大腸・小腸

ノロウイルス性胃腸炎(のろういるすせいいちょうえん)

ノロウイルス性胃腸炎とは

ノロウイルスとは、嘔気・嘔吐と下痢を主症状とする急性胃腸炎の原因ウイルスの一つです。ノロウイルスによる急性胃腸炎は年間を通してみられますが、特に10月から4月頃までの秋口から春までに流行する傾向があります。また、成人はもちろんのこと、乳幼児にも流行することがあり、全年齢層において胃腸炎を引き起こす主要原因ウイルスに挙げられます。特に体力の低下した方や、基礎疾患を持つ方、小児においては重症化しやすいです。また、ノロウイルスは感染性胃腸炎の原因ウイルスとしてだけではなく、食中毒の原因としても重要なウイルスです。感染力は非常に強く、病院や老人ホーム、保育所等での集団発生例をみることもまれではありません。

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原因

ノロウイルスは、極少量のウイルスを摂取することで感染が成立します。その感染経路から、1) ヒトーヒト感染(いわゆる胃腸風邪)と2) 食品を介した食中毒、の二つに分類することができます。

1) ヒトーヒト感染

環境中や糞便、嘔吐物などに存在するウイルスを、口を通して摂取することで感染が拡大します。老人ホームや病院、保育所等においては、一人がノロウイルスによる急性胃腸炎を発症すると、その嘔吐物や排泄物を処理する過程で感染が拡大することがあります。また、環境中に存在するウイルスは、しばらくの間生存することが知られています。環境がウイルスで汚染をされていると、ホコリ等と共に空気中にウイルスが漂い、そのウイルスを口から接触することでも感染が広がります。

2) 食品を介した食中毒

ノロウイルスに汚染された食事を摂取することでも、急性胃腸炎が引き起こされることがあります。食物を扱う仕事に従事する人がノロウイルスを持っていると、食事にノロウイルスが付着します。その食物を摂取することで感染が拡大することがあり、食中毒の集団発生につながります。また、カキの中にはノロウイルスが存在することもあり、カキの生食は特に食中毒の原因になりやすいです。ノロウイルスによる食中毒は、ここ最近、年間1万件以上の発生数が報告されています。

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症状

ノロウイルスによる急性胃腸炎に伴う症状は、嘔気・嘔吐、下痢、腹痛を挙げることができます。ウイルスが体に取り込まれてから半日から2日の潜伏期間を経て、嘔吐が始まります。その後、水様性下痢が出現し、2日ほどの経過で回復に向かいます。同じく感染性胃腸炎の代表的原因ウイルスであるロタウイルスと比較すると、吐き気の症状が強いことが多いです。しかしその一方で、ロタウイルスの場合は下痢症状が1〜2週間と、長い間持続することもありますが、ノロウイルスの場合は数日で治まることが多く、比較的短期間で症状が改善することも特徴です。感染予防上注意すべき点は、胃腸炎の症状が消失したのちも、排便中には2〜3週間程度ウイルスが排泄されているということです。そのため、症状が消失した以降もしばらくの間は、周囲への感染拡大を予防するためにも、排泄物の処理に注意を払うことが必要です。

小児や老人においては、脱水症状が強くなることもあります。脱水を見極める症状としては、おしっこの回数やオムツを替える回数が減った、口の周りが乾燥している、口の中が乾いている、ふらつく、意識がトロンとしていておもちゃで遊ばない、などを挙げることができます。

またノロウイルスによる急性胃腸炎では、けいれんや腸重積、脳症等の合併症を来すこともあります。けいれんについては小児において認めることが多く、けいれんを発症する危険性は必ずしも胃腸炎の重症度とは比例しません。軽度の胃腸炎症状の場合にもけいれんを伴うこともあるため、注意が必要です。

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検査・診断

ノロウイルスの急性胃腸炎の診断は、臨床経過や身体診察からされることが多いです。ノロウイルスは冬季に流行することが多いです。老人ホームや学校、病院等で集団感染を起こすこともあります。時期的なものを加味しながら、周囲の流行状況を判断することが、ノロウイルスを疑うに際して重要な視点です。

また、ノロウイルスの診断に際しては、便を用いた検査方法があります。検査方法には、遺伝子診断法(リアルタイムPCR法、LAMP法など)とイムノクロマトグラフ法が利用可能です。後者は、15分程度で検査結果が判明する迅速な検査であり、外来で活用されることもあります。ノロウイルス胃腸炎は、本人の自覚症状がなくなってからも数週間は、便中にウイルスが排泄されることが知られています。そのため、食物に関連した仕事に従事する方においては、感染拡大を防止するためにも、こうした検査を組み合わせて確実にウイルスが排泄されていないことを確認することが大切です。

また、胃腸炎症状が強い場合には、脱水の評価も必要になります。脱水が進行すると、腎機能障害、電解質異常やアシドーシスを認めるようになります。輸液の適応を含めた治療介入方法を決定するためにも、血液検査や尿検査が行われることもあります。さらにけいれんや脳症の発生が疑われる場合には、脳MRIなどの画像検査、脳波、髄液検査等の、より中枢神経系に特化した検査が追加されることもあります。

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治療

ノロウイルス胃腸炎の治療では、脱水をいかに避けるかが重要です。ご家庭でできる最も重要なことは、水分を「少しずつ何度も飲むこと」です。このとき飲むものは、患者さんが「飲めるもの」であれば、ポカリスエットやアクエリアスなど市販のスポーツドリンクでもフルーツジュースでも、何でも構いません。理論上望ましいとされる経口補水液(市販のOS-1など)が苦手であれば、無理に飲む必要はありません。また、脂っこいものや母乳・ミルク等は、下痢症状を増悪させることもありますので注意が必要です。特にノロウイルスに感染すると、「乳糖不耐症」と呼ばれる症状が出現することがあります。これは、母乳やミルクをうまく消化できなくなり、下痢が生じることを指します。ノロウイルス胃腸炎に伴う一過性の反応であることが多く、一時的に母乳・ミルクを中止したり、より消化しやすい粉ミルクを使用したり、消化を助ける内服薬を併用することもあります。

ノロウイルスは、食中毒としての側面もあります。食事を扱う職に従事している場合には、職場復帰に関して会社毎の規則が存在することもあります。事業者と相談の上、職場に戻るタイミングを決定しましょう。

また、ノロウイルスは感染力が強いことに加えて、アルコール消毒では完全にウイルスを排除することはできません。環境中のウイルスを完全に排除するためには、塩素系消毒液の使用が必要になります。

より詳しい情報は、記事①記事②記事③をご参照ください

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