うぇるしゅきんしょくちゅうどく

ウェルシュ菌食中毒

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

ウェルシュ菌食中毒とは、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)の毒素によって引き起こされる食中毒のことです。ウェルシュ菌は、土壌、河川、下水、海など自然界およびヒトや動物の腸内細菌叢に存在する菌です。そのなかには、多種類の毒素を産生する菌株も含まれています。毒素産生能を持つ菌に汚染された食品を摂取すると、その菌が腸管に到達して増殖するときに毒素が産生され食中毒が起こります。

ウェルシュ菌は熱に耐性を示す芽胞(極めて耐久性の高い細胞構造)を産生します。ウェルシュ菌自体は熱に弱いので、熱を加えることにより死にますが、芽胞は100℃の加熱でも死にません。カレーなど大量に作った場合に、使用するジャガイモ、ニンジンなど土壌で育つ野菜に菌の芽胞が含まれていると、加熱時に菌は死んだとしても残存する芽胞が翌日までに菌体に変化して毒素を産生し集団食中毒の原因になることもあります。

ウェルシュ菌は自然界に広く存在するため完全な除菌は難しいです。そのため、食品の作りおきは可能な限り避ける、作りおきをする場合には小分けして早めに冷蔵保存する、加熱処理したらなるべく早く食べきるなどの注意と対策が必要です。
 

原因

ウェルシュ菌食中毒の原因となるウェルシュ菌は、生活環の中で芽胞と呼ばれる形態を取ることがあります。芽胞は非常に熱に強く、100℃で1時間以上加熱しても生存可能です。そのためウェルシュ菌に汚染された食材を使用してカレー・シチュー・スープなど長時間加熱する煮込み料理でも芽胞は残存します。

食品を加熱処理した後、温度が下がるにつれて生き残っている芽胞は、発芽してウェルシュ菌体に変化し増殖します。先に述べたような煮込んだ料理は酸素が少なくなっており、偏性嫌気性菌であるウェルシュ菌に適した増殖環境になります。また、加熱処理(調理)から摂取(飲食)までの時間が長く冷却スピードがゆっくりであるほど芽胞は発芽して菌体に変化し増殖します。

食品を介して体内に侵入したウェルシュ菌は消化管内でさらに増殖、あらたに芽胞を形成するようになります。ウェルシュ菌は芽胞形成をする際にエンテロトキシンと呼ばれる毒素をつくりだし、この毒素が消化器症状を引き起こします。
 

症状

ウェルシュ菌食中毒は、原因となる食事をとってから6~18時間ほどの潜伏期間を経てから発症します。腹痛や下痢といった症状が中心で、嘔吐や発熱はほとんどありません。軽症な症状で経過することが多いですが、ときに重度の脱水症状を呈することもあります。特に小児や高齢者では重症化のリスクが上昇します。
 

検査・診断

ウェルシュ菌食中毒の診断では、便検査によりエンテロトキシンを産生するタイプのウェルシュ菌がいるか確認します。便検査によってウェルシュ菌が検出された場合、PCR法と呼ばれる検査を実施して、これらがエンテロトキシンを産生するのに必要な遺伝子を保持しているか詳しく調べます。

ウェルシュ菌食中毒は集団発生することが多いため、同様の症状を呈している患者さんを対象に広く検査を行い、菌の遺伝型や感染経路(どの食事や原材料が原因となったのか)などを特定します。
 

治療

ウェルシュ菌食中毒は1〜2日で軽快することが多く、重症化することはそれほど多くありません。そのため、下痢をしている最中には経口補水液などによる脱水予防など対処療法がとられます。子どもや高齢者などは重症化しやすいため、経口摂取がままならず脱水が進行する場合には、点滴による治療介入が必要となることもあります。ウェルシュ菌食中毒は、発症予防策を講じることが重要です。食事を作り置きすると菌が増殖しやすい環境を作ることにつながるため、その日のうちに食べきれる量だけを作るようにしましょう。

作り置きせざるを得ない場合でも、加熱後に小分けをして出来るだけ早く10℃以下の環境で冷却・保存する、充分な再加熱による芽胞以外のウェルシュ菌体の殺菌やエンテロトキシンの無毒化するなどの対策が有効です。
 

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