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カンピロバクター腸炎の治療と予防

カンピロバクター腸炎の治療と予防
仲瀬 裕志 先生

札幌医科大学附属病院 消化器内科 教授

仲瀬 裕志 先生

この記事の最終更新は2017年10月17日です。

カンピロバクター腸炎とは、カンピロバクター属の細菌に感染することよって引き起こされる感染性腸炎の一つです。カンピロバクター腸炎を発症すると、下痢や腹痛に加え、嘔吐や発熱などの症状が現れます。

カンピロバクター腸炎の予防には、生肉を避けることや肉の加熱などが有効であるといいますが、体調管理も大きな意味を持つそうです。それはなぜなのでしょうか。

今回は、札幌医科大学消化器内科学講座 仲瀬 裕志教授に、カンピロバクター腸炎の治療や予防についてお話しいただきました。

カンピロバクター腸炎の原因や症状に関しては、記事1『カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?』をご覧ください。

記事1『カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?』でお話ししましたが、カンピロバクター腸炎は、食事から感染することが最も多いでしょう。たとえば、豚肉や鶏肉などに付着していることが多く、これらの食べ物から感染する可能性があります。

鶏肉

特に、生肉や半生の状態の肉は感染の可能性が高く、危険です。カンピロバクター属菌は、食用肉の表面に存在することが多いといわれているので、表面をよく加熱することが予防につがるでしょう。

また、食事による感染よりは頻度が少ないと考えられますが、犬や猫などのペットから感染することもあります。特に、ペットの便から感染するケースが多いため、ペットを触った後や便の処理をした際には、きちんと手を洗うことが感染の予防につながるでしょう。

記事1『カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?』でもお話ししましたが、ストレスや疲れが蓄積され体調が優れないときには、腸内環境が乱れやすくなります。このように腸内環境が乱れた状態であると菌に感染しやすく、腸炎を発症し重症化しやすいといわれています。

腸

このため、ストレスや疲れをなるべくためず、体調を整えることが重要になります。さらに、体調が優れないときには生肉は避けるなどの工夫も予防につながるでしょう。

また、近年の研究では、一週間食事の内容を変えるだけで、その人の腸内細菌を変化させることができるということが明らかになっています。たとえば、一週間、野菜を多く摂取することで、腸内環境は大きく改善されるでしょう。

私は、腸内環境をよくするために、食物繊維を1日につき18グラム以上摂取するよう指導しています。これは、腸内細菌叢を良好に保つことに加え、狭心症などさまざまな疾患の予防にもつながるでしょう。食物繊維は、ひじきやブロッコリー、ごぼう、おからなどに豊富に含まれています。食物繊維を気にしつつ、バランスのよい食事を心がけ腸内環境を整えることは、カンピロバクター腸炎の予防にも有効でしょう。

カンピロバクター腸炎の多くは、自然治癒するといわれています。基本的に、菌が体の外にすべて出てしまえば治癒する疾患なのです。しかし、なかには敗血症(全身症状を伴う感染症)など重篤な疾患を呈する方もいます。その場合には、抗菌剤による治療が必要です。

薬

カンピロバクター腸炎の治療法は、すでに確立されています。多くのケースは、抗生剤(細菌を死滅させ感染を防ぐ抗生物質からつくられた薬剤)を服用することで改善されるでしょう。なかでも、ニューキノロンと呼ばれる薬剤が適応されることが多くあります。

記事1『カンピロバクター腸炎(食中毒)とは?』でお話ししたように、私もカンピロバクター腸炎の経験者の一人です。私は腹痛や下痢に加え、高熱や筋肉痛まで現れましたが、抗生剤の服用によって症状が一気に改善されました。

カンピロバクター腸炎による死亡例はほとんどなく、予後は良好であるといわれています。しかし、近年、カンピロバクター属菌に感染した方のなかには、ギラン・バレー症候群(GBS)を発症するケースが報告されています。

グラン・バレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経が障害されることで発生する神経疾患の一つです。力が入りにくい、しびれる、などの症状が全身に現れる点が特徴です。

私たち消化器内科からみると、カンピロバクター腸炎は、胃腸炎でおわるのですが、神経内科では、「カンピロバクター腸炎をみたら、ギラン・バレー症候群を疑え」といわれているのです。

これは、カンピロバクター属菌の成分に対して生じた抗体が、ギラン・バレー症候群の発症に関連する神経組織のガングリオシドに対して免疫反応を生じるためであるといわれています。体のなかでカンピロバクター属菌に対する抗体反応ができれば、ガングリオシドに対しても、敵とみなし攻撃することになります。

このように、近年では、カンピロバクター腸炎の発症をきっかけにギラン・バレー症候群を発症するケースがあるのです。

我々消化器内科医も、カンピロバクター腸炎の診断後には、何週間か後に神経症状が現れる可能性があることを伝える必要があるかもしれません。もちろん100%ではありませんが、もしも神経症状が現れたら病院を受診するよう伝えることが重要になっていくでしょう。

仲瀬先生

カンピロバクター腸炎の多くは、治癒が可能であり予後も良好です。しかし、ギラン・バレー症候群など重篤な疾患につながる可能性はゼロではありません。

体調が優れないときには生肉を避ける、十分に加熱するなど、十分な注意が必要でしょう。

また、私は、カンピロバクター腸炎の予防には、普段の食事が重要になると考えています。和食は日本人にあった食事であり、世界が認めるヘルシーな料理法です。普段の食事を和食中心にして、食物繊維をとるように心がけるだけで腸内環境の整備につながります。腸内環境が良好な状態になれば、カンピロバクター腸炎の発症のみならず、あらゆる疾患の予防につながるでしょう。

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