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新型コロナウイルス感染症における子どもへの感染の可能性〜大人と子どもの違いとは〜

新型コロナウイルス感染症における子どもへの感染の可能性〜大人と子どもの違いとは〜
加來 浩器 先生

防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授

加來 浩器 先生

目次
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この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2021年01月15日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

中国を発端として感染が広がった新型コロナウイルス感染症。日本の感染者数も徐々に増加しており、よりいっそうの感染症対策が叫ばれています。一方で、子どもは感染しにくい、重症化しやすいといった意見を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

このページでは、新型コロナウイルス感染症の子どもの感染者数の推移や重症化する確率、感染を予防するために気を付けることなどについて解説します。

日本小児科学会によれば、新型コロナウイルス感染症の子どもの感染者数は成人と比較して少ないと考えられており、子どもは成人と比較して新型コロナウイルス感染症に感染しにくい可能性があると示唆されています。

厚生労働省のデータ*によれば、2021年1月6日時点でもっとも感染者数が多い年代は20歳代(58,346人)で、10歳未満の子ども(5,921人)や10歳代の子ども(15,206人)の感染者数はそれと比較すると少ないといえます。ただし、感染拡大に伴い、徐々に子どもの感染者数も増加していることは間違いありません。

*新型コロナウイルス感染症の国内発生動向(速報値)(令和3年1月6日18時時点),厚生労働省

これまでにコロナウイルスの種類は6種類確認されており、そのうち4種類は一般のかぜの10~15%(流行期は35%)を占め、残りの“SARS-CoV(通称SARS)”と“MERS-CoV(通称MERS)”はそれぞれ2002年、2012年に新種のコロナウイルスとして初めて確認され、世界的に猛威を振るいました。

SARSとMERSでは、子どもはウイルスに感染していても軽症か、症状が現れないこと(不顕性感染)が多いといわれていました。今流行している新型コロナウイルス(COVID-19)でも、同様に子どもの感染者には症状が出にくい可能性があると考えられています。また、仮に症状が現れた場合にも、主な症状は発熱、咳、体のだるさ、嘔吐、下痢などで、発症から1〜2週間以内には症状が軽快することがほとんどであると考えられています。

中国のデータによれば、大人の新型コロナウイルス感染症の重症化率は18.5%であるのに対し、子どもの重症化率は5.9%と比較的低いことが分かってきています。しかし、1歳以下の子どもでは重症化率が10.6%と高く、生後間もない子どもに対してはとりわけ注意が必要と考えられています。

現時点で、日本でも高齢者や基礎疾患を抱えている人を中心に、成人が新型コロナウイルス感染症に感染して重症化し死亡された例が報告されています。しかし、2021年1月6日時点では子どもの感染者が重症化した例は成人よりも少なく、新型コロナウイルス感染症による0〜19歳までの子どもの死亡例は報告されていません。

ただし今後、子どもでの患者数が増えてくるにつれて、SARSMERSが流行した際と同様、さまざまな基礎疾患を有する子どものなかで重症化例が出てくる可能性も想定されます。実際アメリカでは、1歳未満の子どもや基礎疾患を持つ子どもは重症化し、入院が必要となる頻度が高いという報告もあります。

新型コロナウイルス感染症の感染者数が増加している現在、それに伴って従来感染しにくいと考えられる子どもの感染者数も増加傾向にあるといえます。今、私たちにできることは感染症対策に取り組み、感染予防に努めることです。

新型コロナウイルス感染症の予防には、かぜやインフルエンザなどほかの感染症と同様、飛沫予防に加えて、手洗いや手指のアルコール消毒が重要です。また、高頻度に接触する箇所のアルコールや界面活性剤による拭き取りが有効です。

外出時には、不意に咳やくしゃみの飛沫を浴びることや、ウイルスに汚染された場所を直接手に触れる機会も多くなります。ドアノブや遊具、おもちゃなどに触れた手で口や鼻を触ることで感染するため、帰宅後などには石鹸を付けて手を洗い、適宜アルコール消毒液で手を消毒するのがよいでしょう。

また、衛生対策だけでなく体調管理や室内環境も大切です。免疫力が低下しているときや、空気の乾燥によって気道粘膜の防衛機能が低下しているときは、感染症にかかりやすくなります。したがって、日頃から体調に気をつけるとともに室内の湿度を50~60%に保つようにしましょう。喉に付着したウイルスの体内侵入のリスクを減らすために、うがいや歯磨きなどの口腔衛生を保つことも有用であると考えられます。

新型コロナウイルス感染症の感染予防に対するマスク着用の効果は子どもの場合、正しくマスクを着用することが難しく、マスクを手で触ることによりマスクに付着したウイルスが手に付いてしまう可能性もあるため限定的です。

したがって、そのような症状がある場合は、できるだけ外出を控え、自宅で安静にすることを検討しましょう。

また、マスクをしていないときに不意に咳やくしゃみをしてしまうことがあります。そのときは、ほかの人に向けてしない、袖・肘の内側やティッシュなどを使って口や鼻をおさえるなどの“咳エチケット”を家庭で指導するとよいでしょう。

症状が現れたときの対処法や病院を受診する目安

子どもに発熱などかぜに似た症状が現れたときは、保育園・学校などを休み、外出を控えて自宅で安静にするようにしましょう。症状が続く場合には毎日体温を測定し、発熱が続いた期間や実際の体温と測定時間、そのほかの症状などについて記録しておくとよいでしょう。

子どもに息苦しさ、強い体のだるさ、高熱などの強い症状が現れた場合には、速やかに帰国者・接触者相談センターやかかりつけの小児科医に相談しましょう。また、強い症状でない場合でも発熱、咳などの軽い症状が4日以上続く場合には相談しましょう。

新型コロナウイルス感染症の拡大からおよそ1年が経過し、ウイルスについて明らかになったことも増えたため、予防対策などがしやすくなってきました。一方で、検査数の増加などによって無症状の感染者を見つけられるようになってきたこともあり、感染者数は大きく増加し、2021年1月7日には1都3県(千葉・埼玉・神奈川)で緊急事態宣言が発令されるなど予断を許さない状態が続いています。

子どもが新型コロナウイルス感染症に感染する経路としては学校などの教育現場よりも、家庭内感染の割合が高いといわれています。これまでどおりの手洗いやうがい、咳・くしゃみ時の咳エチケットに加え、自身の呼気中のエアロゾルを意識したマスク装着(ユニバーサルマスキング)を積極的に行い、感染の予防・拡大防止に努めるようにしましょう。

  • 防衛医科大学校 防衛医学研究センター 教授

    加來 浩器 先生

    防衛医科大学校防衛医学研究センターにて、広域感染症疫学・制御研究部門の教授を務める。デング熱やマラリアなど、世界で流行する感染症について、病原体や媒介者の性質、地域の歴史や国ごとの課題などに深い観察眼を持ち、多角的な研究を行っている。

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