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十全記念病院のPFM 「安心できる入院」「その日に結果が出る外来」を実現する取り組み

十全記念病院のPFM 「安心できる入院」「その日に結果が出る外来」を実現する取り組み
臼井 岳 先生

医療法人社団 明徳会 十全記念病院 副理事長/PFM・地域医療連携室 室長

臼井 岳 先生

この記事の最終更新は2017年09月20日です。

医療法人社団 明徳会 十全記念病院は、2014年(平成26年)の新築移転と同時に「Patient Flow Management (PFM)」とよばれる入退院管理システムを取り入れることで、より患者さんから信頼を寄せられる病院づくりを実現してきました。さらに珍しい「外来PFM」も取り入れることで、患者さんを待たせない診察を目指す、独自の取り組みをしてきました。

十全記念病院では具体的にどのようにPFMを取り入れ、よりよい病院づくりにつなげているのでしょうか。記事1に引き続き十全記念病院副理事長/PFM・地域医療連携室 室長の臼井岳先生にPFM導入の工夫やメリットついてお話を伺いました。

▼PFMの概要については記事1『PFMとは? 注目される新しい入退院管理システム』をご覧ください。

 

十全記念病院は静岡県浜松市浜北区に位置する、一般病棟・地域包括ケア病棟・療養病棟・回復期リハ病棟の4つの病棟を備えた総合病院です。一般の急性症状の患者さんから、リハビリや療養が必要な慢性期の患者さんまで、患者さんの状態にあった診療を提供するケアミックス体制を整えています。

十全記念病院は1986年(昭和61年)に「協立十全病院」として開院しました。設立当初は特に長期療養、透析およびリハビリを中心とした病院として地域を支えていました。

当院の大きな転機となったのは2014年(平成26年)の新築移転の時期です。このころ病院再編への機運が高まっていたこともあり、移転にあわせ病院の名称を「十全記念病院」としたことに加えて、PFM(Patient Flow Management)という入退院管理システムを導入し、病院設計・運用設計を一新しました。新設された病院のコンセプトは「その日に結果の出る外来」「退院先の見える入院」です。PFMを導入されたことで患者さんにとってよりよい医療を提供できる体制が整い、病院の方向性も大きく変わっていきました。

患者 話し合い

PFMとは入院される前の患者さんの基本情報を事前に集めておくことで、よりよい入院・治療の計画を立てていく入退院管理システムのことです。入院される前に、患者さんの状態や希望などより多くの情報を得ておくことで、入院後の見通しを立ててから入院することが可能になる、入院時に想定されるリスクを回避できるなど、よりよい入院計画を立てることができます。こうした取り組みを行うことで、患者さんは入院から退院までの計画や、入院中の治療についてよく納得してから入院を決めることができ、安心のうえで入院をすることができるのです。

またPFMによってメリットを受けられるのは患者さんだけではありません。PFMによって入退院の管理や、入院中の治療を効率化できることから、院内の医師や看護師などの医療従事者にとっても大きなメリットとなっています。さらに医療従事者の負担が軽減されることで、ひとつひとつの診療により力をいれることができることから患者さんにとってよりきめ細かい対応が実現していくという好循環が生まれています。

当院では「PFMチーム」という組織を病院内に設置しています。当院のPFMチームは看護師や医療ソーシャルワーカーを中心に構成されており、チームの主任者として医師も加わっています。

一般的にPFMというのは「入退院時のマネジメント」と捉えられ、入院で病院にいらっしゃる患者さんのみを対象とするものだと考えられがちですが、十全記念病院ではPFMを入院時だけでなく、外来時にも導入する取り組みを行っています。さらに入院・外来それぞれのPFMのメリットが最大限に引き出せるよう、病院独自の工夫を取り入れています。

ここからは十全記念病院では入院時・外来時それぞれどのようにPFMが導入されているのかをご紹介していきましょう。

入院PFMでは、病院へ紹介されてくる患者さんの診療情報を医師が確認したのち、さらに必要な情報をもらえるよう紹介元の病院へ連携をとることで、より良い入院計画を立てられるように進めていきます。

さらに当院では、そうした対応に加えて入院前に必ず患者さん、あるいはそのご家族が集まる面談の機会を設けています。この面談では患者さんの現在の体調や症状についてはもちろん、退院後の予定や、入院後の治療方針、入院中に悪化した時のリスクなどについても話合います。こうして入院前に患者さんとご家族とお話できる機会を設けることで、入院後のトラブルはとても少なくなりました。また、なによりもこうした話し合いの場によって「退院後」をしっかりと見据えた入院計画を立てることができます。患者さんとご家族だけでは「入院すること」だけを考えがちですが、面談の機会でPFMチームがサポートしていくことで、その先の「退院」を見据えた計画が立てられます。こうした取り組みによって患者さんとご家族はとても安心されます。

入院PFMで入院前に患者さんの基本情報を収集していましたが、外来PFMでは患者さんが診察室に入る前までに患者さんの基本情報を収集していきます。こうして医師による診療をうける前までにより多くの情報を明らかにして整理することで、よりスムーズに的確な診療を行うことができるのです。

外来PFMはこのような流れで進んでいきます。

【総合受付】

来院された患者さんは総合受付へと向かい、初診受付を済ませます。初診受付を終えるとPFM受付へ案内されます。

【PFM受付】

[こちらのお写真を活用させていただいてもよろしいでしょうか。ご検討いただけたら幸いです。]

当院にはPFM専任の看護師がおり、受診前の問診を行います。PFM受付にはオープン・クローズそれぞれ3つのブースがあります。オープンのブースではお話しにくい内容である場合には、個室になっているクローズのブースをご活用いただくことで、患者さんのプライバシーを守る設計にしました。

PFM受付で専任看護師が患者さんの問診を直接とることによって、患者さんが主体的に記入される問診票よりも正確で適切な事前情報が集まります。担当医師はこの問診情報を確認してから、診察~検査~治療へと進めていくことができます。

また紹介状を持っていらっしゃった患者さんの場合では、紹介状の情報から具体的な症状や希望検査の内容などが記載されていることが多々あります。その際にはPFMから医師へ適切に情報が伝達され、診察前に検査を進めることも可能です。

【診察】

診察室で医師による診療を受けます。先ほどのPFM受付で詳細な問診情報が得られていますので、診察や検査の判断をよりスムーズに行うことができ、治療方針をより正確に適切に決定し診療の質を向上していくことができるようになります。

また診察前に検査を行い、診察室に入る前に検査結果が出ていれば、診察室で医師の診療を受けるときには検査の結果を踏まえた診断・治療を進めることができるようになります。

当院ではこうした取り組みによって、受診の当日にほぼ全ての検査を行い、その日に結果を得ることができる「その日に結果の出る外来」を実現しています。

当院では外来に訪れる初診患者さん全員にPFMを導入しています。そこで患者さんが院内で迷わないように、病院を新築移転するときに患者動線にこだわった設計を行いました。

このように当院は全長123mのわかりやすい一本道の構造になっています。それぞれの診療科の位置もわかりやすくなるよう、適切なサインが細かく設置されており、各診療科の受付も一本道に沿って配置されています。このような構造のため、ほとんどの患者さんが目的の場所に迷うことなくたどり着くことが出来ます。

このように当院ではPFM導入の取り組みによって、患者さんがよりスムーズで安心できる医療をうけることができるのです。

臼井岳先生

PFMは入院・外来 いずれにも対応可能な【Innovation:革新】である。

PFMは『地域包括ケアシステム』を補完する【solution:解決法】のひとつである。

少し大袈裟ですが、今はこのように考えております。

十全記念病院ではPFMの導入により、患者さんの満足度の向上とともに受診者数も増えてきました。

そして医師や看護師の業務負担の軽減や、患者さんを紹介いただく医療機関との連携強化、そして病院の経営改善にもつながりました。

PFMを適切に導入することで様々なメリットを生み出すことができていると感じています。

私達は今後さらにPFMを強化し、地域医療により貢献できるように尽力していきたいと考えています。

 

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  • 医療法人社団 明徳会 十全記念病院 副理事長/PFM・地域医療連携室 室長

    臼井 岳 先生

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