概要
マールブルグ病とは、マールブルグウイルスに感染することによって発症するウイルス性出血熱です。原因となるマールブルグウイルスはオオコウモリを介してヒトへと感染します。また、人間と人間との間でも感染が伝播します。
マールブルグ病の過去の感染発生時の致死率は24%〜88%と、ウイルスの株などによって異なりますが、非常に高くなることもあります。ヒトへの感染は、1967年に、ドイツとユーゴスラビアで実験用に使用されていたウガンダから輸入された猿と関連して、初めて報告されました。以後も何度かアウトブレイクを起こしており、2017年には東アフリカのウガンダ東部(ウガンダとケニアの国境地帯)での流行が報告されています。
ヒトへの感染率、致死率が高いマールブルグ病は、日本において第1類感染症に指定されています。これまでのところ(2017年現在)日本における報告例はありません。しかし、国際化が進むなかで、ウイルスが国内に入る可能性がないとはいえません。有効な治療薬やワクチンなどが存在しないこともあり、注意が必要です。
ヒトへの感染拡大様式が確実に解明されているとはいえませんが、不用意にコウモリには近づかない、流行地域には近づかない、などの対策が考えられます。
原因
マールブルグ病は、マールブルグウイルスに感染することから発症します。マールブルグウイルスは、アフリカを中心に流行を示すことがあるエボラ出血熱の原因ウイルスと同じフィロウイルス科に属しています。初めてマールブルグ病が報告されたのは、実験用のアフリカミドリザルに接触したことにより発症した例です。その後も「エジプトルーセットオオコウモリ(フルーツコウモリ)」との接触による例が報告されています。
マールブルグウイルスは、ヒトの間で感染が広がることもあり、感染者の血液などに接触することで他者に伝播します。寝具や飛物を処理したタオルにもウイルスが潜んでおり、これらも感染源となりえます。アフリカの一部地域では、死者の土葬の際に死体に敬意を払うために触れることがあります。こうした土葬習慣も、マールブルグウイルスへの感染リスクを高めます。
症状
マールブルグウイルスに感染すると、3〜10日の潜伏期間の後に症状が現れます。症状の現れ方は突然であり、高熱、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛を呈するようになります。引き続き、消化器症状として水様性下痢、腹痛、吐き気・嘔吐が現れます。
発症してから1週間弱経過すると、重篤な出血傾向を示すようになります。嘔吐物や糞便中に血液が混入したり、鼻や口腔、膣から出血したりします。同時に中枢神経系症状も呈するようになり、意識変容や意識混濁、易刺激性などを示すようになります。重症例では発症後8、9日の経過でショック状態に陥り、死に至ります。
回復後も、ウイルスは精巣や精子、眼球中、羊水中、母乳中などに含まれる可能性があります。基本的に一過性の病気ではありますが、まれに再発することも知られています。
検査・診断
マールブルグ病の診断は、血液や尿などを用いて、ウイルス抗原や、ウイルスに対する抗体、ウイルス特異遺伝子を検出することにより行います。しかし、体液に触れるため、検査者への感染リスクがあります。したがって、検査は特別な施設にて行われます。
治療
2017年現在、マールブルグ病に対しての根治的な治療方法は存在しません。したがって、治療に際しては出現する症状に対しての補助療法を行うに留まります。また、ワクチンによる予防方法も確立されていません。そのため、流行地域にはなるべく赴かないこと、野生のコウモリには触れないこと、などにより感染を予防することが大切です。
マールブルグ病から回復した後も、一定期間は体内にウイルスが潜んでいることが知られています。したがって、感染者の体液には触れないようにする、手を洗うようにする、などの努力が必要です。
精液中にも数か月間ウイルスが混入しており、感染源になる可能性があります。そのため、精液中にウイルスがないことを検査にて確認すること、疑わしいときには性交渉を避けること、コンドームを使用すること、自慰行為後に手をしっかり洗うことなどが推奨されています。
マールブルグ病は、一度発症すると高い確率で死に至る病気です。感染が疑われる状況においては、徹底した検疫を行い、不用意に感染を広げないようにすることが必要です。
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