概要
カサバッハ・メリット現象とは、生まれつきもしくは乳幼児期に手足や頭頸部(脳と目を除く首から上の部分)に多く発症する血管腫*に随伴して起こる、出血や血小板減少などを伴う現象です。
カサバッハ・メリット現象を呈する血管腫は“カポジ型血管内皮腫”や“房状血管腫”と呼ばれる種類です。乳児期にみられる血管腫の中でもっとも発症頻度が高いとされる“乳児血管腫”ではみられません。
症状としては、それまであった血管腫が急激に硬くなったり、周りの皮膚に内出血をきたしたりすることがあります。また、血管腫がみられる部位では血液を固める成分(凝固因子や血小板)が消費され、全身的に凝固因子や血小板が不足するため、出血した血液が固まりにくくなったり(血液凝固障害)、貧血をきたしたりすることもあります。ときに多臓器不全や多量の出血によって致命的状況に陥ることがあり、このような状況での死亡率は20〜30%とされています。一方、治癒した場合には、皮膚の変色などが残ることはあるものの、その後は良好な経過をたどる傾向にあります。
カサバッハ・メリット現象の治療法として確立したものはありませんが、状態に応じてステロイド薬などを用いた薬物療法や血管腫の外科的切除などが行われます。
発症頻度の低いまれな現象ですが、発症した場合には命に関わることもあるため、大きな血管腫などがみられる場合には定期的に検査を受けて異常がないことを確認する必要があります。
*血管腫:血管の異常により、血管が広がったり増殖したりすることでできる良性腫瘍(りょうせいしゅよう)のこと。
原因
カサバッハ・メリット現象は、カポジ型血管内皮腫や房状血管腫などの血管腫が発生することで起こります。これらの血管腫によって病変部で血液を固める成分(凝固因子や血小板)が消費され、血液凝固障害や全身の出血傾向をきたします。
生まれつきもしくは乳幼児期に発症しますが、遺伝によるものではないといわれています。
症状
カサバッハ・メリット現象では、出生時もしくは乳幼児期から血管腫がみられます。血管腫は手足や頭頸部、体幹のほか、内臓にみられることもあります。このような血管腫は、今まであったものが急激に硬くなって赤紫色に変色したり、周りの皮膚に内出血を起こしたりすることがあります。
さらに、血管腫が存在することで体内の血液凝固因子や血小板が消費されます。そのため、出血しやすくなって皮膚に紫斑が発生したり、体内の至るところで血液の塊(血栓)が発生し、血管に詰まる播種性血管内凝固症候群(DIC)などの重篤な合併症が起こったりすることもあります。
検査・診断
カサバッハ・メリット現象は、症状や血液検査および画像検査データによって診断されます。
血管腫や紫斑などの症状を確認するほか、血液検査で血小板や血液凝固因子の数値を確認したり、超音波検査やMRI検査によって血管腫の状態を確認したりします。さらに、血管腫の種類を特定するため、病変部を一部採取して顕微鏡で詳しく調べる病理組織検査を行うこともあります。
治療
カサバッハ・メリット現象の治療法として確立したものはありません。症状などに応じて薬物療法や外科的治療が行われます。単一の治療法では十分な治療効果が期待できないことが多く、一般的には複数の治療を組み合わせて行います。
これまで存在していた血管腫が急激に硬くなって変色したり、全身に出血斑を認めたりする場合には直ちに入院し、治療を開始する必要があります。
薬物療法では、ステロイド薬やインターフェロン、抗血小板薬、出血傾向を改善するための抗線溶薬、腫瘍の治療に用いられる抗悪性腫瘍薬などの薬剤が用いられます。薬物療法によって改善が見込めない場合には、血管腫を外科的に切除したり、カテーテルを用いて病変部の血管を閉塞させる経動脈的塞栓術を行ったりすることもあります。
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