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突然死の可能性もある致死性不整脈の種類と原因

突然死の可能性もある致死性不整脈の種類と原因
川村 祐一郎 先生

旭川医科大学 保健管理センター 教授

川村 祐一郎 先生

この記事の最終更新は2017年04月17日です。

致死性不整脈とは、治療に緊急を要する危険な不整脈を指します。なかでも、脈が異常に速くなる頻脈性不整脈の1つである心室細動(しんしつさいどう)になる方が多いといわれています。心室細動は突然起こり、死に至ることもある危険な不整脈です。そもそもこのような不整脈はなぜ起こり、私たちが予防のためにできることはあるのでしょうか。旭川医科大学 保健管理センターの教授である川村祐一郎先生は、長年、致死性不整脈の研究と治療に取り組んでいらっしゃいます。今回は、同大学の川村祐一郎先生に、致死性不整脈の種類から症状や原因までお話しいただきました。

不整脈とは、脈の乱れのことです。正常な脈である整脈は1分間にだいたい50~100拍の間であるといわれており、脈拍の間隔が一定であることが特徴です。また、心臓には心房と心室という部屋がありますが、整脈では、心房が先に収縮し心室にそれが伝わるという仕組みになっています。これら整脈の特徴にあてはまらない脈のことを、一般的に不整脈と呼びます。

不整脈の自覚症状としてもっとも典型的なものは、動悸です。ほかにも、体が浮いた感覚であるとか、失神に近い症状を起こす方もいらっしゃいます。

このような不整脈のうち、死に至る可能性のある危険な不整脈を致死性不整脈と呼びます。致死性不整脈には、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈がありますが、このうち頻脈性不整脈のほうがより重症といえます。

頻脈性不整脈とは、正常な脈拍が1分間に50〜100拍であるのに対し、250〜300拍近くなるほど脈が速くなる不整脈をいいます。このうちもっとも重症なのが心室細動です。心室細動になると、心臓の心室が1分間に300回以上不規則に痙攣し、正常の脈拍に戻す処置をしなければ、死に至ってしまいます。

一方、徐脈性不整脈は、頻脈性不整脈とは逆に脈が遅くなる不整脈のことです。この徐脈性不整脈の主たる症状は失神であり、死に至る例は少ないです。徐脈性不整脈では、心房から心室への伝わりが途中で切れてしまったり、通常1分間に60拍ほどの脈拍が30拍ほどになったり、数秒間心拍が止まったりするため失神に至ります。

救急車

お話ししたような頻脈性不整脈の中でも、もっとも重症なのが、先ほどお話しした心室細動です。この心室細動になる方は、心臓突然死の患者さんの8〜9割にまで及びます。現状、日本では年に約5万人が突然死しているといわれていますが、その中の約8割は心室細動によって亡くなっているといわれています。心室細動の典型的な例としては、路上で倒れた状態で発見され、救急車で救命を受けるようなことをイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

心室細動まで至らない頻脈性不整脈に、トルサード・ド・ポワンツがあります。トルサード・ド・ポワンツは、一過性心室細動とも呼ばれ、心室細動の一歩手前の状態を指します。心室細動が死に至ることが多いのに対し、このトルサード・ド・ポワンツになると一瞬気を失うことがあっても自ら意識を取り戻す場合も少なくありません。ですが、そのまま心室細動に移り、亡くなることもあるので処置には注意が必要です。

心室細動とトルサード・ド・ポワンツは非常に似ています。発作を起こしているときの心電図を見ても明確な区別は難しいほどです。しかし、トルサード・ド・ポワンツはQT延長症候群(心電図上でQ波の開始からT波が終わるまでの時間が延びる病気)を基盤に起こるのに対し、心室細動は必ずしもそうとは限りません。

トルサード・ド・ポワンツの心電図の様子
トルサード・ド・ポワンツの心電図の例(画像:川村 祐一郎先生ご提供)

また、患者さんにとっての大きな違いは、先ほどお話ししたとおり、心室細動では自ら意識が戻ることは極めてまれであるのに対し、トルサード・ド・ポワンツが自分で意識が戻ることがある点です。

心室細動の原因は、40歳以上の中年~老年の方であれば急性心筋梗塞がもっとも多いでしょう。心筋梗塞では、心臓に栄養を送る血管が詰まるために心筋の一部が壊死(えし)し、心機能が低下します。それと同時に、壊死した心筋の周囲で不整脈が起こりやすくなります。心室細動が起こりやすいのは、心筋梗塞が発症した直後の数日間と数週間以上経過した慢性期であるといわれています。心筋梗塞は、肥満、糖尿病高血圧といったいわゆる生活習慣病の方が特になりやすいため、40歳以上の方は注意が必要です。

苦しそうに胸を押さえる患者さん

一方、40歳未満の方の心室細動の原因では、肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)がもっとも多いといわれています。肥大型心筋症は、心臓の左室心筋の異常な肥大に伴って生じ、左室の拡張機能(左房から左室へ血液を受け入れるはたらき)に障害が出る病気です。

次に原因として多いのは、ブルガタ症候群と呼ばれる病気です。これは、20〜40歳のアジア人の男性に特に多い遺伝性の病気であり、心電図では特徴的な波形をしています。ブルガタ症候群の中で、心室細動になる方はおよそ1,000人に1人くらいといわれていますが、心室細動の発作は突然起こるので注意が必要でしょう。

ブルガタ症候群の心電図の様子
ブルガタ症候群の心電図の例(画像:川村 祐一郎先生ご提供)

トルサード・ド・ポワンツの場合は、お話ししたようなQT延長症候群が原因になり得ます。このQT延長症候群は、2・3割は遺伝の要素がありますが、それ以外は主に低マグネシウムや低カリウムなどの電解質異常、薬の飲み合わせによって起こります。低マグネシウムや低カリウムの状態は、下痢や激しい運動により脱水症状を起こしたときに生じるといわれています。

致死性不整脈の中でも特に危険性の高い心室細動の予防のためには、もっとも多い原因である心筋梗塞にならないよう注意することが大切です。先にも述べたように心筋梗塞は生活習慣病の方が特になりやすいといわれているため、肥満の方は体重を減らす努力をすることやコレステロールが高い方は脂っぽい食事を避けることが有効でしょう。自分で予防することに限界があるなら医師の診断を受け、薬による治療を受けることもおすすめです。そうして心筋梗塞にならないように注意することで、致死性不整脈になる危険性は減ると思います。

体重計

心室細動の原因になり得るブルガタ症候群の方は、何も前兆がなく突然、心室細動を起こします。そのため、予防が難しいという面もありますが、急激な温度の変化に弱いという特徴があります。たとえば、寒い部屋から突然熱いお風呂に入ることは危険であるため注意が必要でしょう。また、薬剤も大きく影響することがあるといわれており、服薬に関しては医師の指導を守ることが大切になります。

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