じんはい

じん肺

最終更新日:
2021年05月24日
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2021/05/24
更新しました
2017/04/25
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概要

じん肺とは、小さな土ぼこりや金属・鉱物の粉塵(ふんじん)などを長年にわたり大量に吸い込むことで発症する肺の線維増殖性病変のことです。じん肺を発症すると、咳や痰、息切れなどから始まり、長い年月をかけて肺がんを発症することもあります。

じん肺は、主に鉱山や工事現場、建設業などでの作業に関連して発症する病気であることから、“職業性肺疾患”の1つとして認識されています。断熱材や防音材として“アスベスト”が知られていますが、アスベストもじん肺を引き起こす原因の1つであり、甚大な健康被害(アスベスト関連肺疾患)をもたらします。

過去の日本でもアスベストなどの有害物質はさまざまな用途で使用されていた時期がありますが、現在は基本的に使用が禁止されており、さらに労働衛生の向上によりじん肺の発症件数は一時期のピークに比較して減少しています。しかし、じん肺における健康被害がなくなったわけではなく、今後も注意するべき職業性疾患です。

原因

じん肺は土ぼこりや金属、鉱物の粉塵などを長年吸入し続けることで発症し、中でもアスベストが原因となるものが有名です。アスベストは断熱材や防音材として建築物に使用されていた過去があります。今では使用禁止となっていますが、古い建築物の解体現場などではまだまだ飛散の懸念があります。

アスベストはとても小さな線維性成分であり、体内に取り込まれると肺の奥深くまで潜り込みます。肺に取り込まれたアスベストは、異物として体外に出されますが、完全に除去されることはありません。そのため慢性的に炎症反応が繰り返されることになり肺の組織が障害を受け、肺がん悪性中皮腫などを発症することになります。

アスベスト以外にも同様に肺障害を引き起こす物質はあります。たとえば、自然界に大量に存在する“シリカ(遊離ケイ酸)”という物質です。シリカの結晶は石英と呼ばれ、コンクリートや塗料、研磨剤に含まれており、アスベスト同様に非常に小さい物質です。工事現場や建設現場で曝露されるとシリカは肺の中に入り込み、慢性的な線維性増殖性病変を引き起こします。

そのほかにタルク、セメント、アルミニウム、酸化鉄、ケイ酸、黒鉛、カーボンブラックなど、数多くの物質がじん肺の原因になることが知られています。いずれも肺に取り込まれ、肺に長年にわたる障害をもたらすことになります。

症状

粉塵を吸入することで生じる影響は数日や数か月単位ではなく、数年から数十年を経過してから認めるようになります。初発症状は咳や痰、喘鳴(ぜんめい)などであり、運動時に呼吸困難を感じることがあります。また胸痛や体重減少、指先が太鼓のバチのような形を示す“バチ指”などの症状を認めることもあります。

じん肺ではベースラインの呼吸機能が低下しており、肺炎などの感染症にかかりやすくなります。また長年の肺組織障害を反映して、気管支拡張症気胸、さらには肺がん悪性中皮腫などのよりいっそう重篤な肺疾患を合併します。

検査・診断

じん肺の診断では、胸部単純X線写真などの画像検査が重要です。職業関連肺疾患として認識されており、発症のリスクを伴う職業に従事する人については、健康診断にて胸部単純X線写真を撮影することで早期に病気を発見することが可能です。

ほかにも、呼吸機能の障害を客観的に評価するためにスパイロメトリーと呼ばれる生理検査や、血液中の酸素濃度を評価するために動脈血液を用いた血液ガス分析も行われます。

じん肺が進行した場合や、気胸気管支拡張症肺がん悪性中皮腫が発生した場合などにおいても、画像検査は非常に有用です。胸部単純X線写真以外に胸部CT検査が行われることもあります。そのほか、喀痰(かくたん)検査にてじん肺に特徴的な細胞や粉塵の残骸、悪性細胞を確認することもあります。悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の確定のためには、最終的には実際に組織を採取して顕微鏡で腫瘍細胞を確認する“病理検査”が行われることになります。

治療

じん肺は一度発症すると根本的な治療はできません。したがって発症リスクを伴う職業に従事する際には、粉塵の発生を減らす努力をしたり、マスクを着用したり、曝露時間を短くしたりするなどの予防対策が重要です。また、定期的な健康診断を受けることでじん肺の発症を、より早期に発見する姿勢も求められます。

じん肺を発症した際には対症療法が行われます。咳や痰などに対して鎮咳薬や去痰剤を用います。また、気管支拡張薬やステロイドが使用されることもあります。低酸素状態が強い場合には在宅酸素療法が選択されることになります。

じん肺では肺炎を発症しやすく、重症化する危険性も高まります。したがって、インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを接種し、予防可能な呼吸器疾患については予防体制を敷くことが重要です。肺がんを代表とする悪性疾患を発症した際には、手術療法や化学療法、放射線療法を用いて集学的な治療を行うことになります。

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