りんぱけいしつさいぼうせいりんぱしゅ

リンパ形質細胞性リンパ腫

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概要

リンパ形質細胞性リンパ腫はまれな、成熟B細胞を由来とするリンパ腫細胞からなるリンパ腫(血液のがんの一種)で、アジア圏では欧米と比較して更に頻度の低い(1/10程度)疾患です。人種的には白人での症例がほとんどで、またやや男性に多い傾向にあります。診断時の年齢中央値はおおよそ65歳です。

また、リンパ形質細胞性リンパ腫の患者さんの多くでM型免疫グログリン(IgM)が異常に分泌されており、このIgMが過粘稠度症候群という一連の症状を呈するほどに高い場合ワルデンストレームマクログロブリン血症と診断されます。

つまりワルデンストレームマクログロブリン血症はリンパ形質細胞性リンパ腫の一種と考えられます。そのため、殆どの症例が白人であること、診断時の年齢中央値が64歳であることなど、疫学的な性質が似通っています。

原因

どちらの病気も他の多くの血液の悪性腫瘍と同じく、はっきりした原因はわかっていません。しかし、C型肝炎ウイルスの罹患者が患者さんに多く含まれる他、自己免疫疾患との関連を示唆する研究結果もあるため、体内での慢性的な炎症が病気の原因となっている可能性があります。

また、ワルデンストレームマクログロブリン血症の方は、殺虫剤や木屑への暴露が病気と関連している可能性があるとの研究もあります。いずれにせよ、何らかの仕組みで一部の成熟B細胞が増殖や生存に有利な遺伝子変異を獲得した結果、腫瘍性(一部の細胞群が正常の範囲を超えて過剰に増殖すること)に増えることで病気につながります。

すでに述べた様に、この二つの病気は重なるところが多く、どちらの病気もほとんどの症例でMYD88という分子の設計図となる遺伝子に変異が見つかります。このMYD88という分子は体内のホルモンとの作用を通じてB細胞の寿命を延ばすはたらきがあり、これが通常より強くはたらくことで病気の原因になる細胞が過剰に増えるのです。

症状

どの様な症状が出るかは患者さんによって異なりますが、リンパ形質細胞性リンパ腫の場合は、リンパ腫細胞から分泌されるホルモンによるB症状(体重減少、疲労感、不眠、微熱、寝汗など)、リンパ腫細胞の浸潤(リンパ腫細胞が固形臓器に侵入していくこと)によるリンパ節腫大、肝臓腫大、脾臓腫大、リンパ腫細胞からの異常な量の免疫グロブリン産生による過粘稠度症候群、末梢神経障害が起こり得ます。1/3程度の患者さんは診断時には症状がなく、別の理由で行った検査の異常な結果に対する精査の過程で診断されます。

ワルデンストレ-ムマクログロブリン血症の場合は、これらに加えて出血症状や眼底検査での異常が認められる場合もあります。過粘稠度症候群というのは、血液のなかで免疫グロブリンという一種のタンパク質が異常に増えることで血液がドロドロになり、その結果として、頭痛、かすみ目、物が二重に見える、視力の低下、めまい、ふらつき、耳鳴り、聴力の低下、まっすぐ歩けないなどの症状を引き起こします。

よくいわれている血液ドロドロ、というのは血液のなかでコレステロールや中性脂肪が増えて心筋梗塞脳卒中につながる状態のことですので、タンパク質が原因の過粘稠度症候群とはやや異なります。末梢神経障害は、主に四肢の先から左右対称性に、ゆっくりと進行していくもので、感覚が鈍くなる、何もないのにピリピリとした感じが続く、或いは力が弱くなる、等の症状を起こします。

検査・診断

血液中の免疫グロブリンの同定、血液細胞数、血液の粘稠度の確認、といった目的で血液検査が、腫瘍細胞の形態を確認したり、腫瘍細胞の浸潤があるかどうかを確認する目的でのリンパ節及び骨髄生検が行われます。

同様に成熟傾向の強いリンパ球細胞から生じる慢性リンパ性白血病/小球性リンパ球性リンパ腫や辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫多発性骨髄腫等と区別することは、病気の予後や必要な治療、予想される合併症が異なるために大変重要になります。

これらを区別する方法は複雑ですが、リンパ節内でのリンパ腫細胞の構造や位置、或いはリンパ腫細胞の表面にあるタンパク質の種類によって区別を行います。上で述べたMYD88の遺伝子変異も、骨髄生検の検体から確認することができ、診断の確定に重要です。

治療

上記の検査で診断が確定された場合でも、病気の進行がゆっくりであること、初期の段階で治療することによる生存期間の延長がはっきりせず、逆に治療に伴う副作用のデメリットが上回ると考えられるため、症状がない場合は血液検査の異常の程度によっては治療を延期します。その際は検査値の異常の程度や病院の方針にもよりますが、4か月~1年に一度程度血液検査を行って病気の進行度合いを確認します。

症状を伴う段階まで病気が進行する際は、診断から5年以内に起こる場合が多く、逆に診断後も血液検査の結果が安定している場合はこれらの病気を持たない方と同程度の寿命が期待できる場合もあります。診断に加えて、上で述べた様な症状が認められる場合は治療が必要となります。

また、症状がない場合でも血液検査で貧血や血小板減少が高度の場合は、病気の進行のリスクが高いと判断して治療を開始します。 現段階ではこの病気は完治が見込めませんので、病気の症状のコントロール、合併症の予防が治療の目的となります。完治が見込めないというと当然ショックを受けられるとは思いますが、高血圧糖尿病脂質異常症といった生活習慣に伴う慢性疾患も完治が見込めない場合が多く、治療の目的は心筋梗塞脳梗塞の予防です。治療にも依りますが、初期治療は長期入院を必要とするものではありませんし肩を落とさないでください。

治療の流れとしては、まず過粘稠度症候群による症状が強い場合は、入院してプラスマフェレーシスという、血液中で多くなり過ぎたタンパク質を除去する治療を行います。血液透析で使用する様な、太い静脈路を確保して透析機で数時間血液を濾過します。

過粘稠度症候群が認められない場合や、プラスマフェレーシスを行なった後は、リツキシマブという、B細胞の表面にあるCD20という分子に特異的に作用する薬剤を中心に、その他のさまざまな化学療法を組み合わせて治療を行います。リツキシマブを投与した直後は、一時的に病気が悪化する場合があるので注意深い観察が必要ですが、これが現在最も標準的な治療法です。

残念ながら時間経過によっていずれは病気が再発しますが、年齢と健康状態によって自己造血幹細胞移植による更なる病気の長期コントロールを目指すことが可能な場合もありますし、別の治療選択肢も現時点で複数あります。

治療後は血液中の免疫グロブリン値を定期的に測定しますが、数値が上がったから必ずしも治療が必要な訳ではなく、症状の再発や貧血、血小板減少の程度が再治療開始の目安になります。最初の治療終了から、症状再発まで3年以上時間が経っている場合は、最初の治療が顕著に有効であったと判断して同じ治療を繰り返します。

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