脳

ランゲルハンス細胞組織球症(らんげるはんすさいぼうそしききゅうしょう)

ランゲルハンス細胞組織球症とは

ランゲルハンス細胞組織球症とは、免疫細胞の一つである「ランゲルハンス細胞」と呼ばれる細胞が異常増殖を来すようになった腫瘍性疾患の一つです。皮膚や骨、骨髄、肺、下垂体など全身さまざまな部位に腫瘍が発生することがあり、病気が発症した部位に応じて多彩な症状が出現します。
ランゲルハンス細胞組織球症は小児に多く、小児慢性特定疾病に指定されている病気です。発症のピークは乳幼児期であり、年間60-70例の新規発症があると報告されています。
同じ病気であっても症状の出現様式はさまざまです。そのため、治療方法も経過観察で済むものもあれば、造血幹細胞移植や化学療法などの積極的な治療介入が必要となることもあります。まれな病気であることに加えて治療方法も多様性に富むため、今後、病気に対しての認知向上と治療方法の開発が期待される疾患です。

原因

皮膚は外的な刺激に常に曝されており、異物の侵入から身を守るはたらきをしています。細菌やウイルスなどが体内に侵入しても対処できるように、「ランゲルハンス細胞」と呼ばれる細胞が皮膚に常駐しています。ランゲルハンス細胞は皮膚を通して侵入してきた異物を食べ、リンパ球と共に異物を処理するようにはたらきかけることになります。したがって、ランゲルハンス細胞は、体を異物から守る免疫機能のなかで重要な役割を果たす細胞といえます。
ランゲルハンス細胞組織球症は、ランゲルハンス細胞が異常を呈するようになり腫瘍性に増殖を来すようになった病気です。異常増殖をしたランゲルハンス細胞は、骨を溶かしたり、全身各種臓器に異常な腫瘤を形成したりするようになり、さまざまな症状を引き起こすようになります。
ランゲルハンス細胞が腫瘍性増殖をするようになる原因としては、遺伝子の関連も指摘されています。具体的には、BRAFと呼ばれる遺伝子に異常が生じることから病気が発症することがあります。BRAF遺伝子は、細胞が適切なタイミングで増殖するように調節するはたらきを持つ遺伝子です。BRAF遺伝子に異常が生じることから、細胞増殖に対しての抑制が効かなくなり、細胞が無秩序に増殖するようになると考えられています。

症状

ランゲルハンス細胞組織球症は、病変が生じる部位に応じてさまざまな症状が出現することになります。単一臓器に症状が出現することもあれば、多臓器に渡って病変が出現することもあります。
単一臓器で症状が出現することが多いのは、骨病変です。肋骨や頭蓋骨、手足など多くの骨に病変が出現し、骨が溶けるようになります。骨の部位によってこぶのように腫れたり、歯が抜けたり、眼球が飛び出したり、ヘルニアを起こしたりなど実にさまざまな症状が出現します。
また皮膚症状として難知性の皮疹を発症することもありますし、中耳炎がなかなか治らないということから診断されることもあります。首のリンパ節の腫れでランゲルハンス細胞組織球症が診断されることもあります。
ランゲルハンス細胞組織球症では、内臓臓器に病変が生じることもあります。骨髄に病変が生じれば、正常造血が障害を受けることになるため、貧血や出血しやすくなる、感染症にかかりやすくなるなどの症状が出現します。肝臓に病変が形成され、肝機能障害をみることもあります。その他、肺病変では咳や息切れ、気胸なども生じます。さらには、下垂体と呼ばれる脳の一部に病変が生じることもあります。下垂体とはさまざまなホルモンを産生する重要な臓器であり、大量の尿が産生されおしっこがとまらないといった症状をみることもあります。また脳の病変として、転びやすい、しゃべることができない、飲み込みにくいなどの症状がでます。

検査・診断

ランゲルハンス細胞組織球症の診断には、病変部位から採取した組織を用いて病理組織診断を行うことが必要です。病理組織検査では、腫瘍性細胞の見た目の変化を観察したり、どういった特徴を有するのかを免疫染色と呼ばれる検査を行うことで確定したりします。
また、ランゲルハンス細胞組織球症は腫瘍性病変であることから、全身各種臓器にどの程度病変が広がっているのかを検索することも重要です。そのため、レントゲン写真や超音波(特にお腹の中の臓器病変検索で有効です)、CT、MRI、骨シンチグラフィーといった画像検査を行うことになります。

治療

ランゲルハンス細胞組織球症の病変は、単一臓器に留まることもあれば、生命活動に重要な組織を含めて病変が広がることもあります。そのため、病気が発生している部位、広がり具合などを総合的に判断した上で、経過観察でもいいのか、局所的な治療介入でいいのか、それとも全身に対して積極的治療介入を行う必要があるのかを決定します。
皮膚や骨などに単一的に小さい範囲で病変をみるときには、経過観察をすることもあります。また、ステロイドやタクロリムスの外用薬を用いたり、外科的に病変部位を切除したりすることもあります。
病変の広がりが大きい場合や重要臓器にて症状を来しているときには、化学療法や放射線療法(脊髄や視神経などに可及的な治療効果が求められるとき)などが行われることになります。骨髄浸潤を来しているときには、造血幹細胞移植といった積極的な治療介入が行われます。