しゃーがすびょう

シャーガス病

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概要

シャーガス病とは、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)と呼ばれる原虫により引き起こされる感染症のことを指します。サシガメと呼ばれる昆虫に刺されることから、クルーズトリパノソーマに感染します。

初期には無症状であることも多いのですが、数年から数十年もの期間を経てから心臓や消化管を中心とした重篤な続発症を引き起こすこともあります。母子感染や輸血での感染例も報告されています。

シャーガス病は1909年に報告されていますが、報告者である「Carlos Chagas」の名前にちなんで病名が名付けられました。病原体の媒介者であるサシガメは、北米から南米にかけて広く生息しており、特に貧困地域においてシャーガス病は多く発生しています。非常に長い経過で進行することもあり、世界で600~1,100万名ほどの方がクルーズトリパノソーマに感染しているとの報告もあります。

原因

シャーガス病は、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)と呼ばれる原虫により引き起こされる感染症のことを指します。

クルーズトリパノソーマは「サシガメ」と呼ばれる昆虫に生息しており、この昆虫に噛まれることから人間へ感染が成立します。またサシガメに噛まれること以外に、昆虫の糞便で汚染された食べ物を摂取したり食器に触れたりすることなどからも感染は成立します。

またクルーズトリパノソーマは血液中を巡回することもあり、輸血や臓器移植、母子感染(経胎盤感染)なども感染経路として挙げることができます。 人間に感染した病原体は感染部位に存在するマクロファージと呼ばれる血球に取り込まれ、血液中に乗り全身を循環します。体内でも病原体は形態を替え、徐々に心筋や神経、筋肉などには入り込みシャーガス病の症状を引き起こすようになります。

症状

病原体に感染したとしても、急性期に明らかな症状を認めないことも多々あります。症状が出現する場合は、感染後1~2週間の潜伏期間の後に症状が出現し始めます。原虫が侵入部位は、「シャゴーマ」と呼ばれる、赤い発疹が出現します。

もし侵入門戸が眼球である場合には、結膜炎、眼瞼の腫れ、耳前リンパ節腫脹などが出現しますRomaña signと呼ばれます)。多くの急性期症状は2か月ほどで改善しますが、ときに心筋梗塞や図膜炎や脳炎等を発症して致死的になることもあります。特にエイズ患者では重症化する確率が高くなります。

その後さらに数年ないし数十年の経過の後、20~40%の方に慢性疾患が発症します。症状が出現する腫瘍臓器は心臓と消化管です。心臓では慢性心筋症からの心不全、完全房室ブロックや心室性不整脈などからの失神、最悪の場合には突然死が発症することもあります。

消化管に対する影響としてはアカラシアやヒルシュスプルング病に似た症状が出現します。具体的には嚥下困難とそれに関連した誤嚥性肺炎、長期間持続する重度の便秘および腸捻転などです。 妊婦がシャーガス病の影響を受けると、流産や死産が生じます。胎盤を介して赤ちゃんに対しても感染が成立することもあります。

検査・診断

検査の方法は、急性期と慢性期で異なります。急性期には、血液中に比較的大量のクルーズトリパノソーマが循環をしているため、血液を用いた顕微鏡検査にてクルーズトリパノソーマを同定することが可能です。

慢性期においては、血液からの検体では直接的に顕微鏡で病原体を確認することは難しいです。そのため、血液を用いてトリパノソーマに対する抗体検査が実施されます。

そのほかにもPCR法と呼ばれる方法を用いて、各種検体から病原体に特徴的な遺伝子を検出する方法があります。 特に慢性期のシャーガス病では心臓や消化管に影響が生じます。心臓では不整脈心筋症が出現することがあるため、心臓超音波検査や心電図検査が行われます。

消化管合併症(アカラシアやヒルシュスプルング病)に対しては、消化管造影検査や上下部内視鏡検査が施行されることもあります。

治療

シャーガス病の治療は、ベンズニダゾール(nifurtimox)やニフルチモックス(benznidazole)によって治療可能であり、特に急性期や先天性感染症の早期段階で投与することで高い治療効果が期待できます。

しかしながら、発症後時間が経つにつれて薬の効果は低下します。いずれの薬剤も1か月以上の長期間内服する必要がありますが、消化管障害や末梢神経障害の副作用が出現することが多く、内服継続が困難になることもまれではありません。

慢性期の治療については合併症の形態に応じて、適宜治療方法が選択されます。心筋症に対しては、心不全に対しての内服薬や場合により心臓移植が行われます。不整脈に対しては、抗不整脈薬やペースメーカーなどが使用されます。消化管症状に対しては、手術的な介入が行われることもあります。

輸血にともなって病原体が広がることもありえるため、日本においてもシャーガス病が発症する可能性はあります。事実、2013年8月には、中南米出身の献血者からの輸血製剤がシャーガス病の病原体に対して抗体検査が陽性であったと報告されています。幸い、同輸血検体からの感染拡大例はありませんでしたが、より安全に輸血が行うことができるように、2016年8月に日本赤十字社は献血に対していくつかの変更を行っています。具体的には、全輸血製剤に対してのシャーガス病抗体検査の実施、中南米出生者などに対しての献血制限です。

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