のうほうせいせんいしょう

のう胞性線維症

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概要

のう胞性線維症(ほうせいせんいしょう)とは、先天的な遺伝子異常を原因とし発症する疾患であり、粘稠度の高い粘液が分泌されることから、肺炎膵炎、腸閉塞などを繰り返す疾患です。日本においては100例弱の患者さんがいると報告されており(2014年10月段階)、比較的稀な疾患と考えられています。しかしながら発症率については人種差が大きいことも知られており、最も多い白人種をいると3,000人前後に1人の発症率であると報告されており、同人種においては決して稀な疾患ではありません。こうした発症率の差を反映して、使用可能な治療方法や研究の進捗状況は国ごと に差があります。欧米では30代後半までが平均予後である一方、症例が稀な日本においては20歳前後と報告されており、治療成績が平等化されることが期待されています。

原因

肺や消化管、膵臓、皮膚を含め全身臓器には「腺組織」と呼ばれるものが広く分布しています。腺組織は、粘液や消化液、汗などの分泌物を作るのに必要な組織です。正常な分泌物を作るためには、適正な量の水分とイオンが存在することが必須です。しかしながら、のう胞性線維症においては、特に塩化物イオン(Cl-)の調整がうまくいかなくなっています。その結果、分泌物が糊のようにドロッとした粘稠度の高い状態になってしまい、各種臓器で分泌物が詰まってしまうようになります。分泌物が肺で詰まってしまうと、病原体をうまく体外に排泄できなくなり肺炎を引き起こしますし、消化管が詰まると糞便の流れが阻害されイレウスを発症することになります。粘稠度の高い分泌物に応じて細菌感染症や消化管障害が繰り返されることで、組織への障害が蓄積されることになります。 塩化物イオンの調整は、CFTR遺伝子という遺伝子が深く関与しています。CFTR遺伝子に異常があると、塩化物イオンの調整に悪影響が及ぼされることになり、水分が乏しい分泌物が産生されることにもなります。これまでに2,000種類近くのCFTR遺伝子異常が報告されていますが、人種による差があります。 CFTR遺伝子は人間の細胞の中には2つ存在しており、それぞれ父親および母親から遺伝されています。2つ存在するうちの1つのみにCFTR遺伝子異常を認める場合には、のう胞性線維症は発症しません(病気の保因者になります)。しかし両親ともに1本ずつCFTR遺伝子異常を持っている場合には(両親は病気を発症していません)、両親がもつ異常な遺伝子が次の世代に受け継がれ、その子どもが異常なCFTR遺伝子を2本有する可能性があり、この場合にはのう胞性線維症を発症することになります。ちなみにこうした遺伝形式を、常染色体劣性遺伝と呼びます。

症状

のう胞性線維症では、粘稠な分泌物にともなう症状として、主に肺や消化器系(消化管、膵臓、肝臓)に病気が出現します。

①肺 粘稠な分泌物が気道系に影響を及ぼし、正常な病原体の排泄が行えなくなってしまいます。その結果、のう胞性線維症では肺炎気管支炎を繰り返します。肺炎を繰り返すと、その都度肺への組織障害が蓄積されることになり、徐々に呼吸機能が低下し、最終的に呼吸不全を来すことになります。また、副鼻腔炎にも粘稠な分泌物の影響が生じることもあり、副鼻腔炎を繰り返すことも特徴です。 ②消化器系 赤ちゃんが出生をすると、胎便という分娩が排泄されます。正常な胎便であってもやや粘稠度は高く、母乳栄養時と比べてもややネットリとしている傾向があります。のう胞性線維症のお子さんにおいてはさらに胎便の粘稠度が高くなる結果、胎便が体外に排泄できない状況に陥ることがあります。この状態のことを「胎便イレウス」と呼び、消化管のとおりが悪くなった状態です。胎便イレウスでは腹部膨満や嘔吐、哺乳障害を呈するようになります。 そのほか、膵臓や肝臓からは消化液が分泌されていますが、のう胞性線維症の患者さんでは、こうした消化液の分泌も障害を受けます。その結果、正常な消化活動が行うことができなくなり、脂肪便や膵炎糖尿病肝硬変といった状態に陥ることがあります。栄養障害が重度になると、成長面にも影響が生じるようになります。

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検査・診断

のう胞性線維症では、汗の中の塩化物イオンの濃度が高くなることが知られています。このことを確認するために、ピロカルビンイオン導入法と呼ばれる検査で汗の中の塩化物イオン濃度を測定することがあります。また膵臓の分泌障害を確認するため、「BT-PABA試験」と呼ばれる方法が取られることがあります。この検査では、BT-PABAという物質を内服し、その後尿中にその物質の一部が排泄されるかどうかを見る検査になります。のう胞性線維症において膵臓の消化機能が障害を受けている場合には、尿中への排泄が低下することが確認されます。また膵臓からはエラスターゼと呼ばれる物質が分泌されていますが、便の検査を用いてこの物質を測定することもあります。 のう胞性線維症は、CFTR遺伝子に異常があることが知られているため、遺伝子検査を用いて遺伝子の異常を検索することもあります。

治療

のう胞性線維症の症状は、個々人によって大きく異なるため、症状に合わせた適切な治療方法を選択することが重要です。 粘稠度の高い痰の排出を促すために、排泄しやすい体位を取ったり、胸に振動を与えて物理的に痰を排泄させるようにします。また痰そのものを少しでも柔らかくするために、吸入(食塩水やドルナーゼアルファ吸入薬など)や内服薬が使用されます。内服薬には抗生物質が使用されることもあり、痰の分泌促進の意味合い以外に、病原体を排除させる目的もあります。 消化器系の症状に対しては、消化不良を軽減させることを目的に消化酵素剤を服用する必要があります。消化酵素剤に加えて、ビタミン剤などの栄養補給が行われることもあります。 一部のCFTR遺伝子異常に対して、欧米においてはCFTRタンパク質に対して直接働きかける治療薬(ivacaftorやlumacaftor/ivacaftor)が使用されることもあります。 また、肺炎膵炎肝硬変などの合併症を発症した場合には、その都度治療介入が検討されることになります。

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