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脊髄腫瘍の手術治療 方法や術後について詳しく解説
脊髄腫瘍の治療は、基本的に手術療法です。しかし、悪性の場合は、抗がん剤治療や放射線治療を実施するケースもあります。また、良性の脊髄腫瘍で症状が軽度の場合などは、すぐに手術はせず経過観察をすること...
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脊髄腫瘍の手術治療 方法や術後について詳しく解説

公開日 2018 年 05 月 24 日 | 更新日 2018 年 05 月 25 日

脊髄腫瘍の手術治療 方法や術後について詳しく解説
飛騨 一利 先生

札幌麻生脳神経外科病院 病院長

飛騨 一利 先生

目次

脊髄腫瘍の治療は、基本的に手術療法です。しかし、悪性の場合は、抗がん剤治療や放射線治療を実施するケースもあります。また、良性の脊髄腫瘍で症状が軽度の場合などは、すぐに手術はせず経過観察をすることもあります。

今回は記事3『脊髄腫瘍の検査と診断 CTの撮影が重要』に引き続き、幌麻生脳神経外科病院院長の飛騨一利先生に、脊髄腫瘍の治療法や手術方法、術後のフォローについてお話をうかがいました。

良性の脊髄腫瘍の治療方針

医師と患者さんが話し合っているイメージ

良性(性質のよいもの)の脊髄腫瘍の場合、症状が軽くゆっくりと進行しているものであれば、すぐに手術は実施せず、経過観察を行います。現状の症状(痛みやしびれなど)が日常生活や仕事に支障をきたす場合や、このまま治療を何もしなかった際は、腫瘍が大きくなり神経障害といった症状が現れる、または悪化する可能性があると判断された場合は、腫瘍を切除する手術を実施します。

施設によっては良性の腫瘍が複数個みつかった場合は、放射線治療を行うケースもあるようです。しかし、一般的に良性の脊髄腫瘍に放射線を照射したときの効果は証明されていません。また、効果が証明されていないだけではなく、全脳照射*を行った場合は後に認知症を発症したり、脊髄障害となったりする危険性もあるといわれています。

全脳照射…放射線を脳全体に照射すること。

悪性の脊髄腫瘍の治療方針

悪性(性質の悪いもの)の脊髄腫瘍の場合、手術により腫瘍を摘出し、必要に応じて抗がん剤治療や放射線治療を併用します。しかし、転移性*腫瘍などの場合は、手術を実施できないケースもあります。そういった際は、抗がん剤治療や放射線治療を実施します。脊髄腫瘍の種類によっては手術をするよりも、抗がん剤治療のほうが効果が認められているものもあります。

転移性…発病原因が他臓器にあり、それが別の臓器に転移すること

脊髄腫瘍の手術治療

個々の患者さんの状態にもよりますが、脊髄腫瘍の手術に要する時間は平均して3~4時間程度です。麻酔は全身麻酔を使用して行います。

髄内腫瘍(脊髄のなかで腫瘍が発生する脊髄腫瘍)の場合、一度正常な脊髄の一部を切開し、なかの腫瘍を摘出します。その後神経を縫合していきます。腫瘍を摘出することにより、脊髄へのダメージが大きいと判断した場合は、手術中でも腫瘍の摘出を中断することがあります。

硬膜内髄外腫瘍(硬膜 の内側にでき、脊髄を外側から圧迫する腫瘍)は、脊髄と周囲の神経との間を慎重にはがしながら腫瘍を摘出していきます。神経鞘腫(神経そのものから腫瘍が発生する種類の脊髄腫瘍)は、腫瘍が発生した神経自体を切断するケースもあります。

なお、腫瘍により脊椎が破壊されている場合は、脊椎の再建も同時に実施します。他の臓器に腫瘍が転移している場合でも、骨髄腫瘍の症状を緩和するために手術を実施することもあります。

(脊髄腫瘍の種類について詳しくは、記事2『脊髄腫瘍とは? 分類や症状について詳しく解説』をご参照ください)

脊髄腫瘍の手術のリスク

脊髄腫瘍の手術により発生する可能性のある主なリスクは以下のものがあります。

髄液漏からの感染症

手術の際は髄液漏(髄液*が漏れること)を防ぐために、硬膜を切開して縫合した後は人体用の接着剤(フィブリン糊)などを使用します。また腰に管をつけ、5~7日間脊髄液を外部に出す、髄液ドレナージュといった処置を行うこともあります。しかし、こういった対策を実施したにもかかわらず髄液が漏れ出し、細菌感染を起こす危険性もあります。そのような場合は再手術が必要です。

髄液…脳や脊髄をおおっている液体のこと

正常な脊髄への影響

手術では、脊髄の切開や神経の切断などを行うため、正常な脊髄にある程度の障害が加わることはやむを得えません。そのため、術後は一次的に運動神経などが低下した状態となりますが、正常な手術が行われていた場合は、徐々に回復していきます。しかし、場合によっては手足の動きが悪くなったり、しびれや痛みが増したりするといった運動障害や、神経障害が重く現れるケースもあります。症状の程度によっては、リハビリや高気圧酸素治療*といった治療が必要となります。

高気圧酸素治療…大気圧よりも高い状況のなかで、酸素を吸引する治療法

脊髄腫瘍の患者さん1人1人に応じて治療方法を判断

脊髄腫瘍の場合、手術を行うのか行わないのかという判断がとても重要です。転移性腫瘍などの場合、難しい手術が予想されるものは無理に手術をせず、最初から放射線治療を行ったほうが患者さんへの負担も少なく有効性も高いと考えることもできます。

良性の脊髄腫瘍でも、患者さんの日常生活に支障をきたし、症状の悪化が予想される場合は、腫瘍の摘出手術を行います。一方、症状の出ている良性の脊髄腫瘍であっても、海綿状血管腫などの小さな腫瘍で、手術の際に高いリスクを伴う位置(側索の前など)にある場合は、手術をしないこともあります。

しかし、記事の最初にも述べたように、一般的に症状の出ていない良性(性質のよいもの)の脊髄腫瘍の場合は、何年もかけて大きくなっていくものが多く、急激に悪化する可能性は低いと思われます。そのため、患者さんの心身への負担を考慮しすぐに手術はせず、1年後に再度検査を受けてもらうなどして腫瘍の経過観察をします。

このように脊髄腫瘍の場合、腫瘍の種類や手術のメリットとデメリットを比較し、手術療法、経過観察、放射線治療・抗がん剤治療のどの治療がそれぞれの患者さんにとって有益なのかを、的確に判断する必要があります。

(脊髄の構造について詳しくは、記事1『脊髄とは? 脊髄に発生する代表的な病気や、脊椎との違いについて』をご参照ください)

脊髄腫瘍の手術後の生活は?

脊髄腫瘍の手術後に何の問題もなく回復し、退院された患者さんの場合は、定期的に通院していただく程度で日常生活の制限はありません。しかし、痛みやしびれ、麻痺などの症状が残った場合は、患者さんの日常生活に支障をきたします。そのため、神経の興奮を抑えるような薬を使用するなどして、症状を緩和させます。必要に応じて、手足の筋力改善や歩行練習のため病院や自宅でリハビリも行います。また、最近では脊髄刺激療法といって、脊髄に微量の電気を流し手足の痺れといった痛みを緩和させる治療法などもあります。

脊髄腫瘍をみれる病院が患者さんの地元に必要

脊髄腫瘍の場合、術後に薬を使わなくてもよいほどに回復した患者さんでも、その後5年間くらいは1年に1度MRI*を撮影したり、診察を受けたりするなどのフォローが必要となります。そのため、遠方の施設で手術を受けられる患者さんは、患者さんが住んでいる地域に脊髄腫瘍をみてくれる病院が必要です。手術が終わり、ご自身の地元に戻られたとき、地域に脊髄腫瘍をみれる病院があるかを確認することをおすすめします。

MRI…磁気を使い、体の断面を写す検査

脊髄腫瘍はインフォームドコンセントが重要

脊髄腫瘍は、インフォームドコンセントが非常に重要な病気です。インフォームドコンセントとは、医師が患者さんや家族に治療の目的や方法などをしっかりと説明したうえで治療を行うことです。画像検査や臨床症状、患者さんの希望を考慮しながら、手術前に患者さんとご家族へ手術の方法やリスクを数回にわたり話し合うということを意識しながら、私達は脊髄腫瘍の治療を行っています。

脊髄腫瘍の患者さんが治療を受ける際、わからないことや不安なことがある場合は、病気について良く理解してもらうことが必要ですので、担当の先生に不明な点をよくお聞き下さい。そして手術の意味や方法について、手術前に十分納得することが必要だと思います。

1981年に北海道大学医学部医学科医学専門課程卒業後、北海道大学医学部附属病院医員として脳神経外科において脳神経外科学についての研究に従事する。1988年からはカリフォルニア大学デイビス校へ客員研究員として留学し、生体NMRスペクトロスコピーの研究に打ち込んだ。帰国後、北海道大学医学部研究生として北大脳神経外科教室にて脊髄・脊椎疾患についての研究に取り組んだのち、1991年に北海道大学医学部附属病院助手、2000年に北海道大学医学部講師をつとめ、助教授、准教授、診療教授を経て、2013年からは札幌麻生脳神経外科病院の病院長に就任した。