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超高齢社会を迎えた日本の医療の行く末―慢性期医療のあるべき姿とは
2025年には2,179万人、日本国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると予想されています。この超高齢社会を前に、医療を含めた日本の社会保障は危機に直面しています。その崩壊の足音はすでに...
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超高齢社会を迎えた日本の医療の行く末―慢性期医療のあるべき姿とは

公開日 2018 年 01 月 28 日 | 更新日 2018 年 01 月 29 日

超高齢社会を迎えた日本の医療の行く末―慢性期医療のあるべき姿とは
武久 洋三 先生

平成医療福祉グループ 代表 / 日本慢性期医療協会 会長

武久 洋三 先生

2025年には2,179万人、日本国民の4人に1人が75歳以上の後期高齢者になると予想されています。この超高齢社会を前に、医療を含めた日本の社会保障は危機に直面しています。その崩壊の足音はすでに聞こえており、急性期病院に1年以上の長期入院をしている寝たきりの高齢者が多数いるなど、急性期病院は本来の役割に徹することができなくなりつつあります。

超高齢社会を迎える日本の医療の行く末はいったいどうなってしまうのか。2025年問題を解決するための策とはいったい何があるのか。日本の医療の現状と慢性期医療のあるべき姿について、日本慢性期医療協会 会長の武久 洋三先生にお話をうかがいました。

慢性期医療とは―急性期、地域包括期とのちがい

患者さんの自立を目的に、医療ケアを施しながら病気の治癒を目指す医療

高齢者が入院する様子

慢性期医療は、病気の治療をし、リハビリテーションなどを行って患者さんの自立を支援する医療を指します。患者さんの状態は大きく「急性期」「地域包括期」「慢性期」の3段階にわけられます。

急性期は、患者さんの状態が刻一刻と変わる時期です。患者さんの容態が急変する可能性もあることから、医療においても患者さんの変化にすぐに対応することが求められます。また、急性期には2種類あり、「高度急性期(広域急性期)」と「地域急性期」があります。すなわち、「高度急性期(広域急性期)」は、遠くからでも患者さんはやってきますし、特殊で高度な医療を行っています。そして「地域急性期」は、主に近くの地域から患者さんが来ます。行っている手術や処置な一般的なものが多いのです。

そして、地域包括期は広域急性期の急性期とは違い、地域急性期を含む軽中度の急変患者を含み、リハビリテーションを集中させ、日常生活に戻ることを目指す時期です。

慢性期は、病状がおおよそ安定し、治癒を目指すと同時に病気やけがの再発予防や、栄養や水分の補給やリハビリテーションをして日常に帰る治療を行う時期です。また慢性期の急変患者も受け持ちます。

このように、各時期に応じて求められる医療は変わります。そのため、日本の病院は急性期病院、地域包括ケア病棟、慢性期病院と、病院や病棟により役割が決まっています。

日本の病院には、慢性期の患者さんがたくさんいる

日本の一部の急性期病院ではベッドの空きが多い

総合病院

厚生労働省の「平成27年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、日本の病院における一般病床(主に急性疾患の患者さんを対象にした病床)は約90万床です。それに対し、療養病床(主に慢性疾患の患者さんが対象の病床)は約33万床となっています。

日本は、世界的にみても人口に対し病床数が多く、特に急性期病床が過多であるといわれています。事実、200床を有する急性期病院で60床程度しか埋まっていないという話を耳にすることもあります。

さらに、急性期病院に入院している患者さんの多くは、高齢者です。全入院に対し後期高齢者が占める割合は70%を超え、80%に迫る勢いとなっています。入院している高齢者のうち、1年以上の入院をしている方もめずらしくありません。

「空きのベッドを高齢者が使えているのなら、それでいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。しかし、ここに日本の医療が抱える大きな問題が潜んでいるのです。

「社会的入院」は、患者さんのQOLを下げ日本の医療費を逼迫する

冒頭で述べたように、急性期医療は刻一刻と状態の変化する患者さんに対応する病院です。急性期病院は患者さんの容態の変化への対応はできますが、体力維持のためのリハビリテーションや、自立に向けた支援は基本的にほとんど行えません(一部、それらを実施している急性期病院もあります)。

そのため、多くはすでに急性期医療が不要であるにもかかわらず体力が回復せず寝たきりとなってしまう、退院後に行く場所がないということで急性期病院への長期入院となるケースもあります。

このように医学的には入院の必要性がなくとも病院で生活を続けている状態を、社会的入院といいます。

高齢者では入院することで寝たきりとなってしまう方がいらっしゃいますが、それはなぜでしょうか。その理由は、急性期病院での入院が長すぎる点にあります。

通常、急性期とはおおよそ入院から1週間程度を指します。その後は地域包括期や慢性期を担う病院に移り、日常生活に戻る治療や集中したリハビリテーションを行うことが望ましいです。特に高齢者は1か月ほどの入院で筋力が低下する懸念もあることから、早期に地域包括期や慢性期で治療し日常に帰る必要があります。

しかし現状は、すでに急性期医療を必要としないにもかかわらず、併存疾患や主治医によりあと2週間、3週間と入院を続ける方針を示されることもあります。そうすると体力が低下し、急性期病院では適切なリハビリテーションを受けられないことで寝たきりとなってしまうこともあります。

また、高齢者は入院のきっかけとなった疾患のほかにもさまざまな疾患を併存していることが多く、今の臓器別診療がメインの医療では対応しきれていないという現状もあります。たとえば、心疾患で循環器内科に入院し、心疾患の状態がよくなっても、ほかに関節や神経が悪い、呼吸器も悪いとなれば、担当の循環器内科医は対応ができません。そのためにずるずると入院期間が延びてしまうという弊害が起きています。

そして長期入院は患者のQOL(生活の質)を下げるばかりでなく、日本の医療費を逼迫(ひっぱく)している原因になっています。実際に、寝たきりとなっている患者の数は日本よりも人口の多いアメリカの5倍、日本と同じく高齢化率が20%を超えるスウェーデンの10倍です。

病院で寝たきりとなっている患者数の増加は、そのまま医療費の増加につながっています。

一般病床はどんどん減っていく

急速な高齢化を前に、一般病床は本来の役割を果たせなくなりつつあります。表向きは急性期に対応しているものの、その実態は本来であれば慢性期医療を受けるべき高齢者の受け皿にすぎない例もあります。そしてリハビリテーションが充実していなければ、高齢者のADL(日常生活動作)はどんどん低下していきます。これでは病床稼働率を上げるために、意図的に入院を継続させていると思われてしまうことすらありそうです。

そこで、うまく活用しきれていない既存の病床や介護療養病床(療養病床のなかでも、早期退院を目的とせず要介護状態の改善に努める病床)、現在の医療介護ニーズに即したものにしようと立ち上がったプロジェクトが「介護医療院」です。

日本の医療・介護を大きく変えることとなる介護医療院については記事2『新たな医療のかたち、介護医療院と総合診療医―2025年問題を打開するために』にて詳しく解説します。

 

慢性期医療 (武久 洋三 先生)の連載記事

「日本一の慢性期病院を目指す」という理念のもと1984年に博愛記念病院を立ち上げ、リハビリや慢性期医療を提供する病院の経営を始める。その後、経営の手腕を発揮し数々の病院経営立て直しの依頼を受けるようになる。現在では医療法人平成博愛会理事長、社会福祉法人平成記念会理事長等を務め、病院、介護老人保健施設・介護療養型医療施設、介護老人福祉施設、ケアハウスなどを経営。平成医療福祉グループ26病院を率いる代表として日々地域の方に医療を提供し続けている。