脳

ナルコレプシー(なるこれぷしー)

ナルコレプシーとは

ナルコレプシーは、過眠症のひとつです。通常ならば寝てはいけない重要な場面でも我慢できないほどの強い眠気に襲われてしまう、突然眠ってしまうといった特徴がみられます。日本では、600人に1人がナルコレプシーであるといわれています。発達に伴い発症し、日本では13~14歳が発症のピークであると報告されています。しかし、「なんとなくだらしない」「意欲が足りない」「真面目にやっていない」から、大事な場面でも眠ってしまうのだと思われてしまい、本人や周囲が病気と認識しない場合も多く見受けられます。治療が遅れると社会生活に支障をきたすことも多いため、早期に診断し治療を開始することが重要と考えられます。
 

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原因

脳の覚醒中枢のはたらきが悪くなっているために、起き続けられずに眠り込んでしまうと考えられています。オレキシンを産生する神経細胞の障害がその一因であることが報告されていますが、そのメカニズムについては現在も研究がすすめられています。また、白血球の血液型であるHLA型と発症の関連性も指摘されています。ナルコレプシー患者さんの場合、HLA-DQB1*06:02という遺伝子型をもつ方が有意に多いことがわかっており、発症リスクに関係していると考えられています。
 

症状

ナルコレプシーの症状としては、居眠りの反復、情動脱力発作、睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚などが挙げられます。ナルコレプシーの場合、夜間の睡眠の質や量にかかわらず、眠気に抵抗できずに居眠りを繰り返すという特徴があります。重症の場合には、「睡眠発作」と呼ばれる「眠い」と思う前に眠ってしまい「気がついたら寝ていた」という症状が認められることもあります。居眠りをした場合でも、眠りの持続が10~30分と短いことが多く、目覚めがよいという傾向もみられます。情動脱力発作は、気持ちが高ぶったり、びっくりしたりする瞬間に、体の一部が脱力してしまう症状です。睡眠中ではなく、覚醒中に起きることが特徴です。この他、眠りについた直後に睡眠麻痺(金縛り)や入眠時幻覚といった症状が認められることがあります。また、うつ病やうつ状態といった気分障害、不安障害、肥満といった合併症も報告されています。
 

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検査

ナルコレプシーかどうかを診断するための検査には、睡眠ポリグラフ(Polysomnography; PSG)検査、HLA遺伝子型検査、脳脊髄液検査があります。

睡眠ポリグラフ検査は、脳波、筋電図、心電図、眼電図、呼吸センサー、酸素飽和度、胸・腹部の動きなどを同時に記録し、睡眠の質や量を評価する検査です。一般的には、ひと晩かけて検査が実施され、さまざまな夜の睡眠障害がないかどうかを確認します。私たちの眠りは「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」によって構成されています。通常、入眠から覚醒までの間にノンレム睡眠とレム睡眠を4~6回程度繰り返し、明け方の目覚めに向かってレム睡眠が増える傾向にあります。ナルコレプシーの場合、眠りについた直後(15分以内)にレム睡眠が認められることが特徴といわれています。レム睡眠は、筋肉が弛緩して体は動かないものの、脳活動が活発な状態で、夢を見ることもあります。ナルコレプシーの症状である睡眠麻痺(金縛り)と入眠時幻覚は、入眠直後にあらわれるレム睡眠によるものといえます。また、終夜のポリグラフ検査に引き続き、昼間の眠気の重症度を調べる反復睡眠潜時検査(Multiple Sleep Latency Test; MSLT)が実施される場合もあります。

ナルコレプシーの90%以上の方が、白血球の血液型であるHLAが特定の型をもつことが知られています。日本のナルコレプシー患者さんの場合、HLA- DQB1*06:02という遺伝子型の組み合わせを持っていることが特徴ですが、一般健常者においても12~38%が同様の遺伝子型を持つために診断基準には組み込まれていません。

脳脊髄液検査では、オレキシン (視床下部から出る覚醒性の神経伝達物質)の濃度を測定します。ナルコレプシーの場合、特に典型的な情動脱力発作をもつ患者さんにおいては、約9割で脳脊髄液中のオレキシン濃度が異常低値を示すことが報告されています。

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治療

多くの場合薬物療法が有効ですが、まずは生活サイクルを規則的に整えることが非常に重要です。病気の特徴にあわせた計画的な休憩・仮眠と夜間睡眠の確保を行うことができれば、薬の服用を減らす、薬の効果を最大限に保つなど、治療に役立ちます。過眠症状に対しては、メチルフェニデート、ぺモリン、モダフィニールといった中枢神経刺激薬といわれる目を醒ます薬を用います。情動脱力発作や睡眠麻痺、入眠時幻覚に対しては、クロミプラミン、イミプラミンなどのレム睡眠抑制作用のある薬が用いられます。
 

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