概要
マントル細胞リンパ腫は、細菌やウイルスなどに対処する血液細胞である白血球の一種“Bリンパ球”の一部が異常増殖したもので、悪性腫瘍(がん)です。悪性のリンパ腫はホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫に分類され、マントル細胞リンパ腫は非ホジキンリンパ腫に属する中悪性度B細胞性リンパ腫に当たります。
悪性リンパ腫は、分化過程の一部の段階にあるリンパ球が何らかの理由で異常に増殖することで生じ、マントル細胞リンパ腫では、リンパ組織内にある濾胞を囲む場所に位置するBリンパ球が由来となります。発症年齢中央値は65歳程度で、男性の発症が多いです。
原因
マントル細胞リンパ腫の明確な原因は不明ですが、染色体の異常により細胞分裂周期に関わる特定の遺伝子が過剰に発現することが原因の1つと考えられています。この異常が特定のリンパ球の分裂に有利にはたらくことで通常の秩序を外れて腫瘍性に増殖します。
症状
マントル細胞リンパ腫は、ほかの悪性リンパ腫と同様にいずれかのリンパ節の腫大をきっかけとして診断される場合が多いです。悪性リンパ腫に特徴的ないわゆるB症状(発熱、寝汗、体重減少)を診断時に生じている例は多くありません。
診断時には比較的ステージが進行した状態で発見される場合が多く、リンパ組織以外に病気が広がっている可能性が高いです。病気の広がる先は骨髄や末梢血、消化管などで、腸管内にポリープができていることもあります。消化管に浸潤したリンパ腫細胞の影響で腹痛、吐き気・嘔吐、体重減少、消化管出血、腸閉塞なども起こり得ます。
検査・診断
そのほかのリンパ腫と同様、腫大しているリンパ節が体表面にある場合は小規模な手術で、肺門部(胸の中心)に位置しているような場合は通常の手術でリンパ節を切除し、それを顕微鏡での形態的な観察、細胞表面分子による分類などを行って診断します。
また、上で述べたように染色体異常と特定の遺伝子の過剰発現も病気に特徴的なため、生検した細胞の遺伝子検査や免疫染色などを行うこともあります。
悪性リンパ腫のリンパ組織以外への広がりを確認するために骨髄穿刺・生検が必要となる場合もあります。
治療
マントル細胞リンパ腫の確立した治療は現段階ではありません(2020年11月時点)。基本的にはリツキシマブという分子標的薬を中心に、そのほかの化学療法を組み合わせます。
若く健康な方の場合は、強力で副作用も強い化学療法を行う場合や、化学療法の後に、自己末梢血幹細胞移植という強力な治療を併用する場合があります。より高齢の方や元の健康状態に問題がある方では、これらの治療法はむしろ寿命を縮めかねないため、やや弱く副作用も少ない治療を行います。
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