と病院での一連の検査
河村 和弘 先生

聖マリアンナ医科大学産婦人科学 准教授 生殖医療センター長

河村 和弘 先生

現在日本では晩婚・晩産化の増加に伴い、不妊に悩まれる方が増えています。そもそも「不妊(症)」とはどのような状態を指すのでしょうか。また、病院ではどのような検査を行うのでしょうか。多岐にわたる不妊の原因や、病院を受診すべきタイミング、一般不妊検査について、聖マリアンナ医科大学病院生殖医療センター長の河村和弘先生にお伺いしました。

不妊とは-日本産科婦人科学会が不妊の定義を変更

日本産婦人科学会は、“避妊をすることなく1年間、通常の性交を継続的に行っているにも関わらず妊娠が成立しない場合”を「不妊」と定義しています。過去、日本ではこの期間を2年間と定義していましたが、WHOなどの諸機関が期間を1年としていたことから、国際基準と合わせるべく2015年8月に定義に変更が加えられました。

日本では女性の晩婚化やキャリア形成指向、その他様々な理由によって、高齢妊娠・出産が増えています。しかし、日本産婦人科学会の体外受精の成績データから、女性は34歳~36歳頃になると妊孕性(妊娠する力)が下がりはじめるということが明らかになっています。そのため、昨年の定義変更により、女性が以前よりも早期かつ適切な不妊治療を受けることに繋がることが期待されています。

女性の不妊の原因とは?

「不妊の原因」と聞くと婦人科疾患などを思い浮かべる方も少なくはないでしょう。しかし、実際には原因の大半を占めるものは「年齢(加齢)」です。前項でも触れたように、女性の妊孕性は34歳頃を境に下がり、36歳頃には明確な低下がみられます。ですから、まずは加齢や老化といったものが妊娠に大きな影響を及ぼすということを、一般の方に広く知っていただくことが大切です。

【不妊の原因となる病気】

続いて、不妊の原因となりやすい婦人科疾患について解説します。

頻度として最も多いものは「子宮内膜症」、次いで「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」が挙げられます。

子宮内膜症

子宮内膜の組織が子宮以外の場所で増殖、発育してしまう疾患で、近年増加傾向にあります。卵巣や卵管周辺で生じた癒着が排卵障害を引き起こしたり、卵管が卵子を取り込む(ピックアップ)ことを障害して、妊娠を阻んでしまうことがあります。

自覚症状には、月経困難症(PMS)や性交痛、排便痛などが挙げられます。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

卵胞の発育に時間がかかり、排卵が起こりにくくなります。若い女性に多くみられる排卵障害で、以下のような自覚症状が現れます。

●月経周期が35日以上

●月経が以前は順調だったのに不規則になった

●にきびが多い

●やや毛深い

●肥満(※)

※欧米人は多嚢胞性卵巣症候群により肥満になりやすく、耐糖能異常や高血糖に陥りやすい環境が作られてしまう傾向があります。しかし、日本人の場合は多嚢胞性卵巣症候群であっても太らないケースが多くなっています。このように、同じ疾患に罹患した場合でも人種差や体質の違いにより肥満のリスクは異なるものとなります。

このほか、子宮筋腫なども筋腫のできた場所によっては妊娠に影響を与えることもあります。たとえば、粘膜下筋腫の一部は不妊と関係があると考えられますが、筋層内筋腫であればよほど大きくならない限り問題にはなりません。漿膜下筋腫であれば妊娠にはほとんど影響を及ぼしません。

コーヒーや喫煙習慣は不妊の原因になる?-現時点では控えたほうが無難

コーヒーなどに含まれるカフェインが不妊の原因となると断言できる科学的根拠(エビデンス)は現時点では見つかっていません。しかし、我々のチームではカフェインについて研究を進めており、現時点では妊娠に影響を及ぼす可能性がゼロであるとはいえない状況ですので、積極的には摂取しないほうがよいでしょう。

喫煙も同様に現在研究中ですので、なんらかの結論が得られるまでは避けたほうが無難といえます。

やせ・肥満が不妊の原因となることもある

やせは不妊の原因になるということは、既に科学的に証明されています。

排卵とは、脳の視床下部からGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が分泌され、これにより下垂体から性腺刺激ホルモンであるFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が分泌されることで起こります。

ところが、正常範囲を超えて痩せてしまうと視床下部の働きが低下し、GnRHが正常に分泌されなくなります。これに伴い卵胞を刺激するFSHの分泌も障害されるため、卵胞が育たず排卵障害となってしまうのです。

一方、肥満については様々な意見があります。たとえば血糖値が上昇して高血糖となってしまうと卵巣にも影響を及ぼします。また、脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインも女性の健康に害を及ぼし、卵胞の発育障害や排卵障害などを引き起こすことがあります。

不妊症の一般検査-不妊を疑い受診したとき、病院ではどのような検査を行うの?

精液検査-検査から治療まで男女2人で取り組みましょう

「不妊は女性のみの問題である」と思われている男性はいまだ非常に多く見受けられますが、不妊治療とは男女2人で行うものです。不妊カップルの約半数に男性に原因があるというデータもあります。

始めに行うべき検査は精液検査です。精液量や精子数、運動率や正常形態率を調べる精液検査は、不妊の一般検査のひとつとして婦人科で受けることができます。

泌尿器科でも精液検査を受けることは可能ですが、男性不妊の多くは原因不明であり、泌尿器科で治療を行うことができる原因は精索静脈瘤など一部の疾患に限られます。

ですから、初めからご夫婦そろって不妊治療を専門に行うクリニックを受診し、検査を進めたほうが、不妊治療が円滑におこなえるでしょう。その上で、必要に応じて泌尿器科で専門的な診察・治療を受けることをお勧めします。

女性を対象とした検査は、原則として侵襲性の少ないもの(体への負担が少ないもの)から行います。また、それ以外に「月経周期」や「排卵のタイミング」なども考慮せねばならない検査が多々あります。

ホルモン検査

月経開始日を起点とし、3日目頃を目安にホルモンの数値を調べる検査を行います。(血液検査)

ホルモン検査は、排卵の前後にも行い、排卵前には排卵を起こすためのホルモン値の変動がみられるか、排卵後にはきちんとプロゲステロンが増えているかどうか(逆にいうと、不妊の原因となる黄体機能不全ではないかどうか)をみます。

そのため、一般的には1回の月経周期中に3回程度のホルモン検査を行うことになります。

AMH検査(抗ミュラー管ホルモン)

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは卵胞から分泌されるホルモンのことを指し、この値を調べることにより卵巣内の残りの卵胞の数の目安がわかります。

AMH検査は近年できるようになった新しい検査であり、自費診療で受けていただくことになりますが、月経周期による変動がなく、採血でわかる便利な検査であり、特に一定の年齢以上の方にとっては非常に有用です。

経膣超音波検査

経腟超音波検査は膣から行う超音波検査です。この検査も月経周期に左右されず行うことができるため、多くの施設では患者さんの受診の度に実施しています。

経膣超音波検査でわかる最も重要な情報は、卵胞の発育過程において「どのくらいの大きさの卵胞が何個育っているか」ということです。

具体的には、「生理から何日目にどのくらいの卵胞が育っているのか」「排卵直前の状態」「(排卵後と仮定されるときに)本当に排卵が起こったか」などを確認します。

クラミジア・淋菌検査

子宮や卵管にクラミジアや淋菌の感染による炎症が起こると不妊の原因となるため、これらの菌を持っていないか、採血もしくは子宮頚管粘膜の培養検査によって調べます。

ただし、子宮頚管粘膜の培養検査では、菌の有無はわかるものの、感染時期を推測することはできません。なぜなら、過去の感染でも子宮内などに癒着が発生することがあるからです。感染時期を特定するには血液中の抗体の有無を調べるほかないため、当院では血液検査を主として行い、その他の情報から現在の感染が疑われる場合は、プラスアルファとして子宮頚管粘膜の採取も行います。

内診台に上がることに抵抗を感じる方もおられますので、まず血液検査のみ行うことは患者さんの心身の負担軽減にもなると考えます。

子宮卵管造影検査(HSG)

卵子と精子が出会う場所である卵管が通っているかを調べる「子宮卵管造影検査」は、非常に重要な検査のひとつです。ただし、この検査は必ず排卵前に行わなければなりません。これは子宮卵管造影検査による卵子の被ばくを避けるためです。

“10 days rule”という言葉もあるように、月経の初日から10日間(※出血がないとき)など、排卵の可能性が極めて低い時期に実施します。

性交後検査(フーナーテスト)

性交渉後に子宮頚管粘膜内で精子が正常に動いているかどうかを調べる検査です。この検査は、排卵日に合わせて行うことが重要です。というのも、排卵日になると子宮口は精子が入っていきやすいよう柔らかくなりますが、それ以外の日はそもそも精子が子宮頚管へと入っていくことができないため、検査を行ったとしてもその目的を果たすことができないからです。

もう一点重要なことは、性交渉を持ってから受診(検査)するまでの時間をなるべく空けないよう心掛けていただくことです。

精子は時間が経過すると死んでしまうため、たとえば検査前日の夜(例:検査時の半日前)に性交渉を行った場合、精子の運動性が悪い原因が時間の経過によるものなのか、はたまた生殖機能の問題によるものなのかが判別できなくなってしまいます。ですから、午前に受診される場合は検査当日の朝に性交渉を持つなど、タイミングを合わせていただく必要があります。

検査を正確に行うためには、月経開始日周辺に病院に行くことが望ましい

このように、不妊の検査には月経周期を基準にして実施日を決めるものが多いため、月経開始日などに受診していただくと検査計画を立てやすくなります。

もちろん、月経周期が乱れている方やなかなか生理が来ないという方でも、人工的に月経を誘発させて検査や治療を行うことは可能ですので、安心して随時受診してください。

日本の生殖内分泌学の第一人者。特に早発卵巣機能不全の治療を専門としており、客員教授を務める米国スタンフォード大学と共同で開発した卵胞活性化法の臨床応用を行い、2013年に閉経した早発卵巣機能不全で世界初の妊娠・分娩に成功した。本治療法は2013年の世界10大medical breakthrough(米国Time誌)に選ばれた。

関連記事