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標準治療とは患者さん一人ひとりにもっとも適した治療のこと

標準治療とは患者さん一人ひとりにもっとも適した治療のこと
大野 真司 先生

相良病院 院長、がん研究会有明病院 元副院長・元乳腺センター長

大野 真司 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年01月29日です。

標準治療というと、「標準」という言葉の意味から効果が並みの治療と考える方も少なくありません。しかし標準治療とは臨床試験を経た治療法であり、しっかりとしたエビデンス(証拠)が存在します。そして医療の現場においては、効果のもっとも高い治療という意味で使われています。

今回はがん研有明病院の乳腺センター長であり院長補佐の大野真司先生に、乳がん治療の具体例を交えながら標準治療の意味や、つくられる過程についてお話を伺いました。

試験管

標準治療とはエビデンスに基づいた、最善の治療のことを指します。「エビデンスに基づいた」ということは、しっかりとした科学的根拠があるという意味です。標準という言葉だけを取り上げると、中間という意味合いになります。そのため標準治療というと、どうしてもお寿司でいう松竹梅の梅か竹として捉える患者さんもいらっしゃいます。しかしベストな治療を実施することは医療の大前提であり、ベストでない治療は行いません。そのため医療の世界では、ベストな治療=標準治療なのです。

標準治療はそれぞれの治療法のメリットとデメリットを比較する臨床試験を経てつくられます
素材提供:PIXTA

標準治療はそれぞれの治療法のメリットとデメリットを比較する、臨床試験を経てつくられます。

たとえば乳がんの手術療法には、乳房を切除しない乳房温存手術と、切除する乳房切除手術があります。これらの治療法のメリット・デメリットを比較する臨床試験ではまず、腫瘍が1cmから3cmまでの乳がんの患者さんを限定して集めます。そしてその方々に、乳房温存と切除のどちらを実施するのか決めるランダマイズ試験(くじ引き試験)を行います。そして治療後の成績を調査すると、お互いのメリットとデメリットが出てきます。メリットとデメリットの要素を天秤にかけ、明らかにメリットの比重が大きい治療は、標準治療となります。またメリットとデメリットが同じ比重だった場合は、どちらの治療も標準治療となります。

上記のような過程を経て、2cmの乳がん患者さんの標準治療は、乳房温存手術という結論が出されました。乳がんのような患者さんの数も多く、多数の臨床試験が行われている病気は、たくさんのデータの中から選出された標準治療となります。しかし希少疾患など患者数が少なく症例があまりないものは、数少ないデータの中からつくられた標準治療となります。

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もっとも正確に標準治療についての情報が記載されているものはガイドラインです。乳がんの場合は、日本乳癌学会が「乳癌診療ガイドライン」をつくっており、医療者向けのものと患者さんなど一般の方向けの2種類があります。乳がん患者さんが医療者向けのガイドラインを読んでも問題ありません。しかし専門用語が多く出てくるので、理解が難しい箇所もあります。そのため患者さん向けのガイドラインを使って調べることをおすすめします。

患者さん向けの乳癌診療ガイドラインは、日本乳癌学会のホームページから無料で読むことが可能です。

それぞれの患者さんによって標準治療は異なる
素材提供:PIXTA

どんなに効果の高い治療であっても、患者さんに無理やり受けさせるということはありません。あくまでも治療を受けるかどうかの最終決定は患者さんが行うものです。しかしどのような治療法が存在し、どのようなメリットとデメリットがあるのか正確な説明を医師がしなければ、患者さんは安心して治療法を選ぶことができません。そのため治療法の最終決定までを患者さんと医師が一緒になって考えていく、シェアード・ディシジョン・メイキング(shared decision making)*が重要です。

*シェアード・ディシジョン・メイキング……患者さんと医師が意思決定をシェアする、共有するということ。

患者さんの考え方や年齢、生活環境によって、どの治療法を選択するのかはそれぞれ異なります。場合によっては標準治療といわれている治療を患者さんが望まない場合もあります。

たとえば乳がんの治療では再発防止のため、術後に抗がん剤治療を受けることが標準治療として推奨されています。しかしガイドラインのエビデンスでは、術後に抗がん剤治療を実施すると再発率が約30%から約20%に減少するという結果であり、その差は約10%です。そのため抗がん剤治療を受けなくても約70%は再発しないのであれば、抗がん剤治療の副作用を避けるために受けたくないと考える患者さんもいらっしゃいます。逆に約10%も再発率が変わるのであれば、抗がん剤治療をぜひ受けたいと思う方もいらっしゃいます。

また経済的問題も重要です。たとえば再発防止で使用する薬物の費用が、月に5万円かかるとします。患者さんの中には経済的な理由から、月に5万円を治療にあてられないため、効果は下がっても、もう少し金額の低い薬の使用を望まれます。

冒頭でも述べたとおり、標準治療とはエビデンスに基づいた最善の治療法のことです。しかし患者さんの思いや環境を考慮し、一人ひとりにとってもっともベストな治療法(エビデンスのあるもの)が、最終的にその方にとっての標準治療であると私は考えています。

記事2『乳がんの治療は患者さんとの信頼関係が重要』では、大野先生が実際に乳がん患者さんとシェアード・ディシジョン・メイキングを行う際に重要視していることや、ピンクリボン運動について詳しく解説していただきます。
 

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  • 相良病院 院長、がん研究会有明病院 元副院長・元乳腺センター長

    大野 真司 先生

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