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鼠径ヘルニア(脱腸)の術後について
 鼠径ヘルニア(脱腸)は、手術によって根治が期待されます。2018年現在は、ポリエステルやポリプロピレンといった素材でできたメッシュを挿入して、ヘルニア嚢の穴を塞ぐ手術方法が成人の鼠径ヘルニアの...
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鼠径ヘルニア(脱腸)の術後について

公開日 2018 年 04 月 19 日 | 更新日 2018 年 04 月 20 日

鼠径ヘルニア(脱腸)の術後について
大橋 直樹 先生

東京外科クリニック 院長

大橋 直樹 先生

目次

 

鼠径ヘルニア(脱腸)は、手術によって根治が期待されます。2018年現在は、ポリエステルやポリプロピレンといった素材でできたメッシュを挿入して、ヘルニア嚢の穴を塞ぐ手術方法が成人の鼠径ヘルニアの標準治療として行われています。傷が小さくてすむ腹腔鏡や新しい麻酔薬の登場によって、日帰りでも手術を行えるようになった鼠径ヘルニアの治療ですが、手術後どれくらいで元の生活に戻ることができるのでしょうか。また術後の生活で気をつけるべき点はあるのでしょうか。本記事では鼠径ヘルニアの術後について東京外科クリニック院長 大橋直樹先生にお話しいただきました。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術後の経過

手術直後

鼠径ヘルニアの手術は、術式や患者さんの状況などによっても異なりますが、30分〜1時間半程度で終了します。手術が終わって麻酔から覚めたら、看護師の付き添いのもと、しばらくは安静にしていただきます。腹腔鏡手術の場合、1〜1時間半くらい休んでいただき、その間に問題がなければ水を飲んだり、軽食を食べたりすることも可能です。痛みがなければ、医師・看護師が許容する範囲で活動していただいて問題ありません。

術後

手術後は、傷口の様子や合併症の有無を確認するため一週間後を目安に外来にお越しいただきます。特に問題がなければ治療終了となります。

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術後−食事や運動に制限はある?

術後の注意点とは

鼠径ヘルニアの手術を受けられる患者さんにとって、術後どれくらいで元の生活に戻れるのかということは非常に気にされるポイントであると思います。しかし、鼠径ヘルニアの術後、どれくらいの期間安静にすればよいかという明確な決まりはありません。そのため現在(2018年)は、術後の生活指導は、施設や医師によって異なるというのが現状です。

術後一週間で筋トレやゴルフを行う患者さんも

前述したように術後の運動制限に関する明確な基準はありませんが、施設や医師によっては、1か月くらい運動をしないように指導している場合があります。しかし私は痛みや体力的に無理のない範囲で運動してもよいと伝えています。その背景には、手術で用いるメッシュが改良されたことが関係しています。

従来鼠径ヘルニアの治療に用いられていたメッシュは、手術後に端がめくれたり、位置がずれたりするおそれがあったため、術後メッシュが定着するまで、しばらくは安静にするべきであると考えられていました。しかし現在はメッシュが改良されて、表面がマジックテープのようになっているタイプのものが登場しました。これによって体内に入れたメッシュは、組織にしっかりと張り付き、剥がれにくくなったのです。

このように安定性があるメッシュを用いるようになったため、術後は無理のない範囲で活動していただいても問題ないと考えています。患者さんによっては術後一週間くらいでゴルフや筋トレなどを行う方もいらっしゃいます。

ゴルフ

小児の鼠径ヘルニア(脱腸)の術後

小児の場合、術後の痛みや症状の把握が困難なこともある

ここまでおもに成人の鼠径ヘルニアの手術後についてお話ししましたが、小児の場合は少し注意が必要です。小さなお子さんは、成人のように言葉で正確な症状や痛みを伝えるということができません。そのため術後のケアを行う際に、本人がどのような症状があり、どの程度痛みがあるのかを聴取するのが難しい場合があります。そのような場合、親御さんやスタッフが協力してお子さんをよく観察します。たとえば機嫌が悪い、活動性が低いというお子さんに痛み止めのシロップや座薬を使うと機嫌がよくなって遊び始めることがあります。このように言語によらない本人の態度・行動を観察しながら術後の経過をみることが大切です。

小児の術後も運動制限はない

運動制限に関しては、小児の場合も成人の患者さんと同様に明確な決まりはありません。したがって術後の生活指導は、施設や先生によって異なるというのが現状ですが、痛みを感じない程度の日常生活上の活動は行っていただいて問題ないと考えています。

子どもが遊んでいるイメージ

鼠径ヘルニアの術後合併症

手術後の腫れや痛みなど、合併症には個人差がある

鼠径ヘルニアの手術後には、痛みや腫れなどの合併症が起こることがあります。鼠径ヘルニアの手術による合併症は、再手術や緊急入院が必要な重大なものは滅多に生じません。しかし、事前にどのような合併症が起こる可能性があるのかを把握し、万が一起こったとしてもきちんと対応することが大切です。

鼠径ヘルニアの手術で起こりうる合併症には以下のようなものが考えられます。

<鼠径ヘルニアの合併症>

  • 漿液腫(しょうえきしゅ)
  • 血腫
  • 感染
  • 疼痛(痛み)
  • 再発

漿液腫(しょうえきしゅ)

漿液腫とは、ヘルニア嚢の穴の部分に体液が溜まって「しこり」や「こぶ」のようになった状態です。

漿液腫に対しては注射器で体液を抜く、穿刺(せんし)吸引という治療を行います。しかしほとんどの場合は自然に腫れが治ります。もともとが大きなヘルニアでない限り、穿刺吸引はまず必要ありません。

漿液腫

血腫

血腫とは、血液が傷の内部で出血が起こり、組織内に血液が溜まってしまう状態です。手術では止血した状態で縫合を行いますが、まれに再出血が起こり、腫れてしまう場合があります。血腫による腫れが認められる場合、まず腫れの状態を確認し、腫れの大きさによっては傷を開いて止血をする再手術を行います。

感染

手術では細菌感染を防ぐため、手術器具の滅菌や抗菌薬を使用しますが、それでも感染が起こってしまう場合があります。鼠径ヘルニアの手術で、感染が起こることは非常にまれではありますが、体内に入れるメッシュによって感染が起こった場合は、メッシュそのものの摘出が検討されます。

切開で行われる手術に比べると腹腔鏡手術は傷からメッシュまでが遠いため感染の頻度を低くできる可能性が期待されています。

疼痛(痛み)

疼痛は患者さんの状態や術式によって異なります。痛みの程度が軽いようであれば鎮痛剤の内服で対応しますが、術後何週間も痛みが継続するような場合には、神経ブロック注射などの疼痛対策を提案します。

患者さんの痛みに適切に対応するためにも、患者さんの痛みの状態を把握することは大切です。

東京外科クリニックでは、言葉では伝わりにくい痛みを表情のイラストを選んでもらうことで評価する「FPS」や、痛みの度合いを0〜10の11段階の数字に分けて、それを患者さんに選んでもらう「NRS」などのペインスケールを使って患者さんの痛みの状態を把握します。

再発

非常にまれではありますが、鼠径ヘルニアが再発してしまうことがあります。手術によって治療した箇所が、再び腫れる場合は再発の可能性があります。

再発の原因として考えられるケースは、手術でメッシュを使用しなかった場合や小児期に手術したものが成人になって再発した場合など、患者さんによってさまざまです。

再手術を行うことになった場合、前回どのような治療が行われたのかを把握し、ヘルニアの再発状況や患者さんの背景に合わせて治療方針を決めていきます。

大橋先生からのメッセージ

大橋先生

膨らみに気が付いたら受診のタイミング

鼠径ヘルニアは患者さん自身で症状に気が付くことができる病気です。痛みや違和感のみで膨らみがない場合は専門家でも確定診断ができないため、膨らみを自覚したときが受診のタイミングとなります。

質の高いヘルニア治療の普及を願う

鼠径ヘルニアの治療は手術しか方法がないのはこれまでお話しした通りですが、その手術法は多岐にわたり、質的にも施設によりばらつきがあるのが現状です。

鼠径ヘルニアはいわゆる大手術ではなく日帰りで行える程度の手術ではありますが、外科医の業務は多岐にわたるため、消化器の大手術の陰でヘルニア治療が片手間の仕事のようになっている医療機関もあります。

しかし、ありふれた病気であるからこそ根治性と安全性、快適性を追求することが大切なのではないでしょうか。ですから患者さんもそのような理念の医療機関を選ぶことが大切だと思います。

今後、質の高いヘルニア治療が普及することを願っています。

鼠径ヘルニア (大橋直樹先生)の連載記事

日本外科学会認定外科専門医。
慶応義塾大学医学部外科学教室助教を勤めた後平成27年独立。
現在は腹腔鏡手術、小児外科、乳腺外科の日帰り手術専門クリニックを運営し多くのスペシャリストに活躍の場を提供している。成人鼠径ヘルニア手術の専門家として業績多数。

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