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エコノミークラス症候群の治療と予防
 エコノミークラス症候群とは、長時間にわたる飛行機への搭乗などによって足の血流が悪くなり、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることによって、さまざまな症状が現れる病気を指します。エコノミークラ...
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エコノミークラス症候群の治療と予防

公開日 2018 年 03 月 12 日 | 更新日 2018 年 04 月 05 日

エコノミークラス症候群の治療と予防
大郷 剛 先生

国立循環器病研究センター 肺高血圧先端医学研究部 特任部長・肺循環科 医長

大郷 剛 先生

目次

 

エコノミークラス症候群とは、長時間にわたる飛行機への搭乗などによって足の血流が悪くなり、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることによって、さまざまな症状が現れる病気を指します。

エコノミークラス症候群は、早期治療によって重症化を防ぐことが可能といわれています。また、水分の補給や運動によって予防が可能です。

今回は、国立循環器病研究センターの大郷 剛先生に、エコノミークラス症候群の治療と予防についてお話しいただきました。

エコノミークラス症候群の症状については記事1『エコノミークラス症候群の症状』をご覧ください。

エコノミークラス症候群とは?

エコノミークラス症候群発症のメカニズム

エコノミークラス症候群を発症するしくみについて簡単にご説明します。飛行機のエコノミークラスに搭乗すると、長時間にわたり狭い場所で座ったままの状態になります。長時間にわたり足を動かすことがないために足の血液の流れが悪くなると、足の静脈のなかに血栓(血の塊)ができることがあります。

足にできた血栓は歩行などをきっかけにして、血液の流れに乗り、肺まで到達することがあります。肺に到達した血栓が肺の血管を塞いでしまうと、胸の痛みや息切れなどの症状が現れるようになります。

エコノミークラス症候群は、飛行機のエコノミークラスへの搭乗によってのみ起こるわけではありません。狭いところで座ったまま長時間過ごし、足を動かすことが少なければ、どこでも発生する可能性があるといえるでしょう。このため、長時間にわたる車の運転や車中泊、さらに災害時の避難所への滞在やデスクワークでも発生することがあります。

エコノミークラス症候群は病気の通称

エコノミークラス症候群とは、正式な病気の名称ではありません。深部静脈血栓症と急性肺血栓塞栓症は一連の病気として静脈血栓症と総称されており、特に飛行機での旅行時に起こる静脈血栓症をエコノミークラス症候群と呼んでいます。

ただ一般的にエコノミークラス症候群を静脈血栓症の通称として用いられている場合も多く、イメージがわきやすいので今回、静脈血栓症の通称としてエコノミークラス症候群と呼んでいます。。

お話ししたように、足の静脈に血栓(血の塊)ができる病気を(下肢)深部静脈血栓症と呼びます。また、急に血栓が肺の血管を塞いでしまう病気を急性肺血栓塞栓症と呼びます。

一般的にこれら2つの病気を合わせて(飛行機以外の状況で発症したものを含めて)「エコノミークラス症候群」と呼ばれることが多いでしょう。

エコノミークラス症候群の診断

問診によって長時間の飛行機の搭乗などを確認

記事1『エコノミークラス症候群の症状』でお話ししたエコノミー症候群の症状のうち、この病気特有の症状はありません。足の腫れや胸の痛み、呼吸困難による息苦しさなどは、他の病気でも起こりうるものだからです。

そのため、診断では問診によって、長時間にわたる飛行機への搭乗や車中泊がなかったかどうかを確認することが重要になります。

診察

造影CT検査・血液検査などを実施

さらに、いくつかの検査によって診断を行います。

肺の血管を血栓(血の塊)が閉塞している場合には、造影剤を用いたCT検査(エックス線を使って身体の断面を撮影する検査)による診断が有効でしょう。また、足に血栓ができている場合には、エコーによる検査で確認することが可能になります。

また、血液検査によってD-dimerと呼ばれる血液中にできる物質を測定することも有効であるでしょう。D-dimerの数値が上がっていることが必ずしも肺塞栓を意味するわけではありませんが、診断の補助となる検査といえます。

エコノミークラス症候群の治療

早期治療が重症化を防ぐ

エコノミークラス症候群は、早期治療が重要になります。それは、治療が遅れてしまうと、死亡したり重症化してしまう可能性があるからです。そのため、足の腫れや胸の痛みなどの症状が現れた方は、なるべく早期に心臓内科や循環器内科などを受診し、治療を受けてほしいと思います。

治療法は重症度によって異なる

薬

エコノミークラス症候群の治療は、重症度によって異なります。

症状が軽度であれば、血液の流れをよくする効果のある飲み薬を服用するだけで治療が終わるケースもあります。このような方は、外来のみで治療が終わることが多いでしょう。

しかし、病気が進行している場合には、入院が必要になるケースもあります。このように進行している患者さんに対しては、血栓(血の塊)をとかす効果のある薬を使用することもあるでしょう。

さらに、重症化してしまった患者さんに対しては、人工心肺装置(心臓や肺の機能を代行する医療機器)など機械によるサポートを行う場合もあります。

また、血栓が多い患者さんに対しては、カテーテル治療や手術によって血栓を取り除くケースもあるでしょう。

エコノミークラス症候群の予防法

エコノミークラス症候群は、予防が可能です。長時間にわたる飛行機の搭乗や災害時の車中泊時は、以下のようなことを心がけ、予防につなげてほしいと思います。

定期的に水分の補給を

コップに入った水

エコノミークラス症候群を予防するためには、きちんと水分をとることが大切です。定期的に水を飲むことが予防につながるでしょう。

このとき、お酒やコーヒーばかり飲んでしまうと、体内の水分を排出するはたらきがあるために脱水になってしまう可能性があります。できるだけ、お酒やコーヒーではなく水を飲むよう心がけてください。

飛行機では通路側の席に座るなどの工夫を

飛行機に乗る場合、窓際の席に座ることがあると思います。この場合、隣の席の方に気を使い、できるだけトイレに行かなくていいように水分を我慢してしまう方もいるのではないでしょうか。

しかし、これでは、水分の不足からエコノミー症候群になりやすくなってしまいます。隣の席の方に気を使ってしまうという方は、長時間にわたり飛行機に搭乗する場合には、通路側の席に座るよう工夫することも効果的です。すぐにトイレに行けるよう工夫することが脱水を防ぐことにつながるでしょう。

数時間に1回など定期的に足を動かして

また、足を動かさないと足の静脈の流れが悪くなってしまいます。できるだけ静脈の流れが悪くならないような工夫が大切になるでしょう。

たとえば、数時間に1回歩くようにすることは効果的です。歩くことができない場合には、座ったまま足を動かしたり、マッサージしたりすることも有効でしょう。

長時間にわたり車を運転する場合には、運転をし続けることなく、適宜休憩するようにしてください。

予防グッズ-弾性靴下・ストッキングの着用

また、エコノミークラス症候群の予防のために、足に圧力を与える効果のある弾性靴下やストッキングが販売されています。これらを着用することも、予防につながるでしょう。特に、医療用のものであれば効果が高いと考えられます。

弾性靴下やストッキングを着用することで、足の静脈が圧迫され、血栓ができにくくなる効果が期待できるでしょう。圧力の程度は商品によってさまざまですが、ある程度の圧力がかかるものであれば、予防につながると考えられます。

重症化を防ぐために注意してほしいこと

大郷先生

エコノミークラス症候群は予防できる

エコノミークラス症候群は、予防が可能です。特に長時間にわたり飛行機や車に乗る場合には、お話ししたように水分をとり、数時間に一度は足を動かすよう心がけてほしいと思います。

足の腫れ・息苦しさや胸の痛みがあれば早めの受診を

もしも長時間にわたる飛行機の搭乗や車中泊などの後に、足の腫れ、息苦しさや胸の痛みなどの症状が現れたら、なるべく早く病院を受診することが大切です。

エコノミークラス症候群は、放っておくと重症化しやすくなります。症状が現れたらすぐに治療を受けるよう心がけることで重症化を防ぐことができるでしょう。

エコノミークラス症候群 (大郷 剛 先生)の連載記事

循環器内科の医師として、主に肺循環、肺高血圧症、静脈血栓症を専門としている。岡山大学付属病院、ロンドン大学キングスカレッジを経て、国立循環器病研究センターに勤務。より良い治療、病気の解明を目指して、診療や研究に尽力している。

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