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ヤング・シンプソン症候群
ヤング・シンプソン症候群とは、特徴的な顔貌や精神遅滞、眼症状、甲状腺機能低下、骨格異常、停留精巣など、多臓器にわたって異常を呈する先天性の症候群です。発症頻度はおよそ10~20万出生に1人程度と...
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ヤング・シンプソン症候群やんぐ・しんぷそんしょうこうぐん

更新日時: 2017 年 04 月 25 日【更新履歴
更新履歴
2017 年 04 月 25 日
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概要

ヤング・シンプソン症候群とは、特徴的な顔貌や精神遅滞、眼症状、甲状腺機能低下、骨格異常、停留精巣など、多臓器にわたって異常を呈する先天性の症候群です。発症頻度はおよそ10~20万出生に1人程度と推定されています。1987年にYoungとSimpsonによってはじめて報告されて以降、原因はわかっていませんでしたが、2011年にKAT6Bが責任遺伝子であることが同定されました。常染色体優性遺伝形式をとる遺伝病ではありますが、家族例の報告はほとんどなく、突然変異により発症した孤発例が大部分を占めます。これまでに数十例の報告がありますが、性差に関してはわかっておらず、今後さらなる検討により明らかにされると考えられます。

原因

2011年、Clayton-Smithらによる患者検体を用いた詳細な遺伝子解析により、ヤング・シンプソン症候群は10番染色体にあるKAT6B遺伝子の異常により引き起こされることが明らかとなりました。KAT6B遺伝子は、クロマチン構造の変化に関わるヒストンアセチル化酵素をコードしています。ヒトのDNAは非常に長く、通常はヒストンというタンパクに巻きつき、さらにそれらが集まってクロマチンという構造を形成して小さく収納されています。ヒストンアセチル化酵素は、クロマチンを構成するヒストンに作用してクロマチンの構造を変化させ、さまざまな遺伝子の発現の制御に関わっています。しかし、KAT6B遺伝子により生成されるヒストンアセチル化酵素の詳細な機能については未だ不明な部分も多く、骨格や神経系などを含む初期発生に重要な遺伝子の制御に関わっていると考えられています。KAT6Bが原因遺伝子として特定されたものの、どのようにして多様な臓器に異常を引き起こすのか、その詳細なメカニズムは現在のところわかっておらず、今後のさらなる研究が求められるところです。常染色体優性遺伝形式をとる遺伝病ではありますが、一部の兄弟例を除いて家族例の報告はほとんどありません。大部分がKAT6B遺伝子における突然変異により引き起こされる孤発例です。

症状

ヤング・シンプソン症候群では、全身にわたって多様な症状が出現します。まず、眼瞼裂が非常に狭くほとんど目が開けられない、頰が膨らんでいるといった特徴的な顔貌が挙げられます。さらに、弱視や涙の通り道である鼻涙管の閉塞といった眼症状を認める例もめずらしくありません。難聴も多く経験されます。精神発達の遅れも認められ、中程度から重度といわれています。また、新生児期より軽度の甲状腺機能の低下を伴います。筋骨格系の異常も認められ、特に内反足は出生時より目立つことも多いです。外性器の異常に関しては、男児において顕著であり、停留精巣や矮小陰茎が認められます。肺動脈(弁)狭窄症などの先天性心疾患を合併する例も見受けられます。目立った脳の奇形は報告されていませんが、一部の患者さんでてんかんを伴います。新生児期の特徴としては、出生後に軽度の呼吸障害を認める例が多く、ほぼ全例で哺乳障害が認められます。しかし、乳児期には徐々に良くなる傾向にあり、経口摂取ができるようになります。哺乳障害が認められますが、経管栄養を行うことで体重増加も正常範囲内を示し、身長は正常かやや低い傾向にあります。この他、胎児期に約7割で羊水過多を認めることも特徴として挙げられますが、発症機序ならびに出生後の症状との関連性についてはわかっていません。

検査・診断

ヤング・シンプソン症候群の診断には、まず特徴的な顔貌や身体所見より本症が疑われます。全身にわたって多様な症状が認められることから、さまざまな検査が実施されます。新生児期には、呼吸機能を評価するための検査や心血管系を評価するための心臓のエコー検査、脳のエコー検査、聴覚検査などが行われます。成長につれて、さらに耳鼻咽喉科や眼科、整形外科など各専門医による継続的なフォローが必須となります。また、原因遺伝子としてKAT6B遺伝子が特定されたことから、本症の確定診断にあたっては遺伝子に異常がないかを検討することもあります。しかし、変異を認めない場合にも、ヤング・シンプソン症候群に特徴的な臨床症状が複数認められる場合には本症と診断されることもあります。

治療

ヤング・シンプソン症候群に対しての根本的な治療方法はありません。全身各種臓器に認められる合併症に対してのアプローチが必要になります。新生児期の呼吸障害は軽度である場合が多く、酸素投与などで対応できる例がほとんどです。哺乳障害に対しては経管栄養が導入されることが多いですが、成長とともに経口摂取が可能となっていきます。内反足に対しては、ギプスによる矯正や、十分な効果が得られない例では手術が適応となることもあります。難聴に対しては補聴器を作成したり、眼症状については必要に応じて眼鏡を作成したりします。甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモンの補充療法が行われます。また、弱視や難聴に加え、精神発達遅滞をともなうことから、早期より多方面からの療育を受けたり、リハビリテーションへ参加したりすることも大切です。