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Nerve
ボツリヌス症
ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が産生した毒素によって引き起こされる病気です。ボツリヌス毒素は神経麻痺(まひ)を引き起こします。そのため、発症すると体のさまざまな部位に麻痺症状が現れます。 ...
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神経

ボツリヌス症ぼつりぬすしょう

更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
更新履歴
2017 年 04 月 25 日
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概要

ボツリヌス症とは、ボツリヌス菌が産生した毒素によって引き起こされる病気です。ボツリヌス毒素は神経麻痺(まひ)を引き起こします。そのため、発症すると体のさまざまな部位に麻痺症状が現れます。

ボツリヌス菌は、酸素があると増えることのできない偏性嫌気性菌の仲間です。ボツリヌス菌は芽胞(がほう)という「固い殻に閉じこもった種子のようなかたち」で存在しますが、熱、乾燥、消毒薬等に強い状態となり、厳しい環境でも長く生き延びます。ボツリヌス菌芽胞は土壌、湖沼などに広く分布し、それに触れる果物、野菜、肉、魚などが汚染される可能性があります。

日本におけるボツリヌス症では、食中毒として発症するタイプ、乳児がハチミツなどを食べることで発症するタイプが代表的です。ボツリヌス症は全件数把握対象の4類感染症に指定されており、これによると発生件数がない年もあれば、5件ほどの発生数をみる年もあります(2017年確認)。

ボツリヌス症を発症すると、呼吸を司る筋肉が麻痺を起こし呼吸障害から亡くなることもあります。これは乳児においても例外ではありません。そのため、ボツリヌス症の予防のために、乳児にはハチミツを与えないよう注意喚起されています。

原因

ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が産生する毒素を原因として発症する病気です。ボツリヌス症は、毒素が人の体内に取り込まれる過程・状況に応じて1) ボツリヌス食中毒(食餌性ボツリヌス)、2) 乳児ボツリヌス症、3) 成人腸管定着ボツリヌス症、4) 創傷ボツリヌス症、5) その他(上記4型にあてはまらない、医療行為や生物兵器による病態)、に分類されています。日本では、ボツリヌス食中毒と乳児ボツリヌス症が多いです。

1) ボツリヌス食中毒

その名称からも示唆される通り、食中毒に関連して発症するボツリヌス症です。

土の洗浄が十分でない野菜を使用したカレーライスなど、食品がボツリヌス菌やその芽胞に汚染されることがあります。ボツリヌス菌は「芽胞」と呼ばれる形態において熱にとても強いため、これら食品を加熱処理してもボツリヌス菌は死んでも「芽胞」が残存することがあります。

また、真空パック詰めの食品や缶詰などが芽胞で汚染されている場合に、酸素の少ない状態の食品内で芽胞が発芽し、ボツリヌス菌として増殖して毒素が産生されることもあります。これら食品中においてボツリヌス菌が産生した毒素を人が摂取することで毒素が腸管で吸収され食中毒が発生します。

2) 乳児ボツリヌス症

ボツリヌス菌やその芽胞を1歳未満のお子さんが摂取すると、消化管内で菌が定着したり芽胞が発芽・菌が成長し毒素を産生したりすることから、ボツリヌス症を発症します。乳児の腸内細菌叢は、成人の細菌叢とは異なり、ボツリヌス菌の定着や芽胞の発芽を抑制できないためと考えられています。

特に、菌や芽胞に汚染されたハチミツを原因として発症する例が多く報告されています。花粉に付着している芽胞をミツバチが運ぶためハチミツへの汚染が起こりやすいようです。乳児ボツリヌス症では死亡に至ることもあるため、乳児にはハチミツを取らせないよう注意が必要です。

3) 成人腸管定着ボツリヌス症

乳児でなくとも抗生物質の長期使用や消化管疾患に関連して、消化管内の環境がボツリヌス菌に適した状況になることがあります。こうした正常な腸内細菌叢が変化した状況では、ボツリヌス菌に汚染された食品を摂取した1歳以上のヒトの腸管においても数か月間菌が定着して毒素を産生し、乳児ボツリヌス症と類似の症状が長期にわたって持続することも起こりえます。

4) 創傷ボツリヌス症

創傷部位がボツリヌス菌や芽胞で汚染されてしまい局所にて毒素が産生されることがあります。この場合を、創傷ボツリヌス症と呼びます。

症状

ボツリヌス毒素は、神経を好んで障害する性質があります。筋肉を動かすためには、「アセチルコリン」と呼ばれる伝達物質が重要ですが、ボツリヌス毒素はこれらのはたらきを阻害することから、筋肉が思い通りに動かず、麻痺症状が現れることになります。

ボツリヌス食中毒では下痢から始まることがありますが、最終的には消化管の動きが鈍くなるため便秘になります。乳児ボツリヌス症でも同様であり、便秘を初発症状としてみることが多いです。

症状は、消化管の筋肉以外にも全身の多くの組織にみられます。具体的には、まぶたが落ちる(眼瞼下垂)、ものが二重に見える(複視)、飲み込みや発語が悪くなるなどの症状をみます。また、上肢や下肢の麻痺をみることもあります。乳児においては、全身の筋肉が衰えるため、手足の活発な動きがなくなります。

横隔膜を始めとした呼吸筋にも麻痺をきたすことがあり、呼吸機能障害を呈し、ときに生死を決定する因子となります。

検査・診断

ボツリヌス症の原因となるような状況がないか確認します。たとえば、ボツリヌス食中毒の原因となりそうな食物の摂取歴、抗生物質の長期使用歴や消化管の既往歴、乳児にハチミツを食べさせたかどうか、などについて確認します。創傷ボツリヌス症は麻薬中毒者にみることが多いことから、麻薬の使用歴も確認します。

また、菌や毒素の存在を血液、便、吐物、腸内容物、創部の浸出物などを用いて確認することも重要です。また、PCRにより毒素遺伝子の検出も行われます。

治療

ボツリヌス症の治療では、ボツリヌス毒素を中和することを目的とした抗血清療法が行われます。また、人工呼吸を含めた呼吸管理を行うことも必須です。ボツリヌス症の経過中に呼吸障害を来すと、呼吸不全から亡くなることがあるためです。

ボツリヌス食中毒を防ぐには、加熱処理後に早期に食事摂取することが重要です。また、ボツリヌス菌にて汚染されている可能性がある缶詰や真空パック製品は、指定された保存方法を徹底することも大切です。

乳児ボツリヌス症の予防には、乳児にハチミツを摂取させないようにすることが大切です。自家製野菜スープ、コーンシロップ、缶詰などが原因とされた事例もあります。また、同じ年代のお子さんがいる場合には、乳児ボツリヌス症を発症したお子さんのオムツの取り扱いにも注意が必要です。患者さんの便に芽胞が含まれている可能性があるのでオムツ交換をした後には、手洗いを徹底することも大切です。