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インタビュー

肺がんの原因や症状とは-非喫煙者にも増加中なのはなぜ?

肺がんの原因や症状とは-非喫煙者にも増加中なのはなぜ?
岡田 守人 先生

広島大学原爆放射線医科学研究所 腫瘍外科 教授、広島大学大学院医歯薬総合研究科 腫瘍外科 教...

岡田 守人 先生

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この記事の最終更新は2017年08月13日です。

肺がんは、我が国において、罹患率・死亡率がともに高いがんの一つです。昔から肺がんは喫煙が主な原因といわれてきましたが、近年では喫煙に由来しない肺がんも増加しているそうです。

また、肺がんは症状が現れづらく、かなり進行しない限り無症状なことも少なくない点が特徴です。無症状であるため、早期発見には検診を受けることが何よりも重要になります。

特に近年では、診断の精度が向上しているためにかなり初期に発見される方も少なくないといいます。

広島大学病院 呼吸器外科の岡田 守人先生は、ハイブリッドVATSと呼ばれる低侵襲の肺がん内視鏡手術の開発者として世界に知られる存在です。今回は、同病院の岡田 守人先生に、肺がんの原因や症状などについてお話しいただきました。

肺がんの原因として、最もよく知られているものは喫煙でしょう。喫煙は肺がんに罹患するリスクを高めることが既に明らかになっています。

肺がんは昔から喫煙が最大のリスク要因であるといわれており、ほとんどの肺がんの原因は、喫煙であると考えればよい時代もありました。
しかし、近年では喫煙習慣がない方で肺がんに罹患する方が増加しているのです。

肺がんは、全体の10〜15%を占める小細胞肺がんと、約85〜90%ほどを占める非小細胞肺がんの大きく2つに分類されます。

このうち、喫煙が直接的な原因となる肺がんには、主に小細胞がんと非小細胞肺がんである扁平上皮(へんぺいじょうひ)がんがあります。

数十年前であれば全体の半数以下であった腺がんですが、現在では肺がんの7割以上は腺がんです。腺がんは喫煙との関連が比較的薄いといわれており、喫煙習慣のない若い方や女性の罹患が近年増加している点が特徴です。

若い男性

まだ明らかになってはいませんが、この腺がんには遺伝的要因など喫煙以外の要因が深く関係していることが推測され、一方、扁平上皮がんの9割以上は喫煙が原因であることがわかっています。

しかし、毎日2箱以上の煙草を長年にわたり吸ってきたような方であっても、肺がんに罹患しないケースもあります。推測の域をでませんが、肺がんの発症には環境的な要因と遺伝的な要因が複雑に関係していることが考えられています。

近年、腺がんを始めとする肺がんが増加している理由は明らかになっていません。しかし、近年のCT検査の精度の向上など、画像診断の進歩や検診の普及によって、非常に早期の肺がんが発見されるようになったことは影響しているのではないでしょうか。

昔なら見逃されていたような初期の肺がんが見つかるようになってきたため、特に近年では小型の肺がんが増加傾向にあります。

肺がんは気管支ファイバースコープで腫瘍を採取して病理検査を行って確定診断します。腫瘍が小型である場合には、検査では診断できず、手術を行って診断する場合があります。近年はPET(positron emission tomograph:陽電子放出断層撮影)検査も進歩しています。PET検査とはがんに特異的に集積する薬剤を体内に投与し、それを特殊なカメラでとらえて画像化することでがんを診断します。肺がんでもPET検査が適応されるケースは増えており、早期発見の助けになるでしょう。

肺がんは、初期であれば症状がほとんど現れないことが多く、自覚症状がないまま疾患が進行しているケースも少なくありません。肺がんがかなり進行し末期がんに近いような状態でなければ症状は現れないことも多いのです。初期症状では労作時息切れや血痰(痰に血が混じる)がでる場合があります。更に、脳にがんが転移してしまったためにふらつきや四肢の麻痺、骨転移では激痛が生じることがあります。

扁平上皮がんなど太い気管支に発生する肺門(はいもん)型の肺がんでは、病変が気管支など中枢に近いので、咳や血痰などの症状が比較的現れやすいといわれています。一方、腺がんに多い肺の抹消に発生する肺野(はいや)型の肺がんは、胸部写真では診断されやすいものの、なかなか症状が現れない点が特徴でしょう。

肺がんの患者さんを根治(完全に治癒すること)に導くには、いかに早期に腫瘍を切除できるかにかかっています。そのため、肺がんと診断、または強く疑われた場合には、いかに早期に手術を受けることができるかが重要です。手術によって腫瘍を完全切除することができれば、がん根治につながる可能性が高くなるからです。逆にいえば、手術によって完全切除できなかった場合には根治はほとんど望めないことになります。

たとえば、ステージⅠの初期であるIAの8割程度の方は、手術によって5年生存率を達成できるといわれています。5名のうち4名は5年生存することが可能なのです。

しかし、疾患が進行しリンパ節転移などが起こってステージⅢになってしまうと、手術をしても5年生存率は30%以下であるといわれています。重篤な状態を避け長期にわたる生存を可能にするためには、診断されたら可能な限り早期に治療を受けることが何よりも重要になります。

転移の際の症状は、転移した部位によって異なります。たとえば、脳に転移してしまった場合には痙攣(けいれん)やふらつきなどが発生しますし、骨だったらその局所に痛みが生じるでしょう。転移する場所により、現れる症状はさまざまです。

肺がんの主な治療法と治療における今後の展望については記事2『肺がん治療の進化-ハイブリッドVATSとは?』をご覧ください。

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