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乳がんの治療は患者さんとの信頼関係が重要

乳がんの治療は患者さんとの信頼関係が重要
大野 真司 先生

相良病院 院長、がん研究会有明病院 元副院長・元乳腺センター長

大野 真司 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年01月30日です。

患者さんが治療法を選ぶ際は、医師とのしっかりとしたコミュニケーションと信頼関係が重要です。この2つがあることで、患者さんは安心して治療を受けることができます。

今回は記事1『標準治療とは患者さん一人ひとりにもっとも適した治療のこと』に引き続き、がん研有明病院の乳腺センター長であり院長補佐の大野真司先生に、患者さんとの信頼関係を築くために行っていることや、ピンクリボン運動についてお話を伺いました。

悩んでいる女性

記事1『標準治療とは患者さん一人ひとりにもっとも適した治療のこと』では、治療選択のために患者さんと医師でシェアード・ディシジョン・メイキング(shared decision making)を行うことを説明しました。実際にシェアード・ディシジョン・メイキングを行う際に私が重要視していることは、患者さんのナラティブ(Narrative Based Medicine)を知るということです。ナラティブとは患者さんの物語、つまり生活環境や悩み、どんな思いを持っているのかということです。

患者さんによって希望する治療法は異なります。異なる理由は、患者さんはそれぞれ違う環境で生活をされており、それぞれのバックグラウンドや思いが存在するからです。

たとえば乳がんの手術後は、再発率を下げるための抗がん剤治療が標準治療として推奨されています。「自分が子どものときに母親を乳がんで亡くしつらい思いをしたから、自分の子どもには同じ思いをさせたくない」という気持ちから、副作用があっても抗がん剤による治療を選択する患者さんがいらっしゃいます。

また「姉が卵巣がんで抗がん剤治療の副作用に苦しんでいる姿を見てきたから、自分は抗がん剤治療を受けない」と選択する方もいらっしゃいます。このような患者さんの物語を医師が知っていれば、たとえ抗がん剤治療を受けることを患者さんが希望しなくても「効果があるのだから受けたほうがよい」というのではなく、「7割の方は再発をしないから、安心して様子を見ていきましょう」とその患者さんにとって適切なサポートをすることがきます。

ラナティブを知るためには信頼関係が必要

素材提供:PIXTA

初対面の人にいきなり悩みを打ち明ける方はそうそういないのと同様に、初診のときからご自身のナラティブを話してくださる患者さんはほとんどいらっしゃいません。主治医が信頼できる存在だと認められてはじめて、患者さんは悩みや本音を話してくださるのです。信頼関係が築けると、こちらから質問をしなくても、ご家族の話やご自身の過去を話してくださるようになります。

患者さんから信頼されるために必要なことの1つは、コミュニケーションスキルです。もう1つは、普段から自分や病院のよい評判を広める努力をすることです。私たちはこのことを「備える」といっています。近年患者さんは、事前に病院や医師を調べてから診療に来られます。そして調べた際のよい印象と実際の印象が同じだった場合、早い段階から信頼関係が築けるのです。

乳がんピンクリボン運動では、乳がんの啓発活動や乳がん患者さんをサポートする活動などをしています。私はその活動を行うNPO法人の代表を務めています。以下では、ピンクリボン運動の啓発活動についてご説明します。詳しい活動内容は(http://www.congre.co.jp/happymamma/)をご参照ください。

実際に日々乳がんの患者さんを診ていると、もっと早くにがんが見つかれば乳房が温存できたり、抗がん剤治療を行う必要がなかったのにという患者さんに多く出会います。そのため早期発見は非常に大切であり、ピンクリボン運動ではマンモグラフィ検査の受診を普及させる活動をしています。

しかし先進国の中で、マンモグラフィ検査を普及させる活動を行っているのは日本くらいです。他の国ではマンモグラフィ検査を受けることが当たり前であり、収入が低くマンモグラフィ検査を受けられない方のために金銭的サポートをする活動がメインです。日本においても、マンモグラフィ検査を受けることが当たり前になる日が来ることを目指しながら早期発見のための活動をしています。

国立がん研究センターの調査によると、2016年の日本では、乳がんにかかる方は11人に1人といわれています。乳がん治療は再発防止のために治療が5年から10年に及ぶこともあります。再発治療も何年も続きます。治療は終わっていても再発の不安を抱いていたり、治療の後遺症で苦しんでいる方もいらっしゃいます。このような乳がんを体験した方々、闘病中の方々をサポートするための活動を行っています。

研究と臨床試験によって、医療は常に進歩を続けています。しかし研究と臨床試験には膨大な資金が必要です。2018年現在の日本では国費が研究費用にあてられていますが、決して十分とはいえません。そのためピンクリボン運動で資金を集め、将来の乳がん治療をよりよくしていくために寄付をしています。

ピンクリボン運動は福岡のさまざまな施設とコラボレーションしながら実施しています。2018年は福岡ソフトバンクホークスとの活動を増やしていこうと計画しています。また乳がんの若い医療者を育てる未来プロジェクトという活動にも力を入れていく予定です。

大野真司先生

乳がんにかかる方は11人に1人ですが、亡くなる方は70人に1人であり、治る方も多い病気です。乳がんと診断された場合は、慌てずゆっくりでよいので、信頼できる医師や医療機関と相談しながらご自身にもっとも適した治療法を選択してください。

また乳がんの患者会の方々はよく「賢い患者さんになってください」とおっしゃっています。氾濫する間違った情報に流されず、医師の説明やガイドラインからしっかりとしたエビデンスのある治療法を勉強することが重要ということです。主治医以外の先生の意見も聞きたい場合は、セカンドオピニオンを活用するのもよいでしょう。

そのなかで私たち医師ができることは、目の前の患者さんにベストを尽くすことと、明日の患者さんに備えることです。今いる乳がん患者さんを全力で治しながら、未来に向けてよりよい医療を提供するために、研究と臨床試験、啓発活動を続けていきます。

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  • 相良病院 院長、がん研究会有明病院 元副院長・元乳腺センター長

    大野 真司 先生

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