概要
アキレス腱断裂とは、かかととふくらはぎの筋肉の間にある“アキレス腱”が何らかの原因で断裂することをいいます。アキレス腱はヒトの体のうちでもっとも太い腱であり、元来およそ1トンの牽引にも耐えられる強い腱といわれています。また、ふくらはぎの筋肉とは下腿三頭筋のことで、大きく腓腹筋とヒラメ筋からなります。
アキレス腱は前述のとおり、耐久性の高い腱として知られていますが、主に走るとき、跳ぶときの踏み込み動作によってふくらはぎの筋肉が急激に縮んだとき、高いところから飛び降りて着地の際にふくらはぎの筋肉が急に伸びたときなど、筋肉の急な伸び縮みが起こることによって断裂してしまうことがあります。
アキレス腱断裂では痛みを自覚する前にふくらはぎを強く叩かれたような感覚や、“バチッ”といったアキレス腱の切れた音を自覚することもあります。
アキレス腱断裂の好発年齢は30~50歳代で、特にバレーボールやテニス、バドミントン、ソフトボールなどのスポーツを愛好する人によくみられます。また、時に普段運動習慣のない壮年期の方が、子どもの運動会などに参加して急激に運動した際に起こることもあります。
原因
アキレス腱断裂の主な原因は、スポーツなどによるふくらはぎの筋肉の急激な伸び縮みです。また年齢によるアキレス腱の変性(老化現象)も影響していると考えられることから、子どもよりも大人に多いけがとして知られています。
症状
アキレス腱が断裂すると、その瞬間は“ふくらはぎを強く叩かれた”“ふくらはぎにボールが当たった”“後ろからかかとを蹴られた”というような衝撃を感じます。また“バチッ”“ブチッ”“パン”など、アキレス腱が断裂した音を自覚できる場合もあります。
断裂直後は足を踏ん張ることが難しくなり、その場に転倒してしまったり、しゃがみこんでしまったりする人も少なくありません。しかし痛みの症状は弱い場合もあり、時間の経過とともに再び歩き出せるようになることもあります。なお歩き出せるようになった場合でも、アキレス腱が断裂してしまっているため、つま先立ちはできません。
検査・診断
アキレス腱断裂は、怪我をした時の状況や身体的所見から診断できる可能性が高いといえます。そのほか、MRI検査、超音波検査などの画像検査も検討されます。
アキレス腱断裂の身体的所見
アキレス腱断裂では、アキレス腱のある部分を触れると断裂部の皮下にへこみがあることが分かるほか、押された際の痛み(圧痛)が生じることが一般的です。
また、トンプソンテストと呼ばれる検査方法も有用です。トンプソンテストとはうつ伏せになり、膝を直角に曲げた状態でふくらはぎを強くつまむことにより、足首の動きを確認するテストです。正常なアキレス腱では、ふくらはぎを強くつまむことにより足首が連動して動き、つま先が上下します。しかしアキレス腱が断裂していると、ふくらはぎを強くつまんでも足首が動かず、つま先も動きません。
画像検査
画像検査は、前述の身体的所見から診断ができなかった場合や治療中の評価などに用いられることが一般的です。超音波検査やMRI検査では、アキレス腱の断裂をはっきり確認できる可能性が高いです。
またX線検査では、アキレス腱の断裂自体はほとんど確認できません。一方でアキレス腱断裂と同時にかかとや足関節の骨が折れている可能性もあるため、骨折の確認に役立ちます。
治療
アキレス腱断裂の治療方法には、手術を行わない“保存療法”と“手術療法”があります。いずれの治療も治療成績に大きな違いはないといわれていますが、日頃から運動をするアスリートなどの場合、手術療法のほうが競技復帰までの期間が短くなるという報告もあることから、積極的に手術療法が検討されます。また、一般的に保存療法の場合、固定期間が長くなるため早い社会復帰を目指して手術療法が選択されることもあります。どちらの治療にも利点・注意点があるため、医師と相談してライフスタイルに合った治療方法を選ぶことが大切です。
いずれの治療を選択した場合にも、早期からリハビリテーションを行うことが有効です。ただし、競技復帰までは半年ほど時間がかかるとされています。
保存療法
保存療法では、ギプスなどの装具を用いて足関節を固定し、自然に腱が修復することを待ちます。
手術療法
手術療法では、アキレス腱断裂部を切開して断裂したアキレス腱を縫合します。
予防
アキレス腱断裂の予防方法としては、運動前のストレッチや生活習慣病の治療が挙げられます。
運動前のストレッチ
アキレス腱は急な筋肉の伸び縮みによって断裂してしまうため、アキレス腱に無理な負担がかからないよう、全身の柔軟性を保つことが大切です。運動を開始する前には、脊椎や四肢など全身のストレッチを行うようにしましょう。
生活習慣病の治療
前述のとおり、アキレス腱断裂には加齢によるアキレス腱そのものの変性も関与すると考えられています。特に動脈硬化、痛風、高脂血症などの生活習慣病はアキレス腱をはじめとする腱の変性に関与すると考えられています。これらの病気にかかっている人は、その治療を行うことがアキレス腱断裂の予防につながる可能性があります。
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足の親指が自分の意思で屈伸出来ません。
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アキレス腱の痛み
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