ライム病(らいむびょう)

ライム病とは

ライム病とは、ボレリア(代表的にはBorrelia burgdorferi)と呼ばれる細菌を起因菌とする感染症のことを指します。ボレリアは、ダニの一種である「イクソデス・マダニ(Ixodes)」に咬着されることによって媒介、伝播します。 媒介者となるマダニは、北米を中心に広く分布しており、特にニューヨーク州やコネチカット州、ニュージャージー州など北東部に位置する州においてライム病は好発しています。1990年から2015年までに累計56万人以上の方がライム病を発症したと報告されています。 日本においては感染症法にて4類感染症に指定されており、全数把握対象疾患となっています。日本における近年の動向を見ると、年間10〜20件ほどの発生例を認めており、アメリカほどの流行はありません。しかしながら、媒介者となるマダニは日本にも生息しており、潜在的な流行の可能性は秘めています。 ライム病の症状は、皮膚症状をともなうインフルエンザの様な症状から発症します。病状は数か月から数年の単位で慢性的に進行し、神経や心臓、関節など全身に合併症を生じることもあります。 適切な治療介入を行うことが重要であるとともにダニが発生しないような環境整備、ダニに刺されないような対策、また刺された場合の適切な処置方法をしることも重要です。

原因

ライム病は、ボレリアと呼ばれるスピロヘータ(細菌の一種類です)を起因菌とする感染症です。ライム病に関連したボレリアは、Borrelia burgdorferiが代表的ですが、そのほかにも地域によってはさまざまな種類が存在することが知られています。日本におけるライム病関連のボレリアは、Borrelia gariniiやBorrelia afzeliiです。 ライム病を引き起こすボレリアは、マダニに刺されることから人間に伝播します。ボレリアを周囲に広げうるマダニの種類も地域によってさまざまであり、Ixodes persulcatusと呼ばれるマダニが、日本におけるライム病を伝播する主要なダニです。 マダニに刺されてから最大1か月まで、刺された部位を中心としてボレリアは広がります。このことを反映して、「遊走性紅斑(ゆうそうせい)」と呼ばれるライム病に特徴的な皮膚症状が出現します。その後、リンパ管や血液を介して全身各種臓器にボレリアは広がり症状を引き起こすことになります。

症状

マダニに刺されてから3日から1か月ほどして、ダニの刺咬部を中心として遊走性紅斑と呼ばれる赤みが出現します。遊走性紅斑はライム病の初期症状としてとても特徴的なものであり、8割近い患者さんで認めるともいわれています。遊走性紅斑は時間経過とともにに徐々に拡大していきますが、無治療でも1か月ほどの経過で自然消失します。またこうした特徴的な皮疹時期と一致して、発熱や倦怠感、関節痛、筋肉痛などのインフルエンザ様症状をともなうこともあります。 皮膚局所で増殖したボレリアがリンパや血液の流れに乗り全身に広がると、標的臓器に関連した症状を呈するようになります。具体的には神経であれば脊髄神経炎、髄膜炎、顔面神経麻痺、目であれば角膜炎などです。また心臓に関連した合併症として、重篤な不整脈(完全房室ブロックなど)を呈することもあります。 さらに治癒せずに病状が進行すると、重症な関節炎を呈するようになります。特に膝関節が侵されることが多く、著明な腫れや疼痛をともなうようになります。そのほか、抗生物質感受性の皮膚病変(慢性萎縮性肢端皮膚炎)や慢性中枢神経系異常(気分障害や記憶障害など)を認めることもあります。

検査・診断

ライム病の診断のためには、病原体そのものを検出するために、紅斑部の皮膚や髄液などを用いて培養検査が行われることがあります。そのほか同様の検体を用いて、PCR法と呼ばれる方法で、ボレリア特有の遺伝子の検出を試みることもあります。 またボレリアに感染すると患者さんの血液中には、「抗体」と呼ばれるものが産生されています。抗体は、ボレリアに対して防御反応を示す免疫物質のひとつです。この抗体を検出するために、「ウェスタンブロット法」と呼ばれる検査が行われることになります。この検査は、患者さんの血液中に存在する抗体と、ボレリアが特異的に持つ「抗原」と呼ばれるタンパク質が反応するかどうかを確認する検査になります。

治療

ライム病は抗生物質によって治療します。皮膚症状に対しての第一選択はドキシサイクリンであり、髄膜炎などの神経症状に対してはセフトリアキソンが使用されます。重篤な不整脈が出現した場合には、ペースメーカーが使用されることもあります。関節の腫れが強い場合には、関節穿刺が行われます。 ライム病は、マダニに咬まれることから感染が成立します。そのため、マダニに咬まれないような対応策も重要です。マダニは春から夏にかけて出現するため、この時期においては特に林や草のなかを歩くことを避けることが大切です。また歩く場合であっても、肌の露出ができるだけ少なくなるような服装を心がけましょう。露出した肌の上に、少なくとも20%のDEETを含んだ殺虫剤を塗りましょう。洋服、靴、テントなどにはペルメトリンを含む製品を使用しましょう。殺虫剤をすでに塗られている洋服を購入するのもよいです。ダニのいる地域から帰ってきたら、シャワーを浴びること、服を高熱で乾燥することなども必要です。 マダニは頭を皮膚に埋める形で咬むため、うまく取り除かないと頭の部分が皮膚に残ってしまうことになります。したがって、マダニに咬まれた際にはピンセットを用いて頭の部分から取り除くことが大切です。

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