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肝臓がんの症状とは?症状がみられるときには進行している可能性も

肝臓がんの症状とは?症状がみられるときには進行している可能性も
國土 典宏 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 理事長、東京大学 名誉教授

國土 典宏 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年04月11日です。

肝臓がんは早期に特徴的な症状が現れないことから「沈黙の臓器」ともよばれています。

症状が進行しても肝臓がん自体に痛みなどの特徴的な症状が現れることはまれで、肝不全の進行によって腹水やむくみがみられるときには、同時に肝臓がん自体も進行していることが考えられると國土典宏(こくどのりひろ)先生はおっしゃいます。

今回は肝臓がんという疾患について、またその症状について国立国際医療研究センターの理事長である國土典宏先生にお話を伺いました。

肝臓
素材提供:PIXTA

肝臓は脳と並んでもっとも大きな臓器で、そのはたらきから「体のなかの工場」といわれています。肝臓には多くの作用がありますが、代表的なものとして以下の3つの作用を持ちます。

合成作用…食物として摂取した栄養素などを原料としてタンパク質や脂質など新たな栄養素や体の機能に必要な物質を作り出す

解毒作用…体内に入ってきた毒物(アルコールに含まれるアセトアルデヒドなど)を分解して胆汁を通じて排泄する

貯蔵作用…ぶどう糖をグリコーゲンに変えて貯蔵し、血液中の血糖値が低下したときに体内へ送り出す

また、肝臓が機能しなくなると人間は生きていくことができません。たとえば腎臓は血液透析、心臓は人工心臓で機能を維持することが可能ですが、いまだ人工的に肝臓に代わるはたらきをする「人工肝臓」は開発されていないのです。(2018年現在)

そのため、劇症肝炎や急性肝不全などで肝臓が機能しなくなって回復の見込みの無い場合には、早急に肝移植を行わなければ生命を維持することが困難となります。

このように肝臓は私たちが生きていくうえで必要不可欠である非常に大切な臓器です。

肝臓に生じるがんは「原発性肝がん」と「転移性肝がん」に大別されます。

原発性肝がんとは、肝臓を構成する細胞自体ががん化したものです。肝臓を構成する主な細胞は肝細胞で、肝細胞にできたがんを「肝細胞がん」とよびます。

また肝臓には胆汁を流す胆管という管があり、この胆管の細胞にできたがんは「胆管細胞がん(肝内胆管がん)」とよばれています。

本邦では原発性肝がんの約95%が肝細胞がん、約4%が胆管細胞がん、残りの約1%が肝芽腫(かんがしゅ)や神経内分泌腫瘍などのごくまれながんであると報告されています。

(日本肝癌研究会追跡調査委員会 第19回全国原発性肝癌追跡調査報告2006〜2007より)

薬
素材提供:PIXTA

本邦における原発性肝がんの主な発症原因はC型肝炎B型肝炎ウイルスで、特にC型肝炎ウイルスによるものがもっとも多いといわれています。

これらに罹患し長期的に炎症が続くと、肝臓が自己修復を繰り返すことで線維化が起こり、肝臓が硬くなる肝硬変になります。肝硬変の状態となると肝臓がんを発症するリスクが非常に高くなります。

またNASH非アルコール性脂肪性肝炎)などの脂肪肝から肝硬変を発症するケースや、肝硬変などの明らかな理由がなく肝臓がんを発症する患者さんもいらっしゃいます。

転移性肝がんは、肝臓以外の臓器に生じているがんが肝臓に着床してきたものを指します。

基本的にはどの臓器にあるがんも血液に乗り転移をしますが、なかでも肝臓は転移しやすい臓器として知られています。

他臓器にあるがんが肝臓に転移しやすい理由として、肝臓には血管が多く非常に栄養豊富であり、がんが着床しやすい環境であることが推定されています。たとえば、肺は全身の血液を濾過する役割を持つため、もっとも血流が多く転移のリスクも高い臓器だと考えられますが、実際は肝臓よりも転移の割合は少し低いといわれています。それは、肺は血流が盛んであっても、がんが着床できるだけの栄養が足りないためであるかもしれません。

肝臓がんでは初期段階で自覚できる症状はほとんどありません。このことから肝臓は膵臓と同じく「沈黙の臓器」とよばれています。

肝臓がんは進行しても症状が現れないことがほとんどです。

しかし、肝臓がんが進行している患者さんは、同時に肝不全の進行がみられる場合が多く、このとき肝不全の症状として腹水やむくみが現れます。また肝性脳症といって頭がぼーっとしたり、肝性脳症が悪化すると昏睡状態に陥ったりすることもあります。

このような肝不全の症状がみられる場合には、肝臓がん自体の進行が考えられます。

肝臓の表面にできたがんが大きくなると、まれに破裂することがあります。

破裂といってもがんが風船のようにパンと割れるわけではなく、がん表面から出血が生じます。肝臓がんが破裂すると、とても強い痛みを感じたり、出血量が多いとショック状態に陥ったりする方もいらっしゃいます。

一部のがんでは、がんの進行とともに我慢できないほどの痛みを生じ、鎮痛のために医療用麻薬(オピオイド鎮痛薬)を使用することがあります。

しかし肝臓がんでは、進行したとしても先述の破裂以外で痛みを感じることはほとんどなく、医療用麻薬などが用いられることはまれであるといえます。

初期段階のみならずある程度進行しても症状が現れにくいのは、肝臓が非常に余力の大きい臓器であることが理由として考えられます。

肝硬変や肝臓がんの進行とともに、徐々に肝機能は低下していきます。しかし、肝臓は十分な余力を持っているため、たとえば50%程度まで肝機能が低下しても、残りの50%程度の余力で問題なく機能を果たすことが可能です。

そのため肝臓がんがかなり進行してからでないと、肝機能が大きく低下する肝不全として先に述べたような腹水やむくみ、肝性脳症などの症状が現れないのです。

かゆみ
素材提供:PIXTA

肝臓がんの患者さんのなかには黄疸といって白目などの粘膜や皮膚が黄色くなる方がいらっしゃいます。この場合「閉塞性黄疸」により起こる症状であることがあります。

胆管細胞がんの場合、がんが胆管を塞ぐことで胆汁の流れが悪くなります。すると、胆汁に含まれるビリルビンという成分が血液中に流れ出て、皮膚などが黄色くなる症状が現れます。また血中のビリルビンが上昇することで皮膚の末梢神経を刺激し、かゆみなどの症状が現れることもあります。

原発性胆汁性胆管炎(旧称:原発性胆汁性肝硬変)の罹患によって肝臓がんを発症している患者さんの場合、原発性胆汁性胆管炎の症状として黄疸やかゆみが起こることがあります。

原発性胆汁性胆管炎とは国の指定難病のひとつで、原因不明に慢性的に進行する胆汁うっ滞性肝疾患です。先述と同様に胆汁の流れがせき止められることで、黄疸やかゆみなどが現れます。

超音波検査
素材提供:PIXTA

肝臓がんは症状が現れにくい疾患であるため、症状から早期発見することは難しい疾患であるといえます。そのため、肝臓がんの原因の多くを占めるC型肝炎B型肝炎ウイルスに感染している方の場合、ほとんどは定期検査や治療の段階で発見されています。

「肝癌診療ガイドライン」でもこれらの疾患に罹患している方は肝臓がんの「高危険群」「超高危険群」として定期的に以下のような検査を受けることを推奨しています。

C型慢性肝炎・B型慢性肝炎・肝硬変に罹患する「高危険群」

6か月ごとの腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3の測定)と超音波検査

C型肝硬変・B型肝硬変に罹患する「超高危険群」

3〜4か月ごとの腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-II/AFP-L3の測定)と超音波検査

6〜12か月ごとのCT・MRI検査

日本ではC型・B型肝炎ウイルスに感染している方は肝炎治療医療費助成を受けることができます。そのため、多くの患者さんは定期的に検査を受けることができており、他国に比べて肝臓がんが早期発見できているといわれています。

肝臓がんは早期に発見ができれば根治手術を受けることが可能です。引き続き記事2『肝臓がんの治療−肝切除の「3Dシミュレーション手術」とは』では肝臓がんの根治的な治療となる、肝切除における「3Dシミュレーション手術」について解説します。
 

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