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JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムについて−...
 特定の疾患をみるのではなく、患者さんの全身を診療する能力を持つ「病院総合医(総合診療医)」。高齢者を中心にあらゆる疾患を持っている方が増加しており、近年病院総合医の必要性はさらに高まっています...
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JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムについて−病院総合医の必要性とは?

公開日 2018 年 03 月 09 日 | 更新日 2018 年 03 月 13 日

JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムについて−病院総合医の必要性とは?
尾身 茂 先生

独立行政法人 地域医療機能推進機構 理事長 名誉世界保健機関(WHO) 西太平洋地域事務局 事務局長

尾身 茂 先生

目次

 

特定の疾患をみるのではなく、患者さんの全身を診療する能力を持つ「病院総合医(総合診療医)」。高齢者を中心にあらゆる疾患を持っている方が増加しており、近年病院総合医の必要性はさらに高まっています。2018年現在、全国に57の病院を有するJCHO(ジェイコー:独立行政法人地域医療機能推進機構)でも病院総合医(Hospitalist)の育成を開始しています。

今回はJCHO理事長である尾身茂先生に、現代日本における病院総合医の必要性やJCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムについてお話を伺いました。

病院総合医(総合診療医)とは

ベッドサイドで高齢者の診療を行う医師

病院総合医とは、ある特定の臓器をみるのではなく、全身の幅広い診療能力を持つ医師のことです。さらに病院総合医は病気をみるだけではなく、患者さんの生活習慣や家族歴といった社会的問題にも対応する必要があります。

またこのように総合的な診療を行う医師は、総合診療医ともよばれています。

日本における医療の役割

「高度専門医療」と「地域医療」

それでは病院総合医についてお話しする前に、日本の医療の役割について簡単にお話しします。

医療というのは非常に幅広い分野ですが、その役割は大きく2つに分かれます。それは「高度専門医療」と「地域医療」です。

まず大学病院などで行う高度専門医療には、難易度の高い手術や最先端の医療機器を駆使した高度な治療などが求められます。そしてこのような治療を行うためには、各診療科の専門性に長けた医師が必要不可欠です。

一方で地域の中小病院などで行う地域医療の現場では、複数の病気を抱えたり、全身状態の悪い高齢者や、診断に迷うケースなど日々あらゆる患者さんに対応する必要があります。このような医療現場には患者さんの全体をみて診断や治療を行う医師が必要です。

このように日本の医療には「高度専門医療」と「地域医療」の両方が必要であり、それぞれがしっかりと機能するための連携・役割分担が重要です。

なぜ病院総合医(総合診療医)が必要なのか?

このように高度専門医療と地域医療に対しては共に大きなニーズがあります。

しかし高齢化がすすむ日本では、特に地域医療の現場においてますます病院総合医の需要が高まっています。

ここからは病院総合医が確立された場合の、まず患者さんに対するインパクト、次に日本の医療全体に対するインパクトについてお話しをします。

複数疾患に対するトータルケアができる

近年日本では高齢者を中心に複数の疾患を同時に抱えている方が増加しています。そのため疾患ごとにあらゆる診療科を受診している患者さんが非常に多く、なかには各診療科がそれぞれ複数の薬を処方し、いわゆるポリファーマシー(必要以上に多くの薬剤を服用すること)になり副作用が起こることもあります。またそれぞれの診療科では基本的に専門疾患だけをみるため、何か別の疾患が潜んでいたとしても見落とされてしまう可能性も否定できません。

このようなことを防ぐために、慢性的な疾患をいくつか抱えている方には、全体をみる訓練を受けている病院総合医による包括的な診療が望まれます。

もちろん「この疾患または状態には専門医の診察が必要だ」と判断される場合には、専門医を紹介することになります。病院総合医による横の診療と専門医による縦の診療を組み合わせることで、患者さんにとってより良い医療が実現できます。

すべての医療機関にとっても必要不可欠な存在

また日本の医療全体にとっても病院総合医は必要不可欠な存在です。ここではある地方の中小病院で実際に起きた出来事を例にとってお話しします。

この病院は150床の病床数に対して15人ほどの医師がいました。しかし医師が次々と退職していき10年後に医師数は5人にまで減少してしまったのです。

ここは地域の比較的小さな病院なので、1名の当直医が毎晩あらゆる救急患者さんに対応しなければなりませんでした。当然自分の専門外や原因のよくわからない疾患にも対応する必要があったのですが、この不安やストレスに耐えられずに多くの医師が辞めていってしまったのです。

では最後にどのような医師が残ったのかというと、研修医時代に総合診療の訓練と経験をしっかりと積んできた医師でした。

各診療科医から1名ずつ当直医を出すことができれば問題ないのですが、150床ほどの中小病院にすべての専門医を置くことは不可能です。

もちろん大病院においても病院総合医の果たす役割はありますが、特に中小病院にとっては、病院総合医のように総合的な診療能力のある医師がより必要な存在となります。

病院総合医のあるべき姿と育成のために

尾身先生

このように病院総合医が必要とされるなかで、病院総合医のあるべき姿とはどのようなもので、またどのように育成していくべきなのでしょうか。

病院総合医もひとつの専門医

まずは病院総合医もひとつの専門医であるという認識を持つことが大切です。

専門医というと、ある臓器に特化した診療を行う医師がイメージされがちですが、病院総合医も総合的に患者さんをみるスペシャリストです。

少し前までは、ひとつの診療科を突き詰めてこそ優秀な専門医であるという印象を持たれることもあったかと思います。しかしそれは病院総合医を育成する仕組みが確立されていなかったためです。今後はそれぞれがお互いに違う役割を持つ専門医であるという認識を持ち役割分担を行うことが重要です。そして次に述べる病院総合医のキャリアパスを明確にし、良質な育成プログラムを用意する必要があります。

病院総合医のキャリアデペロップメント

病院総合医を目指す医師のためには、病院総合医のキャリアデベロップメントの道筋を明確に示すことが重要です。

病院総合医に興味があっても、その先にどのようなキャリアがあるのかが不明確なために、なかなか踏み出すことができない医師は少なくないと思います。

ですから病院総合医の将来性とキャリアをきちんと提示することが、病院総合医を目指す医師を増やすためには大切です。

育成プログラムのクオリティコントロール

また病院総合医を育成するための教育プログラムのクオリティを保つことも大切です。従来は病院総合医に対して教育を行うという概念がありませんでした。しかし先述のように病院総合医も専門医のひとつですので、医療の質を高めるためにはしっかりとした育成プログラムを確立する必要があります。

JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムとは?

JCHOでは平成29年度から病院総合医を育成するための「JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラム」を開始しています。ここからはJCHO版病院総合医の育成プログラムの特徴や具体的な内容をご紹介します。

JCHOのミッション「地域医療の実践」

JCHOでは「地域医療の実践」を大きなミッションとして掲げています。それはJCHOのグループ病院だけでなく、他の医療機関などと連携し我が国の地域医療を支えることも意味しています。

JCHO版病院総合医育成プログラムは、そのミッションを実現するためのプログラムになっています。具体的には以下のような医師の育成を目指しています。

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  • 地域医療の現場で総合医として貢献できる医師
  • 離島やへき地へ派遣できる医師
  • 総合診療を実践する開業医

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こうした医師を育てるために、日本プライマリ・ケア連合学会やJCHO病院の院長など、多方面の意見を取り入れた教育プログラムになっています。

JCHO版病院総合医(Hospitalist)育成プログラムの5つの特長

JCHO版病院総合医育成プログラムには5つの特長があります。

特長1 キャリアパスの充実−将来的にJCHO病院長などのポストを用意

まずは病院総合医としてのキャリアパスが充実している点です。研修修了後には国内外への留学や希望するJCHO病院で勤務をしていただくことが可能です。

また将来的にはJCHO病院の病院長などJCHO病院幹部としての処遇も考えています。私は病院長のポストには病院総合医のようにあらゆる知識を持った医師がつくべきだと思っています。そのためプログラムにはリーダーシップ、保健医療、マネジメント、医療倫理などの学習も含まれています。

特長2 広い門戸を開く−開業を考える医師の育成も

2つ目の特長は、開業準備やセカンドキャリアを築きたい医師を受け入れるなど、広い門戸があることです。たとえば何十年か外科医として働いてきたが、開業のために総合診療を身に付けたいと考える医師なども研修を受けることができます。個人のニーズに合わせてフレキシブルに対応することができる点は大きな特長です。

特長3 全国57のJCHOグループ病院で研修可能

3つ目はJCHOの全国ネットワークを活かした研修を受けることができる点です。JCHOには全国に57の病院があり、それぞれの病院に特徴や強みがあります。ですから研修を受ける医師の要望にできるだけ合わせた形で、研修を受ける医療機関を選ぶことができます。

特長4 個人のニーズに合わせた研修プログラム

4つ目の特長はニーズに合わせた研修を受けることができる点です。後ほど詳しくお話ししますが、教育プログラムでは必須項目とは別にオプションを選択することができます。「この分野の知識が足りない」と感じた分野を自分で選択し、学ぶことができるプログラムになっています。

特長5 日本プライマリ・ケア連合学会との連携

5つ目の特長は日本プライマリ・ケア連合学会と連携したプログラムになっていることです。先ほどプログラムのクオリティコントロールが重要であるというお話をしましたが、我々JCHOはクオリティコントロールの専門家ではありません。

そのため日本プライマリ・ケア連合学会と連携し話し合いを重ねることで、質の高い教育プログラムの提供が実現しています。

希望者はJCHOが費用を負担して日本プライマリ・ケア学会の提供する一連の講義に優先的に参加できます。一定数以上の講義を受講すると、JCHO版病院総合医育成プログラムの修了認定証とは別に同学会の認定証が取得でき、認定医試験が免除されます。

JCHO版病院総合医(Hospitalist)の育成プログラムの内容

研修対象者

 

スライド提供:JCHO

 

JCHO版病院総合医育成プログラムの主な対象は、2年間の初期臨床研究を経てさらに3〜4年の後期臨床研修を修了した医師です。つまり医学部卒業後、最短で6年目の医師が研修を受けることができます。

さらにそれだけではなく、他科のサブスペシャリティを終えた医師や、開業を考えている医師などあらゆる要望を持っている方を受け入れています。

研修内容

 

スライド提供:JCHO

 

研修内容は大きくコア・カリキュラムとオプションに分けられます。

上図のようなコア・カリキュラムに加えて、自分に足りない知識や技術がある場合には、オプションとして付け足して学んでいただくことができます。

たとえば総合診療を行うためには小児にも対応できるようになりたい、妊婦さんにどのような薬を処方するべきかの知識を身に付けたい、などといった要望にも応えられるようなプログラムになっています。

また、上図の「適宜レクチャー等で対応」するテーマのうち、臨床推論を含む各科領域のプライマリ・ケアの実際、地域包括ケアの実践等を含む保健医療、マネジメントなどのノンテクニカルスキルについては、日本プライマリ・ケア連合学会が提供する講義で学ぶことができます。一連の講義を受講していただくと、JCHO版病院総合医育成プログラムの修了認定証とは別に、日本プライマリ・ケア連合学会の認定証も発行されます。

研修の流れ

 

スライド提供:JCHO

 

研修内容は担当者との面談で決定し、それぞれのニーズに沿った形でプログラムを組むことが可能です。

平成29年度は、2名の方が第1期生として育成プログラムに参加しています。

1人目の医師は、初年度は都心の医療機関で病院総合医としての診療を学び、次年度は1年かけて学んだことを地域研修病院で実践していただく内容になっています。

もう1人の方は初年度から地域研修病院で診療を行うことで自分に足りない知識や技術を探していただき、次年度は足りない分野を専門的に研修することで病院総合医としてスキルアップしていただくようにしています。

 

なお、JCHO版病院総合医育成プログラムにご興味のある方は、下記HPをご覧ください。

地域医療を担う公的病院の統括組織、独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO)の理事長を務める。1990年から2009年まで20年間WHOに勤務し、西太平洋地域におけるポリオ根絶を達成したことで世界的に知られる。SARS制圧時には西太平洋地域事務局事務局長として陣頭指揮をとった。現在はWHOでの経験をもとにシームレスな地域医療サービスの拡充に取り組むとともに、NPO法人「全世代」を立ち上げ、就労や医療・介護など現代日本が抱えるあらゆる分野の社会問題解消のために尽力している。