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乳がんの手術法とは?−乳房温存手術と乳房切除術
乳がんの手術には大きく分けて乳房温存手術(部分切除)と乳房切除術(全摘出)の2種類があります。手術法の決定には、ステージ(病期)やしこりの大きさなどの明確な基準があるわけではなく、がん切除後も乳...
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乳がんの手術法とは?−乳房温存手術と乳房切除術

公開日 2018 年 03 月 20 日 | 更新日 2018 年 03 月 20 日

乳がんの手術法とは?−乳房温存手術と乳房切除術
谷 和行 先生

平塚共済病院 外科統括部長、乳腺内分泌外科部長、外来化学療法室部長

谷 和行 先生

目次

乳がんの手術には大きく分けて乳房温存手術(部分切除)と乳房切除術(全摘出)の2種類があります。

手術法の決定には、ステージ(病期)やしこりの大きさなどの明確な基準があるわけではなく、がん切除後も乳房の整容性を保つことができるかどうかが重要なポイントであるといいます。

本記事では、乳がんの手術について平塚共済病院 外科統括部長の谷和行先生にお話を伺いました。

乳がんにはどのような手術法がある?

乳がんの手術法には、乳房を部分的に切除する「乳房温存手術」と乳房を全摘出する「乳房切除術」の2種類があります。

乳房温存手術−乳房を部分的に切除する手術

乳房温存手術とは、がんを切除する際に乳房を部分的に切り取る手術です。

がんを切除しても乳房の変形が小さく、整容性を保つことができると判断された場合に行われます。

乳房温存手術

乳房切除術−乳房を全摘出する手術

乳房切除術は、がんができている乳房を全摘出する手術法です。

しこりが大きい場合、乳房内に複数がんがある場合など、がんを切除すると乳房が大きく変形し、整容性を保てないと判断された場合に行われます。

乳房切除術については記事2『乳房切除術とは−手術の流れや術後について』で詳しくお話ししています。

治療方針の決定にはサブタイプが関係している

乳がんの治療において、従来は病期(ステージ)によって治療方針を決定するという考え方が主流でした。

しかし、近年重要とされているのは「サブタイプ」と呼ばれる分類です。

乳がんのサブタイプは、ホルモン受容体の陽性・陰性、HER2というタンパク質の陽性・陰性によって大きく5つに分類されます。この分類によって、手術とあわせて行う化学療法(抗がん剤治療)やHER2療法(分子標的療法)、ホルモン療法の治療方針を決めます。

乳がんのサブタイプ

乳がんの手術の流れ

ここでは平塚共済病院で行われている乳がんの手術の流れを簡単にご説明します。

STEP1

乳がんの診断がついたら、がんの転移がないか、がんがどれくらい広がっているかをさまざまな検査によって調べます。それをふまえて患者さんとよく相談したうえで、乳房温存手術・乳房切除術のどちらの手術を行うか決定します。

STEP2

検査の結果によっては、術前に化学療法(抗がん剤治療)や抗HER2療法(分子標的療法)などを行う場合があります。

STEP3

手術前の検査で、あらかじめ腋窩(えきか:わきの下)リンパ節に転移が予想される場合は、乳房の切除とあわせてリンパ節の郭清(取り除くこと)を行います。

また、術前の検査でリンパ節の転移が確認されない場合でも、手術中に「センチネルリンパ節生検」という検査を行ってリンパ節への転移の有無を調べ、それによりリンパ節転移が認められた場合には、リンパ節郭清を行います。

STEP4

手術後、化学療法(抗がん剤治療)や内分泌療法(ホルモン療法)、放射線療法を行う場合もあります。

センチネルリンパ節生検とは?

「センチネルリンパ節生検」とは、乳がんの手術中に行うリンパ節転移を調べるための検査です。具体的には、乳がんの近くに放射性アイソトープまたは色素などを局所注射してがんの転移の有無を調べる検査方法です。

センチネルリンパ節は、がんが最初に転移すると予想されるリンパ節であるため、基本的にはセンチネルリンパ節に転移がなければ腋窩(えきか:わきの下)リンパ節の郭清を行いません。

センチネルリンパ節を行う目的として、がんを確実に取り除き、生存率を向上させることが挙げられます。そしてさらに、不必要にリンパ節の郭清を行うことがないため、リンパ節の郭清で起こりやすいリンパ浮腫などの後遺症を避けることができ、患者さんのQOL(生活の質)の向上も期待できます。

センチネルリンパ節生検

リンパ節の郭清を行うかどうかで手術時間や入院期間が大きく異なる

乳がんの手術にかかる時間の長さは、乳房温存手術・乳房切除術という術式ではなく、リンパ節を郭清するかどうかが主に関係しています。がんの切除とあわせてリンパ節の郭清を行う場合には手術時間が長くなります。

また、手術時間と同様に、入院期間の長さも術式ではなくリンパ節の郭清を行うかどうかによって変わってきます。リンパ節を郭清した場合には、しばらくはリンパ液が漏れるため、ドレーンという管を挿入する処置が必要であり、そのためリンパ液の漏れがある場合には入院期間が長くなる場合があります。

乳がんの手術後の治療について

化学療法(抗がん剤治療)を行うタイミングは患者さんによって違う

抗がん剤を使った化学療法は、乳がんの再発を目的に行われます。化学療法の適応については、先ほどお話ししたサブタイプがやはり大きく関係しています。また、リンパ節への転移が多くみられる場合なども化学療法の適応となります。

そして、化学療法を手術前に行うか、手術後に行うかについては、再発率は変わらないという医学的な根拠があるため患者さんの希望に応じて決定します。

手術前に化学療法を行った場合、しこりが小さくなる可能性があるというメリットがあります。しかし必ずしもしこりが小さくなるわけではなく、反対に化学療法を行っている間にしこりが大きくなるケースも少ないながらあります。ですから化学療法については、患者さんの希望を聞いたうえで、術前に施行するのか術後に施行するのかを決定します。

手術後に行う放射線療法について

術後の放射線療法は、再発を予防する目的で、一般的に約5週間かけて計23〜26回行います。

1回の照射時間は1〜3分程度で、通院での治療が可能です。実際に働きながら放射線療法を受けている患者さんもいらっしゃいます。

術後に放射線療法を受けることが望ましいとされるケースは、乳房温存手術を受けた患者さん(基本的に全例)、そして乳房切除術を受けた再発の危険性が高い患者さんです。

乳房温存手術を受けた場合

2018年現在、乳房温存手術を受けられた患者さんに対しては、手術後に放射線療法を行うことが標準治療(医学的な根拠に基づいた最良の治療)となっています。

高齢者の患者さんに対する放射線療法に関しては、その必要性が現在(2018年時点)も議論されておりますが、平塚共済病院では、通院で放射線療法を受けることが困難な患者さんには、入院で行う選択肢も含めよく検討したうえで、放射線療法を行うかどうかを決めています。

乳房切除術後にリンパ節転移が高度であると判明した場合

また、乳房切除術後に再発の危険性が高いと判断された場合にも放射線療法を行うことが標準治療とされています。特に、リンパ節の転移が4箇所以上あった場合には放射線療法を強く推奨しています。詳しくは記事2『乳房切除術とは−手術の流れや術後について』をご覧ください。

乳がんの手術後のリハビリとは?

乳がんの手術後は、手術を受けたほうの手(患肢)の機能が低下するため、腕が動かしにくかったり、むくみや倦怠感を感じたりする場合があります。そのため、腕を動かす簡単なリハビリのプログラムをご用意しています。

乳房切除手術後のリハビリ

しかし、術式の差や回復の度合いなど個人差は大きいため、杓子定規でリハビリを行うのでなく、私はまず日常生活そのものがリハビリであるとご説明しています。

たとえば洗濯物を干す、エプロンを後ろ手で結ぶ、という動作であってもリハビリになると考えるからです。そして逆に手術していない側の手ばかり使うことがないように、日常生活で両手をバランスよく使うことを心がけるようにアドバイスしています。

ですから、プログラムにそってきっちりとリハビリをしていただくというよりは、今まで通りの生活を行うことが大切であると指導しています。

乳がんの手術後−検診・生存率について

一般的に、乳がんは非常に長い時間をかけて経過をみなければならない病気です。そのため、治療が終わった後も定期的に検診を受けることが推奨されています。具体的には、原則として術後10年間は外来通院していただき診察を行っています。

乳がん患者さんの5年生存率や10年生存率は公表されています。しかし、これはあくまで統計上の話であり、病期(ステージ)やサブタイプによって数字は異なりますので、すべてを自分自身に当てはめて重荷に感じる必要はありません。

ピンクリボン

乳がんの手術後に考えられる後遺症とは?

乳がんの手術後に後遺症はある?

乳がんの患者さんとお話しすると、「乳がんの手術を受けると手が動かなくなる」と誤解されている方が多いと感じます。手術後は家事や仕事がまったくできなくなってしまうのではないかと心配される患者さんも少なくありません。

しかし「もう元通りの生活には戻れないかもしれない」などと過度に重く受け止めるのではなく、私たちは患者さんに前向きに乳がんの治療に望んでいただきたいと考えています。

もちろん、術後に起こりうる後遺症などについては、手術前に必ずご説明します。もし不安や疑問がある場合には医師に相談することも大切です。

平塚共済病院では、実際に乳がんを体験した「ピアサポーター」という乳がん患者さんの支援スタッフがいますので、そういった制度も利用していただきたいと考えます。

ピアサポーターについては記事5『乳がん患者さんをサポート!ピアサポーターとは?』をご覧ください。

乳がんの手術後の痛み

乳がんの手術後は、手術による切開の影響で、しばらく皮膚がつっぱるような感覚やしびれ、痛みが現れることがあります。これらは時間が経過するにつれて緩和されることが多いですが、症状が続くようであれば担当の医師に相談することが大切です。

患者さんと医師が話している様子

乳がんの手術後の腫れ

リンパ節の郭清を行った患者さんに起こりうる後遺症として「リンパ浮腫」があります。

平塚共済病院では、リンパ節の郭清を行った患者さんに対しては、リンパセラピストとの面談の機会を設けています。リンパセラピストと連携しながら、リンパ節を取り除いたことで起こりうる影響について説明したり、マッサージ方法を指導したりして患者さんの術後のフォローを行っています。

実際にリンパ浮腫が起こった場合には、「リンパドレナージ」というリンパ浮腫専用のマッサージやバンデージによる圧迫療法などを組み合わせて治療を行います。

リンパ浮腫は必ずしも術後すぐに起こるというわけでなく、患者さんによっては数年後に症状が現れることもあるため注意が必要です。

乳がんの手術後に行う乳房再建とは

乳房切除術によって乳房を全摘出した患者さんを対象に、希望する方には乳房を作り直す乳房再建術を行います。

乳房再建術は必ず行う必要のあるものではありませんが、乳房を失うことは患者さんのQOL(生活の質)に大きくかかわることです。乳房切除術を行うと決まってから、乳房再建術を行うかどうかをすぐに決断をする必要はなく、術後でも結構ですので時間をかけてじっくりと決めていただければと思います。

乳房再建については記事3『乳房再建とは−手術の流れや費用について』をご覧ください。

横浜市立大学卒業後、横浜市立大学病院にて2年間の研修の後、横浜市立大学第一外科学(現:外科治療学)に入局。その後、横浜市立港湾病院を経て1992年より平塚共済病院にて勤務。現在は、外科統括部長、乳腺内分泌外科部長、外来化学療法室部長を務める。
2010年より乳がん体験者のピアサポーターによる患者支援活動をスタート。チーム医療を実践し、患者の気持ちに寄り添った乳がん診療に取り組む。

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