インタビュー

家庭でもできる!子どもが頭を打ったときの応急手当とケアのポイント

家庭でもできる!子どもが頭を打ったときの応急手当とケアのポイント
天笠 俊介 先生

自治医科大学附属さいたま医療センター  救急科助教

天笠 俊介 先生

この記事の最終更新は2016年10月27日です。

子どもが頭を打った直後や受診後は、親御さんが子どもの様子をしっかりと観察し、対応していく必要があります。ほとんどの場合は時間の経過とともに自然治癒していきますが、ごくまれに子どもの容態が悪化するケースもあるので、状況に応じた対応の方法を知っておくことが大事です。引き続き、自治医科大学附属さいたま医療センター救命救急センターの天笠俊介先生にお話しいただきます。

記事1『子どもが頭を打った! どのような症状に注意する?』で述べたポイントを確認し、子どもの意識がないようであればすぐに救急車を呼んでください。意識は「目がしっかりと開いている」「声をかけたときに子どもが目を開く」「目を合わせてくれる」「話しかけたとき普段通りに受け答えができる」「(言葉が話せない乳児の場合)泣いている、あやすと泣き止む」といった点から確認できます。

基本的にはあおむけ(仰臥位:ぎょうがい)に寝かせ、あまり頭や首を動かさないように注意します。

嘔吐している場合は仰向けのままだと吐いたものを誤嚥する危険性があるため、体ごと横向き(側臥位:そくがい)の体勢をとらせ安全を確保しましょう。

側臥位の体勢

首を痛がっているときは頚椎・頸髄損傷(けいつい・けいずいそんしょう)を起こしている可能性もあります。この場合は、首をむやみに動かしてはいけません。頚椎損傷は頸椎という首の骨がダメージを受けた状態で、これにより脊髄の神経が損傷(頸髄損傷)すると、麻痺などの症状が起こる危険性もあります。

患部は冷やしたほうが痛みも和らぎ、血腫も大きくなりづらいので効果があります。子どもが不快にならない程度に冷やしてあげるとよいでしょう。

頭から出血している場合はガーゼか清潔なタオルで出血箇所を押さえた状態で救急車の到着を待ちます。

頭部止血の方法

どのような状態でも、親御さんが慌てたり焦ったりしてしまうと思わぬ事故が発生する恐れがあります。子どものためにも、できるだけ冷静に対処するよう意識してください。​

頭部の傷の程度にもよりますが、軽症(軽い打撲のみでそれ以外の症状がない場合)であれば普段通りに入浴させても問題ありません。ただし、傷口が完全にふさがっていない場合は入浴によって血流が促進され、出血量が増すこともあるので、心配であれば一晩入浴を控えてください。

脳震盪のような症状があった場合は、24時間程度は入浴を控えたほうがいいでしょう。

運動に関しても、頭を打ったあとで目立った症状がみられなければ制限は必要ありません。

帰宅後でも、以下のような症状が出た際には病院を再受診しましょう。

・何回も嘔吐してしまう場合

・痙攣が起こった場合

・傾眠(呼びかけても目を覚まさない、あるいは一度起きてもすぐに眠ってしまう)

・意識がない場合

・ひどい頭痛を訴える場合

・普段と様子が違う場合(機嫌が悪い、いつもと違う反応を示すなど、直感で構いません)

・四肢の動きが悪い、歩行が困難

・見え方の異常を訴える場合

(関連記事:「子どもが頭を打ったあと」時間が経ってから注意すべきこと

基本的に、親御さんが「いつもと様子が違う」と感じる場合は何かが起きている可能性があります。幼い子どもの場合、初対面である医師は初見でその状態が正常かどうかをすぐに判断しづらいのです。親御さんの感覚はそれほど鋭く、我々としても参考にしているので、ぜひ日頃の様子との違いを教えていただけると助かります。

ごくまれに、頭を打った後時間が経ってから慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)という病気が起こる場合があります。

慢性硬膜下血腫は高齢者に多い病気ですが、乳幼児にも稀にみられます。症状は事故後1カ月~3ヶ月以上経過してから出るのが特徴で、年齢によって様々ですが、たとえば意識障害、頭囲拡大、頭痛や嘔吐、片麻痺、けいれん、しびれ、失語(言葉がうまく話せない)、意欲の低下、歩行障害などがあらわれます。子どもにこのような症状がみられ、なおかつ過去に頭を打ったことがある場合は、病院を受診してください。

また、非常に稀ですが、頭蓋骨骨折のあとの進行性頭蓋骨骨折にも注意する必要があります。進行性頭蓋骨骨折は3歳以下の幼児に起こりうる病気で、頭蓋骨骨折後に子どもの成長とともに骨折線(骨にひびの入った部分)が拡大していく病態です。

その他、頭を打った際に顔面にも怪我をした場合、顔面を走行する神経の損傷の疑いがあるケースでは、顔の傷の程度をチェックすることもあります。

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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