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ADA欠損症とは? 症状と予後
ADA欠損症とは、ADA(アデノシンデアミナーゼ)という酵素の欠損によって免疫不全に陥る病気です。患者さんの多くは、生後間もなく非常に重い免疫不全の症状をきたすことがあり、早期発見と治療が望まれ...
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ADA欠損症とは? 症状と予後

公開日 2018 年 04 月 15 日 | 更新日 2018 年 04 月 16 日

ADA欠損症とは? 症状と予後
有賀 正 先生

社会医療法人母恋 理事長/北海道大学 名誉教授

有賀 正 先生

目次

ADA欠損症とは、ADA(アデノシンデアミナーゼ)という酵素の欠損によって免疫不全に陥る病気です。患者さんの多くは、生後間もなく非常に重い免疫不全の症状をきたすことがあり、早期発見と治療が望まれます。ADA欠損症の症状と予後について、北海道大学医学部小児科の有賀正(ありが ただし)先生にお話を伺いました。

ADA欠損症とは?

ADA遺伝子の変異によりADA酵素活性が欠損し、免疫不全に陥る病気

ADA欠損症とは、ADA遺伝子の変異によってADA酵素活性が欠損し、毒性物質が体内に蓄積することでリンパ球が障害され、免疫不全に陥る病気です。

ADA欠損症の患者さんの多くは、生後間もなくして非常に重い免疫不全による症状をきたします。

泣いている新生児

ADA(アデノシンデアミナーゼ)とは・・・核酸(すべての生物の細部内に存在し、タンパク質合成と遺伝現象にかかわるDNAなどの物質)を代謝する機能を持つ酵素です。

リンパ球とは・・・白血球の成分の一種で、チームをつくって体外からの異物を攻撃します。さらに、体内に侵入した異物を記憶し、それが再び侵入してきたときにすばやく排除する働きを持っています。リンパ球のチームは、T細胞、B細胞、NK細胞など細胞で構成されています。

先天性代謝異常による病気である

ADA欠損症は、先天性代謝異常による病気です。先天性代謝異常とは、ある酵素の欠損によって毒性の物質が蓄積したりすることで、さまざまな症状があらわれることをさします。

先天性代謝異常による病気には、フェニルケトン尿症などを代表として、数多くの種類が存在します。一方で、先天性代謝異常による病気1つ1つの新規登録患者数は少なく、まれな病気であることが知られています。

重症複合免疫不全(SCID)の原因の1つとなる病気

免疫不全にはさまざまなタイプがあり、もっとも重いタイプの免疫不全を「重症複合免疫不全症(SCID:スキッド)」と呼びます。ADA欠損症は、SCIDの原因の1つです。ほかにも、SCIDの原因となる遺伝子変異は20ほどみつかっています。(2017年12月現在)

日本におけるSCIDの発症率は、およそ40,000〜75,000人に1人と推定されます。SCIDのうち、ADA欠損症の患者さんは15%ほどとされており、まれな病気といえます。

ADA欠損症の症状

呼吸器や消化器への感染症による症状や体重減少など

ADA欠損症の患者さんは、日和見感染(免疫機能が低下しているときに、健康な人では感染しないような病原性の弱い微生物に感染すること)を起こしやすい状態にあります。

そのため症状として、生後数か月して呼吸器の感染症による咳、消化器(腸管など)への感染症による下痢、体重減少などの症状がみられることが多いです。

健康な子どもの場合は風邪などを引いても治ります。しかしADA欠損症の場合には、風邪などの日常的な感染症が命をおびやかすケースがあるため、注意が必要です。

どのような状況でADA欠損症が発見されるの?

生後数か月で感染症の症状や体重減少などがあらわれることが多い

ADA欠損症の子どもは、自宅に戻って数か月した頃から呼吸器や消化器の感染症による症状、体重減少などがあらわれることが多いです。なぜなら、生まれた直後の子どもは衛生的な環境にいることが多く、感染症による症状などがあらわれにくいからです。

上記の症状をもとに検査を行うと、リンパ球が異常に減少していることがわかり、重症複合免疫不全(SCID)を疑います。その後、SCIDに関する精密検査を行うことで、ADA欠損症と診断できます。

兄弟がADA欠損症の場合、次の子どもは早く診断できるケースもある

ADA欠損症は遺伝性の病気です。そのため兄弟がADA欠損症である場合、次に生まれてきた子どももADA欠損症である可能性があります。そのため生後間もなく症状に気づき検査を行なった場合には、ADA欠損症と診断できるケースもあります。

兄弟:3〜5歳の長子と、新生児の末子

画像診断で胸腺の陰影欠損に気づき発見に至ることもある

通常、乳児期の子どもの胸腺は大きいのですが、ADA欠損症を含む重症複合免疫不全(SCID)の患者さんは、胸腺が未発達であるという特徴があります。

何らかの理由で画像診断を行った際、胸腺の陰影欠損に気付き、精密検査を経てADA欠損症が発見されるケースもあります。

胸腺とは・・・胸骨のうしろに位置するリンパ器官です。T細胞という白血球を教育し、幼児期から小児期にかけて体の免疫を構築する役割をもっています。成長とともに退化していき、脂肪組織となります。

ADA欠損症の重症度にかかわる要素は?

残存するADA酵素活性の度合い

ADA欠損症は、残存するADAの酵素活性によって重症度が変わります。

残存するADA酵素活性が極めて低い場合には症状が重く、前項でご説明したように生後数か月のうちに感染症などによる症状があらわれます。

一方、残存するADA酵素活性がそこまで低くならない場合、生後間もないうちは症状が出ず、1〜3歳頃に感染症や合併症(ある病気が原因となって起こる別の症状)があらわれることがあります。(ADA欠損症の合併症については次項でご説明します)

ADA欠損症の合併症

1〜3歳頃に自己免疫疾患があらわれることがある

ADA欠損症のうち、ADA酵素活性がそこまで低くならず症状が軽いケースでは、1〜3歳頃に感染症や以下の合併症があらわれることがあります。これらの合併症は、自己免疫疾患(自己免疫の機序によって起こる病気)です。

自己免疫疾患とは・・・異物を認識し排除する役割を持つ免疫系が、自分自身の正常な細胞や組織に対して過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を起こす病気の総称です。

<ADA欠損症の合併症>

・甲状腺機能低下症:慢性的な甲状腺の炎症などによって甲状腺ホルモンが出なくなり、活動性が大きく低下するとともにむくみや全身のだるさなどが出現し、活気がなくなる病気です。

・血小板減少:自己免疫の機序により自己抗体が血小板を破壊することで、血小板が減少し、さまざまな症状を引き起こします。

・溶血性貧血:自己免疫の機序により溶血(赤血球が破壊されること)をきたし、貧血を引き起こします。

・糖尿病:自己免疫の機序により膵臓が攻撃されることで、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の分泌量が減少し、糖尿病をきたすことがあります。

ADA欠損症の予後

適切に治療を行わない場合、1歳に満たず亡くなるリスクがある

ADA欠損症を含めてSCID全般についていえることですが、適切に治療を行わない場合、患者さんは1歳に満たず亡くなるリスクがあります。

なぜならADA欠損症は生後間もなく発症することが多く、日和見感染(免疫機能が低下しているときに、健康な人では感染しないような病原性の弱い微生物に感染すること)が重症化しやすいからです。

有賀正(ありが ただし)先生

ADA欠損症は、早期に発見し根治的治療を行うことで、致死的な病気を救命できることが可能になってきました。

記事2『ADA 欠損症の治療』では、ADA欠損症の治療についてお話しします。

ADA欠損症(有賀 正先生)の連載記事

北海道大学医学部を卒業後、国内外で小児科医として研鑽を積み、2004年より北海道大学大学院医学研究科小児科学分野で教授を務め、2018年には北海道大学名誉教授に。同年より、社会医療法人母恋の理事長として地域医療に貢献している。