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鼠径ヘルニアの治療方法-手術で筋肉の隙間をふさぐ
鼠径ヘルニアとは、鼠径部(足の付根)の筋肉の隙間から腸や脂肪などお腹のなかの内容物が飛び出し、膨らみが生じてしまう病気です。鼠径ヘルニアは、根本的な治療として手術治療が挙げられます。手術治療では...
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鼠径ヘルニアの治療方法-手術で筋肉の隙間をふさぐ

公開日 2018 年 04 月 13 日 | 更新日 2018 年 04 月 13 日

鼠径ヘルニアの治療方法-手術で筋肉の隙間をふさぐ
金平 文 先生

メディカルトピア草加病院 外科・ヘルニアセンター長

金平 文 先生

目次

鼠径ヘルニアとは、鼠径部(足の付根)の筋肉の隙間から腸や脂肪などお腹のなかの内容物が飛び出し、膨らみが生じてしまう病気です。鼠径ヘルニアは、根本的な治療として手術治療が挙げられます。手術治療では、過去には筋肉の隙間を縫い合わせる「生体修復法」が行われていましたが、現在では筋肉の隙間をメッシュを当てることによってふさぐ「テンションフリー法」が標準治療となっています。

今回は鼠径ヘルニアの治療方法について、メディカルトピア草加病院 外科ヘルニアセンター長の金平 文先生にお話を伺いました。

鼠径ヘルニアの治療方法は?

手術

鼠径ヘルニアを治すのは手術療法のみ

鼠径ヘルニアの治療方法は、基本的には手術のみです。薬物療法や保存療法はありません。

市販のヘルニアバンドはかえって炎症を引き起こす危険性がある

近年市販品で「ヘルニアバンド」と呼ばれる、膨らみを上から押さえつけるようなアイテムが販売されています。しかし、ヘルニアバンドは医学的には推奨されておらず、むしろ上から膨らみを押さえつけることで、血流が悪くなるなど悪化傾向を示してしまう場合もあります。

手術ができない場合

本人の希望や年齢、他の病気などの体の都合でどうしても手術ができない場合、経過観察とし、手術を行わないこともあります。しかし、その場合には記事3『鼠径(そけい)ヘルニア(脱腸)の症状-痛みや違和感、鼠径部の膨らみなど』で申し上げた「嵌頓(かんとん)*」などのリスクが解消されないため、以後も医師の指示の下注意して生活していただくことになります。

*嵌頓……腸管がヘルニアにはまり込んで抜けなくなってしまうこと

鼠径ヘルニアの手術方法

鼠径ヘルニアの手術方法は大きく3つに分けて考えることができます。ここでは3つの方法について詳しくご紹介します。

生体修復法

切開手術

筋肉の隙間を縫い合わせる治療方法(生体修復術)

生体修復法は、腸や脂肪が出てきてしまう筋肉と筋肉の隙間を縫い合わせ、自分の体の組織で穴を塞ぐ治療方法です。この手術方法は1800年代後半より行われていた歴史の長い治療方法です。

生体修復法は、鼠径部を直接切り開いて筋肉と筋肉を縫い合わせるため、術後の痛みが強く、歩けるようになるまでに時間がかかることや、後に登場するテンションフリーと比較して再発率が比較的高いことが課題です。

現在では、この治療方法が適応となる患者さんは、嵌頓によって腸が壊死してしまい、感染症などがみられるなど、メッシュを用いることのできない患者さんなどです。

テンションフリー法

腹腔鏡手術

メッシュを使った治療方法

1950年代よりポリプロピレン素材のメッシュを使用して筋肉と筋肉の隙間に蓋をしてしまう「テンションフリー」という治療方法が用いられるようになりました。2018年2月現在は嵌頓などで感染症が生じていない限り、この治療方法が標準的になっています。

テンションフリーは、さらに2つの治療方法に分類されます。ここではそれぞれの治療についてご説明します。

鼠径部切開法

鼠径部切開法は、鼠径部を5cmほど切開し、筋肉と筋肉の隙間に外側からメッシュを当てる治療方法です。局所麻酔でも治療ができるため、幅広い患者さんに適応できることが特徴です。

一方で、この治療方法は主にはその時ヘルニアが起きている穴を塞ぐ治療方法なので、別の部位からヘルニアが生じた場合、再度治療が必要となる場合があります。また、筋肉の外側からメッシュを当てるため、異物感や痛みを感じやすいことも懸念されます。特に下肢への知覚神経は筋肉の表面を走っているため、メッシュが神経を巻き込んでしまうと慢性的な痛みが生じることもあります。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡とは、腹壁を通じて腹腔内を見ることのできる内視鏡です。鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術は、腹壁に小さな穴をあけ、筋肉と筋肉の隙間に腹腔内側からメッシュを当てる治療方法です。鼠径部切開法と比較すると傷が小さく、術後の早期社会復帰やスポーツへの復帰ができることが特徴です。

腹腔鏡下手術では病変が大きく映し出されたモニターを見ながら行います。ヘルニアの穴がある周囲に、腹膜という膜を利用してポケットを作成し、そのポケットの中にメッシュを入れて固定します。筋肉の内側からメッシュを当てるので、1回の手術で鼠径ヘルニアを起こしやすい箇所をすべて塞ぐことが可能です。そのため、別の場所にヘルニアが再発する可能性は鼠径部切開法よりも少なくなるといわれています。また、筋肉の内側は神経がほとんどないため、メッシュが神経を巻き込む危険性も低く、慢性的な痛みも起きにくいことが特徴です。

大きなモニターを見ながら行う腹腔鏡下手術

大きなモニターを見ながら行う腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術は全身麻酔が必要な治療方法なので、心臓や肺に重い病気がある高齢の方などは適応にならない場合があります。さらに以前に開腹手術や前立腺の手術を行っている方の場合、内部の癒着(腸や腹壁がくっついてしまうこと)が考えられるため、鼠径部切開法を薦めることがあります。

腹腔鏡下手術は1986年ころから行われるようになり、現在でもより小さな傷でより安全に治療が行われるように、さまざまな工夫や研究が行われています。記事5『鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術-reduced port surgeryとは?』では、鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術についてより詳しくご説明します。

ヘルニア手術とメッシュ

(写真:金平先生ご提供)手術中の外鼠径ヘルニアの穴(1、矢印)ポケットを作成したところ(2)メッシュを挿入したところ(3)メッシュを覆うように腹膜を縫い閉じたところ(4)処置完了

 

2004年北海道大学医学部卒業。2014年よりメディカルトピア草加病院外科にて勤務。2018年現在はヘルニアセンター長を務め、主に消化器外科並びに鼠径ヘルニアの腹腔鏡下手術に従事する。特に細径鉗子を用いた小さな傷の腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の安全な普及に努めており、全国で講演や執筆活動を行っている。

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