インタビュー

脂肪組織由来幹細胞が日本の医療と産業を発展させるカギになる?琉球大学と沖縄県の取り組み

脂肪組織由来幹細胞が日本の医療と産業を発展させるカギになる?琉球大学と沖縄県の取り組み
清水 雄介 先生

琉球大学大学院 医学研究科 形成外科学講座 教授

清水 雄介 先生

この記事の最終更新は2017年03月18日です。

記事1『再生医療で注目されている脂肪組織由来幹細胞とはES細胞やiPS細胞と並ぶ可能性を秘めている』では、脂肪組織由来幹細胞は再生医療の分野で注目されている間葉系幹細胞の仲間ということをお伝えしました。

引き続き琉球大学医学部附属病院に形成外科特命教授・診療科長の清水雄介先生に、脂肪組織由来幹細胞をはじめとする再生医療研究を取り巻く環境や、地域との連携についてご紹介していただきました。

再生医療のリスク分類

2014年に再生医療等の安全性の確保等に関する法律(通称・再生医療新法)が制定・施行されたことにより、日本国内で幹細胞を治療で使用する際は安全性の確保が求められるようになりました。

再生医療新法では、3種類のリスク分類を行っています。

第1種

iPS細胞などを扱う、遺伝子操作をするなど、高度な研究を実施しており、安全性についても高い基準をクリアしている施設が該当します。

第2種

幹細胞を使用した研究や培養などを行なう施設が該当します。大学や公的機関が所有する研究施設、設備が充実しているクリニックなどが多いです。

第3種

細胞に対する加工はわずかに行われる程度で、一部の美容クリニックなども対象になります。

施設基準や研究内容の範囲の決定は再生医療新法に準じて実施されるため、日本の再生医療研究は制限が多いと感じるかもしれません。しかしこの状態は、現行の再生医療新法に則っている範囲内なら、自由に研究や治療ができるとも捉えることができます。いったんハードルをクリアしてしまえば、国からお墨付きを貰えることになりますので、実は日本は再生医療をはじめ細胞を扱う各種研究が行いやすい国だといえるのです。

アメリカ・中国・韓国など、幹細胞の使用自体を法律で禁止されている国があることを考えると、日本における再生医療を取り巻く環境は、まさに追い風と言えるのかもしれません。

沖縄

再生医療は、病気に悩む患者さんの治療の選択肢を増やす可能性があります。

記事1『脂肪組織由来幹細胞とは再生医療の分野でES細胞やiPS細胞と同じくらい注目されている』では脂肪組織由来幹細胞が持つ可能性の一例として、乳房再建のように患者さんの身体的負担を減らす可能性や、変形性膝関節症肝硬変のように根治療法が確立していない病気に対する使用例をご紹介しました。

医療の目的のひとつは、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることです。脂肪組織由来幹細胞が実用化に至れば治療の選択肢が増えるため、患者さんのQOL向上によい影響を与えるといえるでしょう。

沖縄県は県内の産業創出計画の一端として、先端医療産業の開発と強化に力を入れています。琉球大学が脂肪組織由来幹細胞の研究を開始したのも、県・民間企業・大学(研究機関)による産官学連携の一環として盛り上げてほしいと県からオファーを頂いたことがきっかけでした。

これまでにない研究を始めるとき、莫大な研究費と時間が必要になります。琉球大学が脂肪組織由来幹細胞の研究をして一定の成果を出せるようになったのは、産官学連携を通じて県に協力していただいたことも大きいです。

これは少し将来的な話になりますが、再生医療は地域の産業に対する起爆剤となる可能性があります。かなり先になるかもしれませんが、脂肪組織由来幹細胞を含む再生医療技術を応用した製品を実用化する段階に至れば、今度は品質の管理と製品の保存・輸送ラインの構築を考える必要があります。琉球大学では、品質管理・保存・輸送の各プロセスの実現にあたり、地域の企業や住民の方々にご協力をお願いしたいと考えています。

沖縄県内の所得水準は全国平均よりも低い傾向にあるため、再生医療が沖縄県や日本を代表する産業に成長すれば、県内の産業活性化と所得向上につながると考えています。

先ほど、患者さんのQOL(生活の質)を向上させることが医療の目的だとお伝えしました。今後再生医療が医学研究の一分野から日本を代表する産業のひとつへ大きく成長すれば、より多くの患者さんの病気が治り、地域にお住まいの方々の所得向上につながります。再生医療は関連する多くの方々を元気に、幸せにする力があると確信しています。

 

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  • 琉球大学大学院 医学研究科 形成外科学講座 教授

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