しゃい・どれーがーしょうこうぐん

シャイ・ドレーガー症候群

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

シャイ・ドレーガー症候群とは、立ちくらみや尿失禁といった自律神経障害を代表的な症状とする進行性の神経疾患です。病気が進行するとパーキンソン症状や小脳失調症状をみることになります。線条体黒質変性症やオリーブ橋小脳萎縮症といった病気と比べて、中枢神経における病変部位の変化や症状が共通することも知られています。そのため、シャイ・ドレーガー症候群は、これら病気とともに多系統萎縮症と総称されています。発症後は緩やかに進行しますが、病気の本態を根本的に治療する方法は確立されておらず、自律神経症状・パーキンソン症状などに対する対症療法が治療の中心になります。

原因

シャイ・ドレーガー症候群は中枢神経が変性することを原因として発症します。変性を受けるのは、脳幹や脊髄の自律神経に関与する部位、体幹のバランスやスムーズな運動動作に重要な小脳、橋核、オリーブ核、線条体、黒質と呼ばれる部位などが主体です。特に「オリゴデンドロサイト」と呼ばれるグリア細胞において変化が生じることが知られており、この中に「αシヌクレイン」から構成される物質が形成されます。こうした変化及び出現する症状は、線条体黒質変性症やオリーブ橋小脳萎縮症と呼ばれる病気と共通するため、シャイ・ドレーガー症候群を含めて、包括的に多系統萎縮症と呼びます。

基本的には家族歴などのない状況において発症します。しかし、ときに家族内で多発することも知られています。こうした家系を対象にした研究を通して、COQ2遺伝子の異常が病気の発症に関与していることが考えられています。COQ2遺伝子に異常が生じると、エネルギー産生に必須のコエンザイムQ2と呼ばれるタンパク質の構成に異常を呈することになります。現在(2018年現在)までのところ、シャイ・ドレーガー症候群の病態が完全に解明されているとはいえません。治療成績についてもまだまだ向上が必要な病気であり、今後の研究の発展が期待されています。

症状

シャイ・ドレーガー症候群では、まず自律神経症状が出現します。具体的には立ちくらみや尿失禁、インポテンツなどの症状です。自律神経障害が前面に出ますが、病気の進行と共にパーキンソン症状や小脳失調症状が現れるようになります。

パーキンソン症状

歩行が遅くなる、声が小さくなる、動きが鈍くなるなどが代表的な症状です。

小脳失調症状

歩行時のふらつきや発語の障害などが生じるようになります。認知機能に異常がみられることや、うつ症状を呈することもあります。

シャイ・ドレーガー症候群は、パーキンソン病よりも進行が早いという特徴があります。最終的には誤嚥(ごえん)肺炎を代表とする病気により、10年未満の経過で亡くなるケースも多いです。

検査・診断

シャイ・ドレーガー症候群の診断の際は、症状の確認や身体所見が重要です。また、頭部MRIも重要な検査であり、障害を受けている脳の部位(小脳や脳幹部位など)を特定します。脳の活動性や血流の評価を行うために、PETやSPECTといった検査も行われます。その他、自律神経系の異常を探索するために、膀胱機能検査、起立性低血圧の検査などを行います。パーキンソン病との鑑別が求められることも少なくなく、MIBG心筋シンチグラフィも検討されます。

治療

シャイ・ドレーガー症候群を根本的に治療する方法は、現在(2018年現在)までのところ確立されていません。そのため、対症療法が治療の中心になります。たとえば、起立性低血圧に対しては昇圧剤、パーキンソン症状に対してはパーキンソン病の治療薬を用いた治療が行われます。

シャイ・ドレーガー症候群では、歩行障害や嚥下機能の障害、発語障害などを経時的にみるようになります。そのため、リハビリテーションなど、障害の進行を抑制する試みが重要です。歩行がままならなくなった場合には車いすなどの装具の使用、嚥下機能が強く障害されてしまい誤嚥性肺炎を繰り返す場合には胃瘻(いろう)の増設などが検討されることになります。

シャイ・ドレーガー症候群の治療成績は、現状において満足いくものとはいえません。そのため原因の解明に加えて、より根本的な治療方法の開発が強く期待されています。

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