インタビュー

子どもの急性脳症の種類と症状ーけいれんに潜む重大な病気とは?

子どもの急性脳症の種類と症状ーけいれんに潜む重大な病気とは?
後藤 知英 先生

神奈川県立こども医療センター 神経内科科長

後藤 知英 先生

この記事の最終更新は2016年12月01日です。

子どものけいれんは珍しい症状ではなく、通常5分以内に治まって回復します。しかし、けいれん重積(けいれんが長時間続く、または意識が回復しないまま複数回けいれんが起こる)に進行するような場合、急性脳症などの非常に重大な病気が起こって後遺症が残ることもあります。今回は急性脳症を中心に、けいれんに潜む危険な病気についてご説明します。神奈川県立こども医療センター神経内科科長の後藤知英先生にお話しいただきました。

記事2『子どものけいれんの原因は「熱あり」「熱なし」で異なる。熱性けいれんや髄膜炎、脳炎、てんかんの可能性は?』では、けいれんで注意すべき病気として髄膜炎や脳炎をご説明しましたが、急性脳症という病気も重症度が高く、早急に見つけて治療する必要があります。

急性脳症とは、なんらかの病原体に感染した際、身体が病原体に対して反応を起こすことで、脳の急激なむくみが生じ、けいれん発作、意識障害、嘔吐などの症状をきたす病気です。とくにけいれんは急性脳症を発症した際の最初の症状であることも多く、けいれんが出現した場合、急性脳症の可能性も考えて診断を進める必要があります。

急性脳症にはいくつかの種類があります。日本やアジアで多く報告されているものの、欧米ではほとんど発症例がないので、おそらくアジア人の体質や遺伝的素因が関係していると考えられます。しかし、詳しい原因はまだ解明されていません。

なお、かつてはインフルエンザウイルスによる急性脳症が目立っていたため「インフルエンザ脳症」と呼ばれていたこともあります。しかし現在、急性脳症は、インフルエンザウイルスに限らず突発性発疹症のウイルスやロタウイルスなど、様々なウイルスを中心とした発熱性の感染症に伴って起こることが知られています。

急性脳症は下記のように、大きく2つのパターンに分けられます。

1、熱が出てから急激に病状が進行するタイプ

2、発熱後、数日かけて意識障害や手足のまひが進行・悪化するタイプ

ここからは、それぞれの急性脳症のタイプについてご説明します。

急激に進行するタイプでは、急性壊死性脳症と出血性ショックを伴う急性脳症という病気が知られています。これらの脳症の場合、発熱後1~2日後にけいれんが始まって治まらず、意識状態が悪化して反応が悪くなります。非常に重症な脳症で多くの患者さんは重い後遺症が残り、場合によっては亡くなることもあります。

ただし、このタイプの急性脳症が起こるケースはとてもまれです。

数日かけて意識障害やまひが出てくるタイプの場合、多くはけいれん重積型(二相性)急性脳症です。最初は、発熱とともにけいれんを起こしますが、多くはけいれん重積状態になります(けいれんが長時間続く、または意識が回復しないまま複数回けいれんが起こるなど)。

その後、一旦は意識が回復し、熱も下がってきますが、最初のけいれんから4~5日後に再びけいれんが起こるのが特徴です。治療後も約7割近くの患者さんに、知的障害や運動障害、てんかんなどの後遺症を残します。

けいれん重積型(二相性)急性脳症の場合、最初のけいれんの時点では検査で異常がみられないのでなかなか診断がつきません。2回目のけいれんが起こったときにMRIの検査を行うと、はじめて画像に異常が現れます。

けいれん重積型(二相性)脳症の発症年齢

けいれん重積型(二相性)脳症は、年間に数百例が発症するとされ、上表のように1歳前後の乳児に多発します。

熱が下がっても再びけいれんが起こる場合も稀にあるので、いったん解熱しても安心せず、1週間程度は再発に注意しながら子どもの症状を観察しましょう。

ほとんどの場合は記事2『子どものけいれんの原因は「熱あり」「熱なし」で異なる。熱性けいれんや髄膜炎、脳炎、てんかんの可能性は?』でご説明した熱性けいれんなど後遺症が残らないタイプですから、あまり心配し過ぎる必要はありません。ただし、親御さんからみて全身状態や意識の状態が悪いと感じた場合は、迷わず医師に相談することが大事です。

 

「こどもの様子がおかしい」と思ったときは、日本小児科学会が運営する「こどもの救急(ONLINEQQ)」も参考にしてみてください。

 

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