インタビュー

子どものADHD症状にはどう対応する? 年齢別の症状と対応

子どものADHD症状にはどう対応する? 年齢別の症状と対応
門田 行史 先生

自治医科大学附属病院 とちぎ子ども医療センター 准教授

門田 行史 先生

この記事の最終更新は2017年11月25日です。

ADHDは、衝動・多動・不注意の症状により日常生活に支障が出てしまう発達障害です。1学級あたり1〜2人程度はいるのではないかといわれる、決してめずらしくない発達障害といわれます。子どもに落ち着きがない、いつも学校で先生に叱られてばかりいる、友人とのトラブルが多いなどといったものは、もしかするとADHDの症状によるものかもしれません。子どものADHDの症状について、国際医療福祉大学病院 小児科 部長・准教授の門田 行史先生にお話をうかがいました。

走り回る小学生

ADHDの症状は、大きく多動・衝動・不注意にわけられます。一般的にはどの症状も現れるといわれますが、年齢により、目立ってくる症状やその強さには差があります。以下では、年齢ごとの症状の現れ方について解説します。

この時期は、定型発達児であっても子どもらしい活発さがあるものです。しかし年齢を重ねても、多動が減っていかないという特徴が出てきます。

0歳ごろ:音や光などに過敏である、夜泣きやかんしゃくなどが激しい、なんとなく育てにくさを感じる

1〜5歳:年齢とともに多動が減らない(落ち着かない)、主に多動・衝動が強く不注意は目立たちにくい

この時期になると、学校生活のなかで徐々に不注意の症状が出てくるようになります。

6〜8歳:多動・不注意がともに目立つ

9〜12歳:多動が少しずつ減ってくるが、不注意が目立つ。二次障害(自尊心の低下や不登校など)が出てくることがある

幼少期から不注意症状しか出てこない例(女児に多い)もある

このころになると多くは多動が落ち着き、不注意の症状が中心です。自身のADHDの症状を理解して、適切に対処でき周囲の協力を得られるケースと、二次障害を抱えるケースの2パターンにわかれ、個人差が出てきます。

13〜18歳:不注意が中心。多動は影を潜め、不注意しか出てこない場合もある。

ADHDの症状への対応(治療)には、薬による治療のほかに

  • 環境調整
  • ペアレントトレーニング
  • ソーシャルスキル・トレーニング

などの心理社会的治療があります。

環境調整とは、ADHDの子どもの周囲の環境(家庭や学校など)を調整し、子どもが自信をもって生活でき、自分の症状を前向きに理解して行動できるようにするための方法です。

大きくは次の3つのステップで進めていきます。

  1. 情報を減らして困難さを予防する
  2. 周囲の理解者を得るために交渉をする
  3. 最終的に、症状が出ても困らないためのアイデアを自身で生み出せるようになる

(1) 入力情報を減らして困難さを予防する

ADHDの患者さんは集中すべき場面であっても、ほかの子どもであれば気にならないような教室内のガヤガヤした音や教室の壁に貼られた掲示物などに反応してしまい、すぐにそちらに気を取られがちです。そのため、まずはADHDの子どもの抱える困難さを理解し、次に、掲示物を減らす、座席は先生の前に用意するといった、外から入ってくる情報を減らしてゆきます。

(2) 周囲の理解者を得るために交渉をする

他の子が気にならないようなことに過敏になってしまうため、症状があることを伝えなければ周囲の理解が得られないことがしばしばあります。そこで、入力情報を減らすほかに、周囲にサポートをお願いすることも大切です。小さいころは保護者や教師などが主体となり、「その子にとって困難な入力情報はなにか?」「困ってしまったときの対処(短時間、静かな場所へ避難することを許してあげる、など)」について皆が理解できるようお願い(交渉)をしてゆきます。

(3) 最終的に、症状が出ても困らないためのアイデアを自身で生み出せるようになる

最終的には、自身のADHDの症状を理解し、自ら周りに交渉する、またはADHDの症状が出ても困らないアイデア(積極的にメモをとるなど)を考え、実践します。

ここまでできるようになれば、たとえADHDであっても症状と向き合いながら自信をもって学校に通ったり、就労したりすることができることが多いです。

友達と話す中学生

この時期の環境調整は、自身の症状を理解したり、周囲に交渉したりすることができないため、保護者が主体となって園などの周囲に協力を求めます。あわせて、保護者も子どもがADHD症状による困った行動に出た際に、ただやみくもに怒るだけでなく、むやみに反応しない、その行動を止めたときに褒める、など適切な対応を学び、実践していく必要があります。

この時期になると、徐々に自身の症状に気が付くようになります。そのため、他の子どもと異なることを理解し、さらに、失敗体験が増えてゆくと「頑張っても自分だけ上手くいかない。どうせ自分は……」といった、自尊心の低下を表す発言が出てきます。

この際に、ADHDの症状があっても適切に対応すれば上手くいくこともたくさんあるという、成功体験を積み上げてゆくことが大切です。そのために、保護者が寄り添いながら本人と一緒に周囲の理解を得るために交渉をしてゆきます。

交渉に必要なことは、症状を消そうとはせずに受け入れ、周囲に伝えることです。加えて、自分の症状がどういったものか理解して、それに対しどのように行動すべきか、保護者の方と一緒に考えていくことも必要となります。

ADHDの症状が影響して困難さを感じることは学校生活でたくさんあるかもしれませんが、困難のなかで成功体験を積むためには、「本人や保護者が症状を知ること」に鍵が隠されています。

思春期になると、自立のために本人が自身の力で適切に症状理解、対処ができるよう自ら交渉してゆきましょう。周囲の大人、友人へ自分の症状を説明します。このとき、必ずしもADHD等の病名をいう必要はありません。困る可能性がある行動について説明すれば十分です。

この際には当然、説明を聞く側が持つ性格や考え方、そのときの自身の立場を考えながら交渉をする必要が出てきます。そこで、保護者は見守りに徹しながらも、社会人の先輩としてよき理解者となりサポートしてゆくことが大切です。

親子で笑い合う様子

環境調整のほかにも、保護者の行動を変え、子どもとの適切なコミュニケーションを学ぶ「ペアレントトレーニング」や、子どもが集団のなかでどのように振る舞うことが望ましいかを実践的に学ぶ「ソーシャルスキル・トレーニング」も行われます。

国際医療福祉大学病院小児科では、近隣の市町村と連携して、「CARE」と呼ばれる保護者や教師など子どもに関わる大人に向けたワークショップを定期開催しています。関わる子どもの発達障害の有無は問いません。

行動のよし悪しにかかわらず、子どもの行動を客観視することで、好ましい行動にも注目しやすくなります。そしてよく褒めることで、子どもは自信を持つことができます。

このような対応の仕方を、ケアトレーナーのもと、大人同士でロールプレイして点数化することで実践につなげていきます。これらの取り組みは、結果的にADHDなどの発達障害の症状理解につながると考えています。

ADHDは、年齢と比べて、成長の過程で積み上げられるべき能力がゆっくりと育まれていくものであるという点を理解することが大切だと考えます。決してほかの子どもと比べて、あれもできない、これもできない、というわけではなく、ADHDの特性があるからこそ得意な分野で類まれな才能を開花したり、人を気遣うことができたりというよい面もたくさんあります。ですから、もしお子さんにADHDの症状があるからといって困難さだけに注目せず、医師などの専門家のサポートを受けながら、そのお子さんのよいところを伸ばせるよう、保護者の方も見守ってください。

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