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統合失調症とは?-幻覚・妄想だけでなく多彩な症状をあらわす病気
統合失調症はさまざまな精神症状があらわれる病気です。あらわれる症状は、病気の経過によって変わることもあります。統合失調症の発病の原因ははっきりとは明らかになっていませんが、その方が本来持つ素因と...
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統合失調症とは?-幻覚・妄想だけでなく多彩な症状をあらわす病気

公開日 2018 年 06 月 27 日 | 更新日 2018 年 06 月 27 日

統合失調症とは?-幻覚・妄想だけでなく多彩な症状をあらわす病気
加藤 温 先生

国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 精神科科長 メンタルヘルスセンター長

加藤 温 先生

目次

統合失調症はさまざまな精神症状があらわれる病気です。あらわれる症状は、病気の経過によって変わることもあります。

統合失調症の発病の原因ははっきりとは明らかになっていませんが、その方が本来持つ素因となんらかの環境要因によるストレスが掛け合わさって発症すると考えられています。治療には、薬物療法とリハビリテーション療法が用いられます。

今回は統合失調症の概要について国立国際医療研究センター病院 精神科診療科長の加藤温先生にお話を伺いました。

統合失調症とは?

幻覚・妄想を伴う精神疾患

統合失調症とはさまざまな症状があらわれる精神疾患の1つです。代表的な症状として幻覚・妄想などが挙げられますが、これらは病気の症状の一部で、その他にもさまざまな症状があらわれます。

自我境界にすき間ができる

統合失調症の患者さんは健常な方と比較して自我境界にすき間ができているという考え方があります。たとえば仮に自我を卵の殻だとすると、健常な方の卵の殻は固くて目に見える穴はあいていない状態ですが、統合失調症の患者さんのそれはところどころ穴があり、内側と外側が完全に仕切られてはいません。その結果、自分の中で起きていることと外で起きていることの区別がつきにくくなっている状態といえます。

健常な方の自我と統合失調症の方の自我

そのため、統合失調症の患者さんは、実際にはないことを事実と信じ込んだり、自分の考えていることが周りの人に漏れていると感じたりします。このような状態は健常な方でも、疲れているときなどに経験したことがあるかもしれませんが、長く続く場合には病的な可能性があります。

統合失調症の好発年齢など、かかりやすい人の特徴

学生

青年期〜成人期にかかりやすい

統合失調症は10〜20歳代の青年期〜成人期にかけて発病することが多いといわれています。しかし、なかには発症した段階では病院を受診せず、中年期を過ぎてから病気が発覚することもあります。基本的には早期の完治を目指すというよりも、長く付き合っていく病気と考えられています。

統合失調症の原因

脳

具体的な原因は不明

統合失調症は、発症の原因が明らかにはなっていません。しかし遺伝などの素因(その病気にかかりやすい素質)を持つ人が、環境ストレスを受けることによって発症するのではないかと考えられています。

ここでいう環境ストレスとは、日常で受ける環境の変化による刺激のことを指し、具体的には進学・就職・独立・結婚等が挙げられます。これらの例は人生の中では「おめでたいこと」と捉えられることも多いと思います。しかし、環境が変化することによりその人に多少なりともストレスを与えることもあり、それが引き金となって統合失調症が発病することもあります。

ドパミン仮説が有力

また、統合失調症の症状には、脳内の神経伝達物質の1つである「ドパミン」が最も関与しているといわれています。ドパミンとは快感を得たり、意欲を感じたり、作ったりする役割を持ちます。脳内のある部位(中脳辺縁系)でドパミンが多く分泌されてしまうと幻覚・妄想を引き起こし、別の部位(中脳皮質系)でドパミンが減少するとうつ病のような症状を引き起こすこともあります。このように統合失調症は、ドパミンをはじめとした神経伝達物質のコントロール不良によって症状があらわれると考えられています。

しかし、なぜ神経伝達物質の分泌がうまくコントロールできなくなってしまうのか、その理由はまだわかっていません。

統合失調症の症状

統合失調症の経過

統合失調症は、患者さんによってさまざまな経過を辿るため、症状や経過を一辺倒に述べることはできません。しかし一般的には、「前兆期」「急性期」「回復期」「安定期」と発病から時間が経過するにつれ、多様な症状をあらわします。ここでは一般的な病気の経過を4つに分けてご説明します。

急性期……病気が始まり、病状が不安定かつ緊急性を要する期間

回復期……病気が軽快、または日常生活ができる状態に向かっている時期。

統合失調症の経過

統合失調症の前兆期

不眠

統合失調症では幻覚・妄想などの代表的な症状があらわれる前に、次のような症状が現れることもあります。

<前兆期の症状>

  • 不眠
  • 不安
  • 神経過敏
  • 身体症状 など

これらの症状は、統合失調症の前兆期にみられるといわれています。

統合失調症の急性期

統合失調症の急性期では、「陽性症状」が目立ちますが、次第に「陰性症状」が目立ってきます。ここでは、それぞれの症状について詳しく説明します。

幻覚・妄想などに代表される「陽性症状」

統合失調症の急性期の特徴的な症状を示すのが陽性症状です。陽性症状には次のようなものがあります。

<代表的な陽性症状>

  • 幻覚
  • 妄想
  • 精神運動興奮
  • 昏迷 など

幻覚とは

幻覚とは、実際にはないものを、存在するかのように感じることです。「幻視・幻聴・幻触・幻味・幻嗅」があり、なかでも統合失調症でよく見られるのが幻聴です。幻聴とは、実際にはないことが聞こえてしまう状態です。統合失調症の幻聴は「自分の悪口が聞こえる」「自分のしていることに口出ししてくる」など、被害的な内容が多いことが特徴です。症状の軽い方では、「なんとなく聞こえる」というような印象ですが、症状の重い方だと「実際に悪口をいわれている」と強く思い込み、確信に至ります。

妄想とは

妄想とは、実際にないことが起きているように思考することです。統合失調症による妄想は、先に述べた幻聴と同じく被害的な内容であることが多く、たとえば「自分のことを噂している」「見張られている」「つけられている」「監視されている」などと考えるようになります。

うつ病のような症状を引き起こす「陰性症状」

落ち込む人

統合失調症にみられるもう一方の代表的症状が「陰性症状」です。陰性症状には次のようなものが挙げられます。

<代表的な陰性症状>

  • 抑うつ
  • 無気力
  • ひきこもり
  • 倦怠感
  • 感情の平板化 など

陰性症状とは、意欲が落ちて、思うように動くことができず、仕事や家事、学問などで、自分本来の能力を十分に発揮できなくなる状態です。周囲からみても「ぼーっとしている」「元気がない」と思われることがあります。

陽性症状が目立たない場合、うつ病との鑑別が難しくなるケースもある

統合失調症では陽性症状と陰性症状を認めますが、人によっては陽性症状がほとんどない、あるいは目立たず、陰性症状が主体となることがあります。この場合、症状の類似した病気「うつ病」との鑑別が難しくなることがあります。統合失調症とうつ病とではそれぞれ治療方法が異なり、誤った治療をすることで症状が悪化してしまうこともあります。

先に述べたように、統合失調症は青年期〜成人期にかけて発症する病気ですが、一方でうつ病は30歳台以降の中年期に多い病気です。そのため、10代や20代でうつ病が疑われる患者さんに対しては、より適切な診断を早期に行うために、幻覚・妄想などの陽性症状がなかったかどうか、問診等で詳しく訊き、統合失調症ではないかどうかを慎重に確認する必要があります。

統合失調症の回復期

陽性症状が目立たず、陰性症状が残る

患者さんによって差がありますが、回復期では一般的に、幻覚・妄想などの陽性症状が次第に減少し、陰性症状が残ります。

統合失調症の安定期・慢性期

仕事

統合失調症の患者さんの多くは、治療の進歩もあり、ほとんどの方が経過とともに安定期・慢性期をむかえることができます。安定期・慢性期に至っても陰性症状をはじめとする症状が残ることもありますが、長期的に適切な薬を服用することである程度コントロールできるようになり、安定した生活を送れるようになる方が多いです。

就学・知能について

統合失調症は元々知能には問題のない患者さんがほとんどです。しかし、発病後、次第に思考力や判断力が落ちていってしまう患者さんもいます。

また統合失調症と耳にすると強い興奮状態や、意味の通らない言葉を発するなど、意思の疎通が難しい状態の患者さんをイメージする方もいるかもしれません。確かに、幻覚・妄想などの陽性症状があらわれているときには、そのような状態になってしまうこともあります。しかし、基本的には穏やかで意思の疎通を図れる時期がほとんどです。

統合失調症の診断・検査

問診

症状、本人の生活歴・家族歴をみて、総合的に判断

統合失調症の診断には、血液検査や画像検査などの直接的に有用な検査はありません。そのため、医師は患者さんの症状やその経過、あるいは生活歴、家族歴などを総合的にみて診断をくだします。そのため、1度受診されただけでは診断がつかず、複数回の受診が必要なこともおおいです。

体の病気や薬による影響がないか確認

統合失調症の症状は、他の体の病気、薬の服用による副作用の症状に似ていることがあります。そのため、診断を付ける前に、そのような病気が隠れていないか、また服用している薬による症状ではないか、これらの確認も行います。確認のために、血液検査、CTやMRIなどの画像検査を用いることもあります。たとえば、次のような病気や薬が、統合失調症に似た症状を引き起こすことがあります。

CT……エックス線を使って身体の断面を撮影する検査

MRI……磁気を使い、体の断面を写す検査

<統合失調症に似た症状を引き起こす可能性のある病気>

  • 脳炎、脳腫瘍などの神経系の病気
  • 甲状腺や副腎など内分泌系ホルモン異常の病気
  • 膠原病などの自己免疫性の病気 など

<統合失調症に似た症状を引き起こす可能性のある薬>

  • ステロイドの治療薬
  • 覚せい剤などの違法ドラッグ  など

統合失調症の治療

薬

統合失調症の治療では、主に「薬物療法」と「リハビリテーション療法」が行われます。ここではそれぞれの治療方法についてご説明します。

薬物療法

統合失調症の治療の中心となるのが薬物療法です。統合失調症の薬物療法は、陽性症状を抑える対症療法(症状を和らげる治療)としての役割と、脳内の神経伝達物質のバランスを整える役割を併せ持っています。統合失調症は症状の憎悪を繰り返す度、患者さんの元来持っていた能力を発揮できなくなっていくこともあるため、継続した治療が必要です。これにより、脳内の神経伝達物質のバランスが保たれ、より安定した生活を送れるようになります。

リハビリテーション療法

統合失調症のリハビリテーションは生活訓練が中心です。元来本人が持っている能力を可能な限り維持し、社会と関わる窓口をつくるために行われます。具体的には、集団行動に慣れるためのデイケアに通ったり、就業の訓練を行うために作業所に通ったりします。

治療に入る前に患者さんに病気を理解してもらうことが大切

病気の経過にもよりますが、統合失調症の患者さんのなかには、自分が病気である事に気が付かない、病気だと思っていない方もいます。特に幻覚・幻聴を事実と思い込んでいる患者さんの場合、「自分は病気ではない」という認識が顕著です。このような患者さんに治療を行う際は、まず患者さんに、病気のことを知ってもらい、治療の必要性を理解してもらうことが大切です。患者さんに病気のことを詳しく説明する取り組みを「疾病教育」ということもあります。

疾病教育をうけ、自分が病気であることを受け容れて治療に臨むと、幻覚・妄想があらわれても、症状から距離が取れて「これは幻覚・妄想だ」と認識できるようになる方もいます。このように、自分自身が病気の状態を認識することで、より安定した生活を送れるようになる患者さんもいます。

急性期には入院を検討することも

統合失調症では急性期に強い陽性症状があらわれ、通常の生活が難しくなる患者さんもいます。このような患者さんに対しては、入院を検討することもあります。

陽性症状がある患者さんはときに激しく興奮したり、「自分は病気ではない」といって病院から出ていこうとすることもあります。また外界の刺激に敏感で、強い恐怖を感じる患者さんもいます。このような場合、 閉鎖病棟など安全な治療環境のある専門の病院で、専門の医療従事者からのサポートを受けながらの入院が必要になります。

統合失調症の早期発見

患者さんとご家族

早くみつけて適切な対処をすることが大切

統合失調症は、さまざまな症状があらわれる病気です。病院を受診するタイミングに迷う方もいるかもしれませんが、早期に発見できれば、幻覚・妄想などの強い症状があらわれる前に準備ができることもあります。そのため、次のような前兆期の症状がみられた場合には、一度病院を受診することをおすすめします。

<こんなときは受診を検討>

  • 神経過敏……ちょっとした音が気になる、テレビ音声や画像などが不快に感じる、外を歩いている時にいつもより人の視線が気になる など
  • 強い不安や緊張など

ご家族の方へ

幻覚・妄想などがあらわれると、本人が異常に気づけないこともあります。このような場合には、ご家族や周囲の方から病院の受診を促すとよいでしょう。なかには「病気ではない」と言い張って受診を拒む方もいらっしゃるかもしれませんが、出来る限り早く病院を受診されることをおすすめします。ご家族が先に、医療機関、地域の精神保健福祉センターや保健所で相談する方法もあります

また、ご家族には、難しいこともあるかとは思いますが、患者さんの幻覚や妄想に対しては、否定も肯定もしないことが原則です。周囲の方が患者さんを責めず、辛さを理解しようとすることで、患者さんの気持ちを楽にすることもあります。

統合失調症は早期に発見し適切な対処を行えば、コントロールして付き合っていける病気です。気になることがあればいつでも医師に相談していただきたいと思います。

統合失調症・双極性障害(加藤 温先生)の連載記事

1994年 日本医科大学医学部卒業。現在、国立国際医療研究センター病院精神科科長、メンタルヘルスセンター長を兼任。精神科臨床全般に対応しているが、総合病院精神科での勤務が長く、コンサルテーション・リエゾン活動に力を入れている。

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