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糖尿病の治療継続のためにー就労者支援によって、重症化を防ぐ
糖尿病は、日本人にとって非常に身近な疾患です。糖尿病の合併症を防ぐためには継続的に治療を受ける必要があります。しかしその一方で、糖尿病は、未治療・治療中断の患者さんが後を絶ちません。では、糖尿病...
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糖尿病の治療継続のためにー就労者支援によって、重症化を防ぐ

公開日 2017 年 07 月 01 日 | 更新日 2017 年 10 月 24 日

糖尿病の治療継続のためにー就労者支援によって、重症化を防ぐ
浜野 久美子 先生

関東労災病院 糖尿病・内分泌内科 部長

浜野 久美子 先生

目次

糖尿病は、日本人にとって非常に身近な疾患です。糖尿病の合併症を防ぐためには継続的に治療を受ける必要があります。しかしその一方で、糖尿病は、未治療・治療中断の患者さんが後を絶ちません。

では、糖尿病を放置し疾患が進行すると、どのような状態が引き起こされるのでしょうか。また、継続的に糖尿病の治療を受けることができるよう、医療機関はどのような工夫をしているのでしょうか。

引き続き、関東労災病院 糖尿病・内分泌内科の部長である浜野 久美子先生に、糖尿病患者さんの糖尿病の合併症や後遺症から治療継続のための取り組みをお話しいただきました。

*糖尿病患者さんの未治療・治療中断の実態については記事1『糖尿病の合併症を防ぐには継続的な治療が重要-未治療・治療中断の実態からみる糖尿病』をご覧ください。

糖尿病の主な合併症-糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害

糖尿病の治療を継続して受けることは、合併症を防止するためという意味合いが非常に大きくあります。たとえば、糖尿病の治療をせず放置してしまったために合併症が進行してしまった例は多数あります。実際に、中途失明や透析導入の原因の大半は糖尿病であるということもわかっています。

このような糖尿病が原因となり失明につながる糖尿病網膜症や腎臓に障害が起こる糖尿病性腎症や手足のしびれなどの障害を末梢神経に引き起こす糖尿病神経障害は、糖尿病の代表的な合併症です。

目をこする女性

また、重篤な後遺症のリスクが高い脳梗塞や心筋梗塞に罹患する可能性を高めることもわかっています。さらに糖尿病によって細菌などに対する抵抗力が弱まり、感染を起こしやすくなるといわれています。

それ以外にも糖尿病の合併症にはさまざまなものがあり、体中のあらゆる部位に出現する点が大きな特徴です。

 

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糖尿病の合併症を引き起こす要因とは?

たとえば、突然、目が見えなくなり眼科を受診したところ内科に送られ糖尿病の診断を受けるような例もあります。また、入院したときには既に足の壊疽(えそ:皮膚や皮下の組織が死滅し黒色や暗褐色に変色する状態)が進んでしまっており、すぐに足切断の処置をした糖尿病患者さんもいます。

近年は効果的な薬剤など、糖尿病の治療は格段に進歩しました。そのため、糖尿病が原因となり命を落とすようなことはほとんどありません。また、昔のように、糖尿病だからといって足の壊疽を起こし足切断にいたるようなことは、ほぼないのです。

糖尿病の治療の進歩の一方、放置する患者さんは依然多い

しかしその一方、糖尿病の患者さんの寿命は、この30年間で2、3年ほどしか伸びていないといわれています。

それは、正しい知識を持たないまま疾患に罹患し、治療をせず放置してしまう患者さんが数多くいることを意味しています。足壊疽や人工透析の患者さんが大きく減らない最も大きな理由は、記事1でお話ししたような未治療・治療中断のためなのです。

つまり、適切な治療を継続することさえできれば重症化を防ぐことは十分に可能であるにもかかわらず、治療を受けないために重症化してしまう糖尿病患者さんは未だ後を絶ちません。

さらに、専門施設に受診することができないために治療が進まず悪化してしまうケースもあります。非専門施設で抱え込んでしまっている場合もあるからです。この場合、糖尿病の知識に関する教育がないまま適切な治療が施されずに状態が悪化してしまうのです。

このように、糖尿病悪化の原因には、患者さん側、医療者側双方に課題があるというのが現状です。

 

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関東労災病院の糖尿病患者向け就労者支援1:糖尿病教育入院の短期化

私たち関東労災病院では、治療就労両立支援モデル事業と名付けられた就労者支援を行っています。治療と就労の両立支援の実践により事例収集を行い、収集した事例は、各疾病分野の中核的施設に提供することとなっています。これは、勤労者・医療機関・事業場間の情報共有を行い、就労上の問題点の特定と改善、治療を図るものです。

このモデル事業のもと、糖尿病患者さんのための様々な就労支援を行なっています。

2泊3日の教育入院を実現

当院では、以前は2週間の入院を必要とする糖尿病の教育プログラムを組んでいました。しかし、特に就労中の働き盛りの世代で二週間の休暇を取得することは困難であるケースが多くあることがわかってきました。そのため、従来は2週間で組んでいた教育入院のプログラムを2泊3日に改良しました。

トレーニングを受ける患者さん

糖尿病教育入院とは、入院しながら患者さんが糖尿病に関する正しい知識を身につけ、自己管理の方法など療養のためのトレーニングを専門医療スタッフから受けることを指します。具体的には、食事療法における管理栄養士、運動療法における理学療法士、薬物療法における薬剤師、自己血糖測定を含めた検査に関する臨床検査技師、療養生活全般における看護師(糖尿病療養指導士)、さらに医師による糖尿病の療養サポートチームから指導を受けることができる期間です。

当院では、糖尿病の教育入院を通してチーム医療により、患者さんやご家族へ正しい知識を提供するとともに、実践方法について指導させていただいています。

関東労災病院の糖尿病患者向け就労者支援2:入院から外来治療へ

また、当院では、ほとんどの糖尿病患者さんを外来で治療しています。

もちろん、患者さんの状態によっては入院による治療を受けていただく場合もあります。しかし、働きながら治療をしていただくために、長期休暇を取得しなければならない入院ではなく、外来治療を積極的に取り入れています。

外来で診療を受ける患者さん

関東労災病院の糖尿病患者向け就労者支援3:薬物療法の改善

糖尿病の治療では、薬物療法は欠かせません。糖尿病の代表的な薬物治療に、高血糖を防ぐインスリン注射があります。たとえば従来であれば、日に4回のインスリン注射を必要とする場合も少なくありませんでした。

しかし、働きながら1日に4回もの注射をすることは難しい場合も多くあるでしょう。当院では、このような状態を回避するような治療法を適応するようにしています。

 

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関東労災病院の糖尿病患者向け就労者支援4:イーラーニングを適応

お話ししたような入院の短期化や外来へのシフトなど、治療を短期化することに不安を覚える方もいるかもしれません。

教育入院の例を挙げると、もちろん、十分な糖尿病治療の知識の獲得には2週間が必要かもしれません。3食病院の食事をとり、朝昼晩と看護師さんがベッドサイドに来て直接レクチャーを受けることができれば情報量が多いことは確かでしょう。

パソコン

イーラーニングにより知識を得てもらう

しかし、近年はインターネットが発達し、イーラーニングであっても十分な知識をつけることが可能な時代なのです。当院でも、たとえば以下のような糖尿病の知識を得るために有効なサイトを患者さんに紹介させていただいています。

糖尿病ネットワーク」はこちらへ

たとえば、私が担当した患者さんのなかに、50歳で糖尿病の治療を中断してしまった男性の患者さんがいました。人間ドッグで糖尿病が見つかりすぐに受診するよう指導されたのですが、自宅の転居を理由に受診しませんでした。65歳まで放置し、その間に目がかすんできてしまい眼科を受診したところ、糖尿病のために内科を受診するよう指導され当院に来院されました。

教育機関に勤めている方であったため、休暇を取得することが難しく、外来治療を適応することになりました。この方も薬物治療が先決で、知識は後付けでインターネットを通じて学んでいただきました。結果として、体調の改善も得られ、正しい知識を身につけていただけたことで、継続して治療にも取り組んでいらっしゃいます。

なるべく早く糖尿病の治療に取り組み、健康貯蓄をしてほしい

お話ししたように、当院では、患者さんがより仕事と両立しやすい診療体制を整えています。しかし、いくら体制が整備されていても、ご自身で糖尿病の正しい知識や治療の意識を持っていない場合には、治療継続は困難なのです。

患者さんには、自分の体を自分で守り老後に備えるという意識を持っていただきたいと思っています。健康は将来への貯蓄のようなものです。できる限り早く治療に取り組むことで悪化を防ぎ、健康貯蓄をしながら老後も生き生きと活動してほしいと願っています。

 

糖尿病と仕事(浜野 久美子先生)の連載記事

東京大学医学部を卒業後、エール大学(アメリカ)内分泌代謝内科、東京大学病院やNTT関東病院などで経験を積む。糖尿病の治療に携わるなかで未治療や治療中断の実態を知り、糖尿病患者さんの就労支援に携わることを決意。患者さんに寄り添った診療とともに、糖尿病患者さんが治療を継続しやすい体制づくりに尽力している。

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