えーりきあしょう

エーリキア症

最終更新日:
2024年04月16日
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2024/04/16
更新しました
2017/04/25
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概要

エーリキア症とは、ダニやノミ、シラミなどを媒介することで生じるリケッチア感染症の1つで、主に“エーリキア”と呼ばれる細菌を原因とする感染症です。

リケッチア感染症を引き起こすリケッチア科の細菌の多くは自然環境中では生息できず、動物の細胞内でのみ増殖することができます。このリケッチア科に属する細菌の1つが、マダニを媒介して感染するエーリキアです。

エーリキア症はもともと、馬や牛、羊、ヤギ、犬などの家畜の感染症として認識されていました。しかし、1986年の欧米でのヒトへの感染報告に始まり、1990年代にヒトに感染するいくつかの病原体が確認され、新たな人獣共通感染症として注目されるようになりました。

現在、欧米を中心に感染がみられますが、まだ日本では発生は確認されていません。しかし、アジアでも病原体DNAが検出されているため、今後日本国内でも感染が起こる可能性はあります。

エーリキア症では、発熱や頭痛筋肉痛などインフルエンザに似た症状が現れる点が特徴です。通常は軽症ですが、治療が遅れると命に関わることもあります。

原因

エーリキア症は、エーリキアを保有するマダニに刺されることで発症します。エーリキアは野生動物の細胞内に住みついており、マダニが保菌動物を吸血するとエーリキアが移行し、さらに感染したマダニがヒトを刺すことでエーリキアがヒトに移行します。このように“保菌動物→マダニ→ヒト”というサイクルで、マダニを媒介してヒトへのエーリキア感染が成立するのです。

なお、現在までにエーリキア症の原因となる病原体がいくつか発見されています。ヒトのエーリキア症としては、E. chaffeensisという種類のエーリキアによる“ヒト単球性エーリキア症”、Anaplasma phagocytophilumによる“ヒト顆粒球性エーリキア症”が代表的です。それぞれの病原体で感染する場所に特徴があり、E. chaffeensisは白血球の一種である単球に、Anaplasma phagocytophilumは白血球の一種である顆粒球*にそれぞれ感染します。

通常の日常生活の中で、エーリキアがヒトからヒトへ感染することはないとされています。しかし、エーリキアに感染した白血球が血流に乗って体内を巡るため、まれに輸血や臓器移植によってヒトからヒトへ移ることがあります。

*顆粒球……細胞内に殺菌作用を含む“顆粒”がある白血球の総称。

症状

エーリキア症では、エーリキアを保有するマダニに刺されてから数日~10日前後に発熱、頭痛筋肉痛、倦怠感などインフルエンザと似たような症状がみられます。さらに、悪心(吐き気)、嘔吐、下痢などの消化器症状、咳などの呼吸器症状などがみられることもあります。また、体幹や腕、足に発疹(ほっしん)が現れることもあり、特に子どもが感染した場合に多くみられるといわれています。

通常は軽症ですが、ほかの病気や使用している薬などによって免疫が低下している人や高齢者、治療が遅れた場合には死に至ることもあります。致死率は、ヒト単球性エーリキア症で2~3%、ヒト顆粒球性エーリキア症で1%未満とされています。

検査・診断

エーリキア症にかかると、白血球や血小板の減少、血液凝固の異常、肝酵素の高値などの臨床所見が認められます。

しかし、血液検査で分かるこれらの異常はほかの病気でもみられることがあるため、詳細な問診、症状、刺し口の有無なども参考にし、エーリキア症が疑われる場合には、血清(血液中の透明な液体成分のこと)を用いた血清学的検査(IFA法・IP法)や遺伝子検査(PCR)が行われます。

治療

エーリキア症の治療では通常、テトラサイクリン系の抗菌薬が使用されます。子どもや妊婦に対しては、リファマイシン系の抗菌薬が用いられます。抗菌薬を投与してから、24~48時間以内には症状の改善が期待できます。治療が遅れると重症化につながる場合があるため、時には検査結果を待たずに治療を開始することもあります。

エーリキアはマダニに刺されることによって感染するため、一般的な虫刺され対策を行うことで感染を予防することが大切です。野外活動時には草むらを歩かない、肌を露出しない服装にする、ディートを含む虫よけを使用するなどの対策を心がけましょう。

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