概要
セリアック病は自己免疫疾患の1つで、小麦などに含まれる“グルテン”と呼ばれる物質によって十二指腸や空腸(小腸の一部)に慢性的な炎症が起こり、腹痛や下痢などさまざまな症状が引き起こされます。
自己免疫疾患とは、従来異物などから自身の体を守るためにはたらく“免疫系”がうまく機能しなくなることによって自身の体を攻撃してしまう病気です。原因は不明ですが、主なものにバセドウ病、関節リウマチなどがあり、セリアック病もその1つです。
セリアック病は、子どもでは離乳期から2歳くらいまでの間に発見されることが一般的です。成人では、40歳くらいまでに診断されることが一般的ですが、時に高齢になってから見つかる方もいます。
セリアック病では、1型糖尿病や甲状腺疾患など何らかの自己免疫疾患や、小腸や食道、咽頭などの悪性腫瘍を合併する場合があります。
原因
セリアック病の発症には、遺伝的要因と環境的要因が影響していると考えられています。
遺伝的要因
遺伝的要因としては、HLA遺伝子のHLA-DQ2やHLA-DQ8などの変異が挙げられます。セリアック病の遺伝的要因のおよそ40%はHLA遺伝子の変異であると考えられていますが、近年はそれ以外の遺伝的要因も少しずつ分かってきています。
また、血のつながりのある両親など一親等の親族にセリアック病の患者がいる人では、有病率はおよそ10%といわれています。
環境的要因
環境的要因としては、小麦の摂取量が多い国でセリアック病の患者が多いことが知られています。日本でも、食の欧米化により小麦の摂取量が増えているため、今後セリアック病の有病率が高まる可能性があります。
症状
セリアック病では主に小腸の炎症が慢性的に起こることによって、消化器系の症状をはじめとするさまざまな症状が現れます。ただし、腸に炎症が生じていても自覚する症状はないことも場合があります。また、まれな疾患であることから、過敏性腸症候群(IBS)として診断されているケースもあります。
消化器系の症状
下痢や腹痛、食欲の低下、お腹の張り、嘔吐などを自覚することがあります。また、食欲不振や、食べても下したり戻したりしてしまうことなどにより、体重が減ってしまうこともあります。
そのほかの症状
そのほかの症状として、貧血や骨粗鬆症、疲れやすさ、関節痛、抑うつなど、さまざまな症状がみられます。
子どものうちに発症すると、食事から栄養がうまく吸収できないことなどにより、低身長などの成長障害が起こることもあります。成人の場合では不妊なども見受けられます。
検査・診断
セリアック病には統一された診断基準がありません。内視鏡検査、十二指腸の組織を採取して行う生検組織検査、血液検査、グルテン除去食による食事療法で症状が改善するかなどを総合的に判断して、セリアック病と診断されます。
見分ける必要がある病気として、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(IBD)、食物アレルギー、感染性腸炎などがあります。
内視鏡検査と生検組織検査
内視鏡(いわゆる胃カメラ)を挿入し、食道、胃、十二指腸を観察します。十二指腸では、粘膜の粗造*や、絨毛**の萎縮が観察されます。また、十二指腸の粘膜を採取し、顕微鏡で小腸粘膜組織の異常を調べる生検組織検査も併せて行われます。生検組織検査はセリアック病の診断において重要な検査の1つであり、病気のタイプを詳しく分類することにも役立ちます。
*粘膜の粗造:胃の粘膜にはアレアと呼ばれる一定の模様があり、炎症やなんらかの異常が起こっている場合にアレアが不規則となっている状態。
**絨毛:十二指腸を含む小腸の内面にあるひだや突起のこと。栄養素の吸収力を高める働きを持つ。
血液検査
セリアック病患者はグルテンを取ると体内に特定の抗体が生産されます。血液検査ではその抗体の有無を確認するため、抗グリアジン抗体(AGA)、抗組織トランスグルタミナーゼIgA抗体(tTG抗体)、抗筋内膜抗体(EMA抗体)などを調べます。
ただし、日本ではいずれの検査も保険診療では測定ができません。
グルテン除去の食事療法による診断
グルテン除去の食事療法を行うことで、セリアック病患者の9割で症状の改善が得られます。そのため、グルテン除去で症状がよくなるかを確認することは、セリアック病の診断方法の1つです。
治療
セリアック病の治療方法としては、グルテンを取らないようにする“グルテン除去食(Gluten Free Diet:GFD)”が挙げられます。そのほかの治療法も開発されていますが、臨床試験中のものも多く、普及している治療方法はまだありません。
グルテン除去食(GFD)
小麦やライ麦、大麦などの食品を取らないよう、厳密な管理が必要となります。通常、グルテン除去食を1〜2週間続けることで、多くのセリアック病の症状は改善あるいは消失します。
消化器系以外の症状に対する治療
セリアック病では、栄養障害や骨粗鬆症が起こりやすいことが分かっています。そのため状況に応じて、栄養を補う治療や骨粗鬆症に対する治療も組み合わせて行います。
グルテン除去食の摂取だけでは改善しない場合
ときにグルテン除去食の摂取だけでは症状がよくならない場合や再発する場合などがあります。セリアック病の一部のタイプでは、ステロイドなどの免疫抑制薬やチオプリン製剤、インフリキシマブなどの生物学的製剤による薬物療法も検討されることがあります。
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セリアック病について
私と母は度々、小麦粉の製品を食べるとさまざまな症状が出ていました。 先に気がついたのは母で、特に多いのは ・胃痛 ・吐き気 ・腹痛 ・便秘、下痢の繰り返し などです。 母は、病院でセリアック病だねと言われました。問診のみです。 同じ症状が私にもあると伝えると、遺伝するみたいだから、娘さんも可能性があるかもねと言われたそうです。 私は他の病院で、小麦粉の製品を食べるとこういう症状が出ると伝えましたが、特にこれと言った診断などはされていません。 セリアック病かどうか調べようと思うと、保険適用外なため高額な医療費がかかるとか…。 一時期吐き気などで全くご飯が食べられなくなったためネットで調べたところ、2週間小麦粉を断つことで自己診断ができると書いてあったので実践しました。すっかり調子が良くなりました。 2週間後に食べた時は、吐き気や震え、動悸などの症状で夜眠れず、とても辛い思いをしました…。 それからほとんどの小麦粉の製品を食べていません。 今はとても調子が良いです。 しょっちゅう起こしていた脂汗の出るようなひどい腹痛も、すっかりなくなりした。胃痛や吐き気もしばらく起こしていません。 小麦粉を絶った以外何もしていませんが、体重が1ヶ月で5kg(現在152cm54kg)減りました。 グルテン不耐性の可能性が高いと判断して良いのでしょうか? グルテン不耐性ならば、今後も小麦粉を食べないようにするしかありませんか? 小麦粉を食べないのは、結構辛いこともあります。
過敏性腸症候群の治療方法について
2018年初夏頃より症状が出始め現在まで続いております(偶然かと思いますが、禁煙してから発症)。症状は下腹部痛(お腹が詰まるような鈍痛)、腹部の不快感(しぶり腹/ガスによる張り)などですが、最近は空腹時に胸やけを感じることもあります。痛みは激痛ではありませんが、痛みが強い時には目の奥がジーンとしたり、涙が出たりもします。症状は睡眠中にはありませんが(感じませんが)、起床してから徐々に強くなり、何らかの症状が就寝まで1日続きます。食後は一旦は症状が強くなる感じがあります。飲酒時(2~3合程度週1回)には症状が軽快します。便秘気味ですが、便通は一日1回普通便であり、下痢はありません。発熱はなく、食欲も変わらず、体重の減少もありません。治療は2019年1月から大学病院の消化器内科で受けており、この間2019年1月に大腸内視鏡検査、同年8月に腹部CT検査、2020年2月に胃部内視鏡検査、血液検査や単純レントゲン撮影は複数回受けましたが、すべて問題ありませんでした。また、2019年7月には定期健診で腹部超音波検査を受けましたが、これも問題ありませんでした。 各種検査を通じて大学病院での診断は過敏性腸症候群ということで、1年半弱服薬治療を続けてきましたが、症状に大きな改善はなく、消化器内科的治療には限界があるので、診療内科での受診を薦められております。 検査はすべて問題ないということですが、症状に改善が見られず、精神的にもやや追い込まれている感じで、本当に過敏性腸症候群なのかという不安感も強いです。ご説明が長くなりましたが、このような状況の中で診療内科に頼っても大丈夫でしょうか?また、大学病院の消化器内科での治療は、主治医の先生の転勤に伴い終わっておりますが(これまでと同じ治療方法しかないとのことで)、近くの消化器内科のクリニックで診療内科受診と並行して受診した方が良いでしょうか? 因みに、診療内科への紹介状と検査結果データは大学病院より頂いております。
下痢、軟便が続く時々ムカつき
下痢軟便が1ヶ月近く続いて時々胃がムカつきます この時期なのでコロナが心配です
便に油が浮く
少し前から便に油が膜のようになって浮くことが多々あります。 毎回ではありませんが、5回に3回はそういうことがあります。 食事はこの症状が気になる前と変わっていません。朝食はきちんと食べる方ではありませんが、昼食と夕食は食べています。魚よりは肉類が多いですが、それは症状が気になら始めるよりもずっと前からです。野菜は1日に摂取すべき量よりは少ないと思いますが、ちゃんと食べています。 腹痛や嘔吐などはありません。 ただ、上記の症状が気になり始めたと同時に、胃が疲れやすくなったとも感じています。 一年前くらいまではなんともなかった食事量や内容でも胃もたれがして気持ち悪くなったりします。 ストレスを強く感じているときに、2日間食事量が少し増えただけで、下痢と嘔吐をし、二日間くらい下痢が続いてヨーグルトやゼリーしか食べられなかった時もありました。 現在は新しいバイトを始めたりしましたが、それほどストレスとは感じていません。 また、ここ1週間ほどは魚と肉はどっちが多いということもなく、野菜も毎食ちゃんと前よりも多く摂取していました。 食事が関係していたのかと思っていましたが、バランスの良い食事や生活リズムが整った生活を1週間していたのに、今日も便に油が浮いていました。 便に油が浮く理由、胃が疲れやすくなった理由、それらの改善策を教えていただきたいです。
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セリアック病を得意な領域としている医師