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インタビュー

子宮体がんの検査—痛みはある?

子宮体がんの検査—痛みはある?
永瀬 智 先生

山形大学医学部附属病院 産科婦人科 教授

永瀬 智 先生

この記事の最終更新は2017年11月20日です。

子宮体がんは、子宮内膜から発生するがんです。おりものの異常や不正出血があった場合、子宮体がんの検査を実施して、診断します。今回は、子宮体がんの検査の流れについて山形大学医学部産科婦人科教授である永瀬智先生に伺いました。

子宮体がんは、手術で根治する可能性の高いがんで、症状が出てから治療をしても良好な治療成績が得られます。子宮体がんは、かなり早い段階から出血があるので、検診でがんを見つけた人と症状が出てから検査を受けた人で、治り具合や生存率にあまり差はありません。

一方、子宮頸がんに関しては、症状が出てから治療した人よりも検診で見つけたほうが、生存率もよいです。そのため、子宮体がん検診の重要性というものは子宮頸がん検診ほど高くなく、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針 住民健診」の項目にも入っていません。したがって、子宮頸がんのように20歳以上から、といった検診プログラムができていないのが現状であり、何歳以上であれば受けてください、ということがいえません。

また、子宮頸がんの検診と比べると検査に伴う痛みが大きいこともあり、山形大学医学部附属病院では、何歳以上の方全員に検診をすすめるということは行っていません。しかし、閉経後に出血があった場合、不正出血を繰り返す場合、あるいは、超音波検査で子宮内膜が厚い場合などは検査をすすめています。

婦人科
皆さんに知っていただきたいことがあります。

よく検診で子宮がん検診」とありますが、その場合、子宮頸がんの検診を指すのであって、その中に子宮体がんの検査は含まれていないのです。

これには歴史的な背景があります。そもそも日本で子宮がん検診が始まった1960年代頃、子宮体がんの患者数は少なく、「子宮がん=子宮頸がん」との認識が一般的でした。

今では子宮体がんの患者さんが増えてきているため、私たち医師は「子宮頸がん」と「子宮体がん」を明確に分けています。

ただ、行政ではその名残りで、「子宮頸がん検診」のことを「子宮がん検診」としています。そのため、一般の方に誤解を与えやすくなっているのです。

子宮がん検診で異常なしの結果の場合、子宮頸部も子宮体部も異常なしだと思ってしまう方がいます。しかし、子宮頸部に異常がなかったとしても、子宮体部に異常がある可能性は当然あります。不正出血があった場合は、子宮頸がん検査だけではなく、子宮体がん検査も受けましょう。

一般的な子宮体がん検査の流れは、次のとおりです。

子宮体がん検診

1:問診・内診

婦人科に行きましたら、まず問診票に記入をして、医師や看護師から気になる症状はないか、いつから不調があるかなどの質問に答えます。

次に、内診です。内診では子宮の大きさをみたり、押して痛いところがないかどうかなどをみます。そして、クスコ膣鏡という器具で膣の中や子宮の出口に異常はないかを確認します。

2:経腟超音波検査(希望による)

問診・内診のあと、気になる症状があった方、検査の希望があった方に対して、まず経腟超音波検査で子宮内膜が異常に厚くなっていないかどうかをみます。

症状がない方でも、超音波検査をして子宮内膜が異常に厚くなっている場合は、細胞診をすすめます。

閉経後と生理のある方では子宮内膜の厚さの基準が異なるため、その方の年齢に応じて判断します。閉経後に子宮内膜の厚さが5mm以上であれば、不正出血などの症状がなくても細胞診をすすめます。検査は、超音波検査と細胞診合わせて、10分程度で終わります。

3:細胞診

がんの疑いがあるかどうかを調べる検査として、細胞診があります。ブラシのような器具を子宮の中に入れ、子宮の中をこすって細胞をとる検査です。

子宮体がんは、がんがあっても細胞診で陰性と判断されることが10%〜20%ある(クリニカルカンファレンス(腫瘍領域);1.子宮体癌の診断から治療まで)ことが知られているため、陰性であっても出血が続く場合は、再検査を行う、あるいは、経過をみていく必要があります。子宮体がんは、子宮頸がん検診とは違い、目で見えないところを検査するので、うまくがんの部分が採取されない場合もあり、1回の検査で見つからない場合があるのです。

組織診については、下記で詳しくご説明します。

不正出血がなく、特に気になる症状がない場合は毎年検査を受ける必要はないですが、家系内に子宮体がんが多く発症している家系の方や、乳がんの治療薬であるタモキシフェンを内服している方などは毎年受けたほうがよいと思います。

また、診察で子宮体がんを疑って検査を行う場合は、保険診療での検査になります。

細胞診

陰性(Ⅰ〜Ⅱ)・疑陽性(クラスⅡb〜クラスⅢb)・陽性(クラスⅣ〜クラスⅤ)の3段階で評価されることが多いです。疑陽性・陽性の場合は、子宮内膜組織診を行います。

細胞診で疑陽性と診断された場合、最終的に子宮体がんだった割合は、10%程度です。陽性の場合は約80%ががん、約10%ががん一歩手前の子宮内膜増殖症、約10%が異常所見なしです。

組織診では、金属でできた耳かきのような器具で子宮内膜をカリカリと削って採取します。外来で行うことが大部分ですが、入院して麻酔をかけて掻爬(内膜組織をかき取る)をすることもあります。検査結果は、1~2週間ででます。

組織診で子宮内膜増殖症と診断された場合、子宮内膜増殖症でもがんにすすんでいく可能性が高い場合と低い場合がありますので、治療法は変わります。子宮体がんだった場合は、速やかに治療を始めます。

リスクとしては、子宮の中に器具を入れるため、器具が変な方向に入り子宮に小さな穴が開いたり子宮頸管が傷ついたりする恐れがあります。また、検査の後に出血が多くなったりすることもあります。

また、出産経験のない方・帝王切開で出産した方は、痛みが強い場合があります。

細胞診と組織診は、どちらも子宮の奥に器具を挿入するため、子宮頸がんの検査と比べて多少痛みがあります。出産したことがない方、帝王切開での分娩の方は子宮頸管が狭いため、痛みが強い場合が多いです。

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