ぱーきんそんしょうこうぐん

パーキンソン症候群

最終更新日:
2021年05月28日
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2021/05/28
更新しました
2018/08/24
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概要

パーキンソン症候群とは、振戦、筋強剛(きんきょうごう)、動作緩慢、姿勢反射障害といった運動症状の総称です。パーキンソン病と似たような症状が現れる病気のことをパーキンソン症候群と呼びますが、パーキンソン病とパーキンソン症候群では原因も症状の進み方もそれぞれ異なります。診断が異なると十分な治療効果が得られないため、専門家による正しい診断を受けることが大切です。

パーキンソン症候群には、パーキンソン病以外にも、薬剤性パーキンソニズム、脳血管性パーキンソニズム、特発性正常圧水頭症慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)、神経変性疾患などの病気が含まれます。

なお、パーキンソン症候群の患者さんの特徴はそれぞれの病気によって異なりますが、いずれも高齢の方に多くみられる病気です。

原因

パーキンソン症候群は、症状の原因となっている病気によって原因が異なります。パーキンソン病様症状を起こしうる病気には、脳血管性疾患(脳梗塞(のうこうそく)など)、頭部外傷慢性硬膜下血腫)、特発性正常圧水頭症、神経変性疾患(多系統萎縮症進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症など)などがあります。

似たような症状を示すパーキンソン病は脳のドパミン神経細胞が減少し、筋肉の運動を調節するドパミンが少なくなることが原因ですが、パーキンソン症候群とされる病気にはこのような特徴は認められません。そのため、パーキンソン病では不足しているドパミンの補充で症状の改善がみられますが、パーキンソン症候群では十分な効果が期待できません。

また、向精神薬や胃腸薬の一部には体内のドパミンに影響を及ぼすものがあり、このような薬剤の副作用としてパーキンソン病様症状を引き起こすことがあります。

症状

パーキンソン症候群の基本的な症状はパーキンソン病の症状に似ており、振戦(ふるえ)、動作緩慢、手足のこわばり、小刻み歩行、姿勢反射障害などが認められます。

パーキンソン症候群とされる病気によっては、以下のような特徴が見られることもあります。

薬剤性パーキンソニズム

一部の向精神薬や胃腸薬などの副作用として現れる症状です。体内のドパミンが減少することで起こるパーキンソン病と同様に、薬の副作用で体内のドパミンが少なくなったり、ドパミンの作用が弱まったりすることで起こります。動作が遅くなる、小刻み歩行になる、手がふるえるなど、パーキンソン病とよく似た症状が現れます。通常のパーキンソン病に比べて進行が速い、突進現象が少ない、左右差が少ない、姿勢時・動作時振戦が出現しやすいなどの特徴が現れることがありますが、絶対的な指標ではありません。

脳血管性パーキンソニズム

脳梗塞などの脳血管性疾患によって引き起こされるパーキンソン病様症状です。脳MRIなどの画像検査により、パーキンソン病には認められない脳血管性疾患が認められるほか、症状に左右差がない、開脚ですり足歩行の特徴が見られるなど、パーキンソン病とは症状の出方が異なります。

特発性正常圧水頭症

頭の中や脊髄(せきずい)の表面にある髄液という水が脳室と呼ばれる部位にたまり、周りの脳を圧迫してしまう病気です。すり足で小刻みに歩くパーキンソン病と似たような症状を示しますが、パーキンソン病で見られる手のふるえは現れません。

慢性硬膜下血腫

頭部に外傷を負って1~2か月経った頃に頭蓋骨の下の硬膜と脳との間に血(血腫)がたまり、血腫が脳を圧迫することでさまざまな症状が現れる病気です。頭痛、歩行障害、認知症などが現れます。

パーキンソン病以外の神経変性疾患

多系統萎縮症進行性核上性麻痺大脳皮質基底核変性症など、脳や脊髄などの神経変性疾患には、動作が遅くなる、手足がこわばる、転びやすくなるなどのパーキンソン病に似た症状を示すものがあります。

検査・診断

パーキンソン症候群が疑われる場合、パーキンソン病との鑑別および原因疾患の特定が必要になります。パーキンソン病に特徴的な安静時振戦、筋強剛、動作緩慢、姿勢反射障害が見られる場合、頭部のCTやMRIを撮像して脳に異常がないかを調べます。脳血管性疾患や神経変性疾患が原因となっている場合、これらの検査で異常が認められることがあります。

ドパミントランスポーターシンチグラフィやMIBG心筋シンチグラフィ(効能外使用)などの核医学検査も補助診断として有用です。

また、パーキンソン病の治療法であるドパミン補充療法を行って、症状が改善するか否かを確かめることも有効です。薬剤性パーキンソニズムが疑われる場合は、使用している薬剤を中止したり変更したりして症状が改善するかを調べることがあります。

治療

パーキンソン症候群の治療は原因となっている病気によって異なります。

薬剤性パーキンソニズムの治療

ほとんどの場合、原因薬を中止すると数か月~半年程度で症状が改善します。薬剤を中止する場合は必ず医師の指示に従い、自己判断で突然薬をやめたり減らしたりすることのないようにします。

脳血管性パーキンソニズムの治療

脳血管性疾患の原因となる高血圧糖尿病脂質異常症喫煙、肥満などのリスク要因を取り除くことが必要です。脳梗塞の所見が認められる場合、血栓を溶かす薬剤を投与することもあります。アマンタジンなどの抗パーキンソン病薬が使用されることがありますが、一般的に抗パーキンソン病薬への反応が乏しいです。

特発性正常圧水頭症の治療

基本的には手術が行われます。脳室腹腔シャント術、脳室心房シャント術、腰部くも膜下腔腹腔シャント術と呼ばれる方法があります。

慢性硬膜下血腫

基本的には手術が行われます。頭部に何か所か穴をあけて血腫を取り除く治療が一般的です。血腫が小さい場合は、利尿剤の点滴による薬物療法を行うこともあります。

パーキンソン病以外の神経変性疾患(多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症)

根本治療が見つかっておらず、リハビリテーションによって運動機能を向上させたり、薬物による対症療法を行ったりすることが一般的です。パーキンソン病様症状に対しては、抗パーキンソン病薬が有効なこともあります。

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パーキンソン症候群を得意な領域としている医師

  • 愛媛大学医学部附属病院 診療科長/愛媛大学大学院医学系研究科 脳神経内科・老年医学講座 教授(難病・高齢医療学講座)

    • パーキンソン病
    • 認知症
    • 多発性硬化症
    • アルツハイマー型認知症
    • 視神経脊髄炎
    • 重症筋無力症
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