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友達が精神的に追い詰められていたら、責めずに優しく声をかけて。精神科医からのメッセージ

友達が精神的に追い詰められていたら、責めずに優しく声をかけて。精神科医からのメッセージ
松本 俊彦 先生

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 部長、国立研究開発法人 国立...

松本 俊彦 先生

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この記事の最終更新は2018年05月22日です。

友達やクラスメイトに悩みを相談されたとき、友達の自傷に気づいてしまったとき、どのように関わればよいのでしょうか。国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦先生にお話しを聞いてきました。

――友達やクラスメイトが精神的に追い詰められ悩んでいるとき、周りの子どもたちができることはあるのでしょうか。

松本先生:まずは、優しく声をかけてください。そして、これまでの人生のなかで「あの大人は普通の大人と違ってよい関わり方をしてくれるかも」と思える大人のところに連れて行ってあげることをお願いしたいです。

あなたには、きっと今までにいろんな人に助けられたことや相談してよかったという経験の知恵があるはずです。その知恵を生かして、信頼できそうな大人につなげてあげてほしい。

友達は1人では大人のところに相談に行きたがらないと思うので、「一緒に行こうよ」と声をかけてあげてください。

手をつないでいる子ども

――もし、その悩んでいる友達に「誰にも相談したくない」、「大人のところには行きたくない」と言われた場合どうすればよいのでしょうか。

松本先生:たしかにその友達は、一緒に相談に行くことを拒否したり、悩みを抱えていることを「他の人に言わないって約束したじゃない」、「放っておいて」と怒ったりするかもしれません。その際に、友達にかけるとよい言葉もあります。

たとえば、「あなたを傷つけようと思ってしていることじゃないよ。自分の大事な友達がトラブルを抱えているけど、自分だけでは助けてあげることができない。そんなとき、あなたが私の立場だったら見て見ぬ振りをする?」と聞いてみてください。そうするとおそらく反論はできないと思う。

信頼できる大人のもとへ連れて行くときは「あなたのことが心配で、ぜひ会ってほしいから一緒にきてほしい」と伝えることが大事だと思います。

学校

――悩んでいる友達を、学校の先生のもとへ連れて行くのはどうなんでしょうか。

松本先生:まず、先生に相談するなら担任だと思うかもしれませんが、実際には先生にもいろんなタイプがいますよね。

必ずしも担任の先生に相談することが最善でないケースもあるかもしれません。そんなときは、知恵を絞ったり信用できる友達に相談したりして、信頼できる先生のところへ連れて行ってあげるとよいですね。

懸命に考えた結果、それが担任の先生かもしれませんし、そうではないかもしれません。

――もし、友達がリストカットなどの自傷をしていることに気づいたら、どう対応すればよいのでしょうか。

松本先生:もし自傷している子がいたら、絶対にその子を責めないでほしい。

自傷は何かトラブルを抱えていてつらいというサインです。責めたり、見て見ぬ振りをしたりしないで、優しく声をかけてあげてください。

ただし、強引に自傷をやめさせる約束はしないこと。自傷をしないと約束をしてしまうと、やめていなかった場合に「裏切った」などとけんかになることや、一生懸命に関わっていても「なかなか友達の自傷行為がなくならない」と今度は自分を責め始めることがあるからです。

――自傷をする友達を支えるには、自傷についての理解も必要ですよね。自傷をする子どもはどれほどいるのでしょうか。

松本先生:10代の子どもたちの1〜2割くらいは自傷の経験があり、死にたいと思った経験がある子も多くいます。よく「自傷では死なない」とか「気を引こうとしてやっている」と考えている人もいますが、その子たちは死ぬ気がないわけでもないし、リストカットなどの自傷は絶対に死なないということでもありません。

繰り返しますが、自傷は決して気をひこうとしてやっていることでもないし、目立とうと思ってしているわけではないんです。

一定の割合で生きづらさを抱えている子はいます。その子たちを見て見ぬ振りせずサポートしていくことが大事です。

――今、つらい思いをしている当事者だけが頑張るのではなく、周りのみんながサポートすることが大事なんですね。

  • 見て見ぬ振りをしない
  • 優しく声をかける
  • 信頼できる大人のところへ連れて行く
  • 自傷に気づいても責めない

友達から死を考えるほどのつらい思いや悩みを打ち明けられたとき、どう声をかければよいか戸惑うこともあると思います。「一緒に遊ぼう」「私にできることはある?」など、相手を責めない言葉であれば基本的になんでも構いません。ただあいさつをするだけでも、もしかしたら相手にとっては救いになっているかもしれません。

今まで周囲に助けてもらった経験の知恵やあなたの優しさを、少しだけでもよいので困っている友達にシェアしてみませんか。