概要
ヘモクロマトーシスとは、体内に鉄が過剰に溜まる病気です。鉄が溜まることにより、さまざまな臓器障害を伴います。たとえば肝腫大、皮膚色素沈着、心筋障害、甲状腺機能低下症、性腺機能低下症、下垂体機能低下症、関節症などが起こります。
ヘモクロマトーシスは、原因によって原発性と続発性の2つに分類されます。
原発性
体の中で鉄を取り込んだり、運んだりするタンパク質の異常が原因です。両親から遺伝することから遺伝性ヘモクロマトーシスと呼ばれます。
両親のいずれかがこの病気である場合、遺伝子検査によってこの病気を有しているかどうか調べます。日本では、遺伝性ヘモクロマトーシスは非常にまれです。
続発性
頻回な輸血などで、体の中に余分に鉄が運び込まれた結果、鉄が過剰になります。鉄を取り込んだり、運んだりするタンパクには異常が認められません。
大量輸血、アルコール多飲や鉄剤・食事による鉄の過剰摂取などが主な原因です。日本では、サラセミアや骨髄異形成症候群、再生不良性貧血など貧血が継続し、長期間輸血が必要になった場合に合併する輸血後鉄過剰症がほとんどです。
原因
原発性
原発性の場合、鉄を取り込んだり運んだりするタンパク質(HFE)の遺伝子異常が原因です。鉄をうまく排出することができなくなり、体内に鉄が過剰に蓄積します。
常染色体劣性遺伝であり、両親のいずれかが病気を発症している場合に遺伝する可能性があります。自然発生することはほとんどありません。
続発性
続発性の場合、原発性以外の何らかの要因で、摂取される鉄が異常に増加することから、体内に鉄が過剰に蓄積することが原因です。
日本人の場合は、大量もしくは長期間に輸血を行った場合、同時に鉄が体に蓄積することが多いです。
症状
過剰な鉄は、さまざまな臓器に沈着します。その結果心機能や肝機能の低下、膵臓に沈着することで糖尿病、脳下垂体や甲状腺ホルモン分泌の低下、皮膚への色素沈着が起こります。
自覚症状としては、少し走っただけで息切れしやすい、動悸がする、疲れやすい、のどが渇く、皮膚が黒くなる、などがあります。
鉄が蓄積しはじめてから症状が出るまでに10〜20年ほどかかるため、40〜60歳くらいで発症することが多いです。
検査・診断
血液検査
鉄や貯蔵されている鉄の量を反映するフェリチンなどを測定します。鉄を運ぶ役割があるトランスフェリンなども測定します。
超音波検査
脾臓や肝臓が腫大していないか調べたり、心機能を評価したりします。比較的身体にかかる負担が軽い検査です。
遺伝子検査
原発性ヘモクロマトーシスが疑われる場合に行われます。HFE遺伝子等の異常があるか調べます。
HFE遺伝子異常以外の遺伝子異常があると重症度が変わります。そのため、どのような遺伝子異常があるかによって治療の選択が変わります。
治療
体内に過剰に蓄積した鉄を体外に排出します。治療には、排出量を増やす方法と摂取量を抑える方法があり、通院治療が可能です。具体的には以下の方法があげられます。
瀉血療法
献血と同じ要領で腕に針を刺し、1回で約200~400mLの血液を抜きます。血液検査で鉄やフェリチンの値を確認しながら、週に1~2回、外来に通院して治療を行います。
鉄キレート療法
飲み薬で、鉄が身体の外に排出されるのを助ける作用があります。頻回な輸血により体内に鉄が過剰に蓄積されるのを防ぎます。
副作用として、吐き気や下痢、嘔吐、腹痛などの胃腸症状が出ることがあります。
原発性の場合は瀉血療法による治療が可能です。ただし、サラセミアや骨髄異形成症候群など貧血に対して頻回に輸血を行っている場合には、貧血が悪化するため、この治療を行うことはできません。そのため、この場合には鉄キレート療法によって治療を行います。
合併症への対処法
心機能低下が起きた場合は、利尿薬など心臓への負担を減らす薬を内服します。また、鎮痛剤やかゆみ止めなどそれぞれの患者さんの症状に合わせた治療を行います。
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