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赤ちゃんの胆道閉鎖症の症状――画像・写真で見る便の色や検査

赤ちゃんの胆道閉鎖症の症状――画像・写真で見る便の色や検査
内田 広夫 先生

名古屋大学大学院医学系研究科 小児外科学教授

内田 広夫 先生

田井中 貴久 先生

名古屋大学医学部附属病院 小児外科 講師、東邦大学医学部 非常勤講師

田井中 貴久 先生

目次
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この記事の最終更新は2016年12月22日です。

胆道(たんどう)は、人が食べた食物をスムーズに消化するために欠かせない消化器官の1つです。まれに、この胆道の一部(胆管(たんかん))が何らかの原因によって閉塞(へいそく)している赤ちゃんがいます。この病気は胆道閉鎖症と呼ばれ、黄疸(おうだん)や便の色の異常など、さまざまな症状が現れます。特に便の色の異常は、胆道閉鎖症の赤ちゃんに必ず見られる重要なサインであり、親御さんが日常的に赤ちゃんの便の状態をチェックしておくことで早期に胆道閉鎖症だと気付く可能性が高まります。胆道閉鎖症の代表的な症状から検査について、名古屋大学医学部附属病院小児外科教授の内田広夫先生と、同院小児外科講師の田井中貴久先生にお話しいただきました。

胆道閉鎖症は、新生児期および乳児期早期に発症する病気です。胆道閉鎖症では、上述した胆管が閉塞、破壊または消失しているために、肝臓から腸へ胆汁を送り出すことができません。

新生児の約7,000人に1人が発症し、女の子のほうが男の子よりも2倍多いといわれています。

肝臓から産生・分泌される胆汁(たんじゅう)という消化液には、十二指腸で膵液(すいえき)と混ざり合って、脂肪やたんぱく質を分解するはたらきがあります。胆汁を十二指腸へ流すための通り道は胆管と呼ばれ、肝臓の中では複数に枝分かれしていますが、徐々に合流して太くなり、肝門部(かんもんぶ)という地点で1本になります。

胆管
胆管の解剖図

胆道閉鎖症の典型的な症状は“生後14日以上続く黄疸”“便の色の異常”“濃黄色尿”の3つです。

黄疸目
黄疸の目

ただし、健常な赤ちゃんの場合も、生まれて間もないころには生理的黄疸という生理現象が生じます。生理的黄疸は多くの新生児に見られますが、これは胎外環境に適応するための反応であり、心配する必要はありません。この生理的黄疸と胆道閉鎖症による黄疸との区別は非常に難しいのが現状です。

なぜ黄疸に注意が必要かというと、脳内出血が起きる危険性があることと、気が付かずに時間が経ってしまうと肝硬変になってしまうからです。

胆道閉鎖症による黄疸は、胆汁が腸管に排泄されないために起こります。胆汁が腸管に排泄されないと、脂溶性ビタミンが吸収できなくなります。特にビタミンKが吸収できない状態が続くと、血液凝固(血液を固まらせる)能力が低下します。これによって、脳内出血を起こすリスクが非常に高まるのです。

実際のところ、新生児期や乳児期に脳内出血を起こして緊急治療が必要になった子どもの中から、胆道閉鎖症が見つかるケースは今でも珍しくありません。

ただし黄疸が強い子どもほど脳内出血を起こしやすいというわけではなく、脳内出血には黄疸のほかに何らかの要因が関係していると考えられます。とはいえ万が一脳内出血を起こすと、体に麻痺などの障害が残る可能性があり、またそこで胆道閉鎖症と診断できても治療を迅速に行えなくなるので、注意が必要です。

なお黄疸は、皮膚または眼球結膜(いわゆる白目の部分)に比較的よく現れ、これらの部分が濃い黄色になります。

通常、人の便は黄土色~茶褐色の色味(赤ちゃんでは緑色に近い場合もあります)を帯びています。これは、ビリルビン(赤血球から作られる黄色い色素)が胆汁に排泄されて腸管に流れるためです。

一方、胆道閉鎖症では胆管が消失しているため、肝臓から腸管へ胆汁が排泄されません。これによって、胆道閉鎖症の赤ちゃんの便は灰白色~レモンと、通常よりも薄い色になります。

胆道閉鎖症の患者さんの便
胆道閉鎖症の赤ちゃんの便。通常よりも色が薄い

私たち専門医にとってレモン色の便は異常な所見ですが、これまで多くの赤ちゃんと触れる機会が少なかった親御さんにとっては、それをすぐに異常な所見と考えることが難しいでしょう。また、便の色の薄さを判断する際は、個人的な感覚の差が現れます。ある人が“薄い黄色”と判断した色は、別の方にとっては“普通の黄色”に見えるかもしれないのです。

客観的に便色の異常を判断するためにも、おかしいと思ったときには母子手帳に載っている“便色カラーカード”を参照して便色の確認を行ってください。

便の色が下図の1~3番に該当する場合(または4~7番だったのに1~3番に近くなった場合)は、胆道閉鎖症の可能性があります。

便色カラーカード
母子手帳に載っている便色カラーカード

なお、胆道閉鎖症のスクリーニング事業報告によると、胆道閉鎖症と診断された赤ちゃんのうち、以前から親御さんが便色カードに記入を続けていたというケースは年々増加しています。親御さんには日常的に子どもの便をチェックし、異常がないかを記入しておくことをおすすめします。

胆汁が腸に流れ出ないため、便の色素となるビリルビンが尿中に排出されます。これにより、尿の色が濃黄色に変化します。

胆道閉鎖症と鑑別するべき病気としては、新生児肝炎、肝内胆管減少症、先天性代謝異常症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症などがあげられます。診断にあたっては、これらのような別の病気をしっかりと鑑別する必要があります。

当院では、他の病気と胆道閉鎖症を鑑別するために必要な検査を確実に行うことができます。

下記の一般的な検査は必須であり、これらは多くの一般的な施設でも行われています。

・血液検査

肝機能異常、黄疸、血液凝固異常、新生児肝炎の原因となるウイルスなどを調べます。

・腹部超音波検査

主に胆嚢(たんのう)の萎縮や肝動脈の発達具合などを検索します。

・MRCP(magnetic resonance cholangiopancreatography:MR胆管膵管撮影)

MRCPとは、胆管と膵管に撮影焦点を絞ったMRI検査です。この検査では、胆管が肝内・肝外に見られるかを確認します。

・肝胆道シンチグラフィー

胆汁がしっかりと排泄されているかを確認する検査です。

また、当院ではこれらの検査に加えて、名古屋市立大学小児科講師の杉浦時雄先生との協力体制のもと、遺伝子異常の検索を行っています(検査を希望される方が対象)。

遺伝子検索が加わったことで、肝内胆管減少症(アラジール症候群)、シトリン欠損症、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症、デュビン・ジョンソン症候群など、一般的な検査だけではなかなか見分けることが困難であった病気との鑑別診断が非常に正確に行えるようになりました。

上記に示した検査の結果から、総合的に胆道閉鎖症を診断していきます。

しかし、どうしても胆道閉鎖症と確定診断できない黄疸の赤ちゃんもいます。胆道閉鎖症では診断が確定しないと分かった時点で、手術で鑑別診断を行います。

手術では、胆管の造影を行って胆管が存在するのかを確認します。さらに肝臓組織を1cm片ほど生検することで確定診断を行います。

鑑別診断も全て腹腔(ふくくう)鏡で行えば、胆道閉鎖症でなかった場合の侵襲(体への負担)を小さくできます。

ここまで、胆道閉鎖症の病態や症状、検査についてご説明してきました。記事2『胆道閉鎖症の治療と発展――腹腔鏡下手術で肝移植が不要になる時代を見据えて』では、胆道閉鎖症に対する治療について、名古屋大学病院独自の治療体制を踏まえてご説明していきます。

※記事内の症例写真は全て名古屋大学小児外科ご提供のものです。
 

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