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側弯症の手術治療。負担の少ない手術方法とは?
一般的な側弯症の手術治療では、変形した脊椎を金属で固定し矯正する脊椎固定術が行われます。また、側弯症の手術ではMISt(ミスト:最小侵襲脊椎安定術)という患者さんの身体的負担を少なくするような手...
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側弯症の手術治療。負担の少ない手術方法とは?

公開日 2018 年 03 月 07 日 | 更新日 2018 年 06 月 15 日

側弯症の手術治療。負担の少ない手術方法とは?
小谷 善久 先生

社会医療法人 製鉄記念室蘭病院 副院長・理事、整形外科長 脊椎脊髄センター長 リハビリテーション部長

小谷 善久 先生

目次

一般的な側弯症の手術治療では、変形した脊椎を金属で固定し矯正する脊椎固定術が行われます。また、側弯症の手術ではMISt(ミスト:最小侵襲脊椎安定術)という患者さんの身体的負担を少なくするような手技が用いられることもあります。

今回は側弯症の手術治療や、術後の注意点などについて、社会医療法人製鉄記念室蘭病院 脊椎脊髄センター長・整形外科科長で、北海道MISt研究会代表も務めておられる小谷善久先生にお話を伺いました。

側弯症の手術適応

側弯症に対して手術治療が必要となる適応基準は小児と成人とで異なります。まずは、小児・思春期側弯症の適応についてご説明します。

小児・思春期の場合

小児・思春期側弯症の手術適応は以下のようなコブ角を目安にします。

<手術適応となるコブ角の目安>

  • 胸椎のコブ角が45〜50度以上
  • 胸腰椎コブ角が40〜45度以上

しかしながら、近年では手術の技術水準が向上してきたことで、これらの適応基準に満たない場合でも手術を行うことがあります。たとえば、胸椎のコブ角が40度であっても今後進行していくことが明らかであれば患者さんやご家族とよく相談して手術をすることもあります。

また同じ角度の変形であっても、痩せ型であればあるほど脊柱の変形が目立ちます。そのため、基準の角度に満たなくても外見上の変形が著しい場合には相談のうえ手術に踏み切ることもあります。

このようにコブ角による適応基準はあくまでも目安であり、それぞれのお子さんによって手術のタイミングは異なります。

成人の場合

一方、成人の場合には角度による明確な基準はなく、症状の有無が手術を行うかどうかの大きな基準です。

記事2『側弯症の症状−子どもと大人であらわれる症状は異なる』でも述べたように、成人では変形が小さくても痛みの症状が強く出る方が多くいます。痛みの症状が強くなると立位障害を伴いますので、掃除や料理などの家事が困難になり日常生活に大きな支障が生じます。さらに高齢化に伴い一人暮らしの高齢者の数も年々増加しており、自立した生活を送らざるを得ない状況にある方は非常に多くいらっしゃいます。そのため、薬物治療でも痛みを緩和することができない場合には、手術治療で痛みを取り除くことが必要となります。

また、下肢のしびれや痛みなどの神経症状が神経ブロック注射(末梢神経に局所麻酔薬を注入することで、神経機能を麻痺させ痛みを軽減させること)でも改善せず、一定時間以上立っていることができない場合には手術が選択されます。

このように、成人の手術の選択基準は症状であり、大きな変形があっても痛みなどの症状がなく、日常生活に不自由を感じていなければ手術を行うことはほとんどありません。

側弯症の手術方法

側湾症の手術風景
手術風景 小谷善久先生ご提供

脊椎固定術

側弯症の手術では脊椎固定術を行います。脊椎固定術では変形した脊柱を矯正するために、矯正したい骨の部分に金属を設置、固定します。そのうえで、自家骨(患者さん自身の別の場所から採取した骨)もしくは同種骨(他人の骨を特殊処理して脱脂肪、脱蛋白したもの)の移植も行います。

小児の場合には自家骨を用いることが多いです。一方、成人の場合ではたくさんの移植する骨が必要となることが多く、自身の骨だけではまかないきれないため、同種骨が用いられることが多いです。

手術には「前方法」と「後方法」がある

また脊椎固定術には、お腹からアプローチする「前方法」と背中からアプローチする「後方法」があります。どちらの方法で手術を行うかは、変形している場所や硬さをみて決定します。

一般的に小児・思春期側弯症では、胸椎の変形であれば後方法が用いられることが多く、胸腰椎・腰椎の変形であれば執刀医によって前方法か後方法かの選択が異なると考えます。

椎骨

一方、成人は変形部分が硬くなっていることが多いため、椎間板を取ったうえで椎骨をバラバラに切り離して柔らかくする必要があります。椎間板を切り離すためには前方からアプローチを行う前方法が選択されることが多いです。また、成人に対する脊椎固定術では大きく切開せずに手術を行うMISt(ミスト:最小侵襲脊椎安定術)で行う医療機関もあります(MIStについては後述で詳しく解説します)。

10歳未満が対象となる「Growing rod法」

10歳未満のお子さんには骨を固定しない「Growing rod法」による矯正手術を行うこともあります。

通常の脊椎固定術では将来身長が伸びていくお子さんの背骨を固定してしまうため、骨が成長することができず身長が伸びません。

Growing rod法では変形部分の上下に金具を設置して、その間にコネクタ(金属棒)を取り付けます。そして半年に1回くらいのペースで、手術でコネクタ部分を伸ばしていくことで、背骨の成長を許すことができます。身長が伸びるまでは定期的な手術が必要となり、成長が止まった段階で最終的に脊椎固定術を行います。

身体的負担を軽減する「MISt(ミスト:最小侵襲脊椎安定術)」とは

経皮スクリュー手技による固定
経皮スクリュー手技による固定

MISt(ミスト:最小侵襲脊椎安定術)とは、脊椎脊髄疾患に対して低侵襲的に行われる手術手技の総称です。側弯症に対して行われる手技にはOLIF(オリフ:低侵襲的前方矯正固定術)や経皮スクリュー手技(経皮的内固定手技)があり、これらを併用した手術を行うことで高齢者でも側弯症の手術を行うことができるようになりました。

手術では、まずOLIFの手技で前方(側腹部)に約3〜4cmの穴を開けます。その穴から脊柱に向けて筒を通し、筒越しに硬くなった椎間板を解離し除去します。そして、それぞれの椎間(4〜6箇所)に一つずつ骨を移植していきます。そのあと、経皮スクリュー手技を用いて後方から複数の穴を開け、筒越しに金属のネジで脊柱の矯正と固定を行います。

このように、MIStの手技を応用して低侵襲的に手術を行うことで、術中の出血量を大幅に少なくすることができ、出血に伴う合併症の発症が減少します。また傷口が小さいため、手術翌日には歩行練習を行うことができるなど、術後の回復が早いことも特徴です。

側弯症の手術の流れ−術前から術後まで

術前に行うこと

小児の場合には、術中の出血に備えて自己血貯血(術中や術後に輸血を行うためにあらかじめ自身の血液を採取しておくこと)を行うことが多いです。貯血量は患者さんによって異なりますが、約800〜1,200ccの血液を4〜5回に分けて採取します。成人では通常の輸血を行うことが一般的ですが、自己血を希望される方には自己血貯血を行うこともあります。

また、高齢の患者さんには呼吸器・循環器疾患を持っている方が多くいます。こういった疾患が悪化すると手術のリスクが高まることがありますので、十分に疾患コントロールをしたうえで手術に臨みます。

術後について−痛みへの対処法は?

術後の痛みについてご心配される方は多いと思いますが、一般的にはなるべく患者さんが術後無痛で過ごせるような対処が行われます。当院では、術後約1〜2日間かけて、強力な鎮痛剤を静脈に持続投与することで除痛を行うようにしています。

側弯症の手術後について

術後に起こりうる合併症

側弯症の手術は神経が通っているところの矯正を行うため、脊髄や神経が影響を受けることで、しびれや麻痺などの合併症が起こるリスクがあります。このような合併症を防ぐために、製鉄記念室蘭病院では術中モバイルCTを使用して金属が脊柱の正しい位置に入っているかをリアルタイムで確認し、また脊髄機能を持続的に監視する脊髄モニタリングを使用しています。

また、創部(手術によってできた傷)に細菌が侵入することによる術後感染症や、術後肺炎などを発症する可能性もあります。

傷跡を目立たなくするために

真皮縫合

小児の場合には皮膚を大きく切開して手術を行うため、できるだけ傷跡が目立たないように「真皮縫合」という手技を用いて縫合を行うことが多いです。

皮膚は大きく表皮・真皮・皮下組織と3つの構造に分けられ、通常の縫合では表皮を直接縫合するため傷跡が残りやすくなります。しかし、真皮縫合は内側の真皮を縫合するため、縫い目が表面に出ず傷跡が目立たない利点があります。

術後の日常生活の過ごし方

脊椎固定術の術後は背骨が硬くなりますので、前屈姿勢が取りづらくなります。そのため、ガーデニングや草むしりなど長時間かがむ作業が難しくなります。

また和式の生活も困難になります。たとえば、布団から起き上がる、雑巾で床の拭き掃除をするなどです。ですから、脊椎固定術を受けた患者さんは、寝るときはベッドにしたり、掃除はモップや掃除機にしたりなど、洋式の生活をしていただくことをおすすめしています。

また小児の場合には成人ほど日常生活の制限はありませんが、背骨に直接的な衝撃が加わる運動やスポーツには注意が必要です。たとえば、器械体操やマット運動で硬くなった背骨に強い衝撃が加わると骨折する危険性がありますので避けていただくようにご説明しています。

小谷善久先生からのメッセージ

私が医師になった頃、側弯症の手術は非常に難易度が高く大きなリスクを伴う手術でした。しかし、近年は手術を補助する術中ナビゲーションや脊髄モニタリングなどの医療機器も進歩してきていますし、患者さんの身体的負担を軽減するような医療技術も進んでいます。

ですから、なかなか手術に踏み切れない方がいれば、我慢をせずに側弯症治療の先進的医療機器が整った施設で手術を受けていただくことをおすすめします。特に小児の場合には放置することで変形も進行しますし、成人側弯症へ移行してしまうこともあります。そのため、手術のタイミングについて主治医と相談のうえ、専門的な医療機器が揃った医療機関で手術を受けるようにしましょう。

 

一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会ウェブサイトも併せてご覧ください。

http://www.jssr.gr.jp/index.html

北海道大学医学部を卒業後、米国留学や北海道大学を中心とした道内の医療機関において、整形外科医としての研究・臨床経験を積む。脊椎脊髄疾患を専門とし高度な技術で低侵襲手術を行っている。2018年現在、北海道MISt研究会の代表も務める。

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