乳房

乳がん(にゅうがん)

乳がんとは

乳がんとは、乳房に発生する悪性の腫瘍で、近年、患者さんが増加しています。乳がんで死亡する方も多く、2016年の統計では大腸がん、肺がん、膵臓がん、胃がんに次いで5位となっています。なお、乳がんは女性だけのがんと思われがちですが、男性も罹患することがあります。ただし、男性にできる確率は女性に比べ100分の1程度です。

患者さんの多い乳がんは、治療方法の進歩がみられる分野である反面、手術方法・薬物療法ともに複雑な側面があります。たとえば手術ひとつをとってみても、乳房を残すかどうかの選択を迫られることもあり、患者さんが十分に納得できるよう密なコミュニケーションを取り、治療方法を選択していくことが重要です。

また、より早期に発見できるよう、乳がん検診を受けることは重要です。

原因

乳がんは、乳管という部分から発生する「乳管がん」と、小葉上皮という部分からから発生する「小葉がん」の2つに分けられます。発生する割合は乳管がんが8割程度で、小葉がんが1割程度です。

乳がんの発生には、「エストロゲン」という女性ホルモンが関係していると考えられています。

女性ホルモンは、定期的な月経周期、出産や授乳などに関連して分泌が促進されたり抑制されたりします。こうしたことから、

  • 出産経験の有無
  • 出産時の年齢
  • 授乳歴
  • 初経や閉経の年齢

などが乳がんの発症に関与するといわれています 。

また乳がんの発症は生活習慣との関係性についても指摘されています。食生活の欧米化に伴う高脂肪食の摂取や、過度の飲酒や喫煙習慣、運動不足などが乳がんの発症リスクを高めることも知られています。

さらに、乳がんでは生まれつきの遺伝子変異に関連して発症リスクが高まることも知られています。遺伝子に変異を持っている場合、乳がんや卵巣がんにかかるリスクが高まります。ただし、遺伝子異常があるからといって100パーセントがんを発症するわけではありません。

また、反対に遺伝子異常がないから乳がんを発症しないというわけでもありません。乳がんの発症に関連してすべてが解明されているわけではないため、遺伝子異常の解釈については慎重になることが必要です。

症状

乳がんの症状に「乳房のしこり」があります。これは患者さん本人が気付くこともあれば、パートナーが気付くこともあります。

乳がんが進行すると、乳房の形態をかたち作る周辺組織へも病変が広がるため、下記のように乳房の見た目に変化が出るようになります。

  • 乳頭陥没(乳首が陥没してしまうこと)
  • 乳頭・乳輪びらん(乳首やその周囲がただれること)
  • 皮膚の橙皮様変化・陥凹(皮膚がオレンジの皮のようになったり、へこんだりすること)
  • えくぼ兆候(乳房にえくぼのようなくぼみができること)

また、乳首から液体が分泌することもあり、血液成分がみられることもあります。自覚症状がみられるようになった段階では、病状が進行していることもまれではありません。その意味でも、乳がん検診を定期的に受けることが重要です。

検査

乳房にしこりができる病気は乳がん以外にもたくさんあります。これらの病気と乳がんを区別するために、問診や視診・触診、各種画像検査などを組み合わせて診断を行います。

乳がんが疑われる際には

  • マンモグラフィ(乳房のレントゲン写)
  • 超音波検査
  • MRI
  • 生検検査

などが行われます。マンモグラフィでは触っただけでは診断できない、小さなしこりや、しこりになる前の石灰化した微細な乳がんを発見することができます。マンモグラフィは、乳がん検診でも中心的な役割を果たす画像検査です。日本では、40歳以上の方は定期的な検診を受けることが推奨されています。

超音波検査(エコー検査)は、乳房に超音波をあてることにより乳がんを見つけます。乳がんの一部にはマンモグラフィでは判断が困難なものもあり、その際に超音波検査が有用な場合もあります。

検査で乳がんがより疑われた場合、細胞診・組織診を行い確定します。さらに病変部位の細胞を詳しく調べることで、ある種の薬剤に対しての感受性もある程度判別可能となり、薬剤選択のうえで有益な情報となります。

治療

乳がんの治療は、各種画像検査による病変の広がり具合や、組織を用いた細胞の特徴などをもとに、

  • 手術療法(乳房を切除するのか、温存するのか)
  • 放射線療法

を適切に組み合わせて治療することになります。

病気の進行が広がっていない場合は、手術により病変部位を摘出します。局所や遠隔部位での再発の予防を目的として、術後に放射線療法や薬物療法を行うことがあります。

薬物療法には、いわゆる抗がん剤に加えて、内分泌療法や分子標的薬(トラスツズマブなど)といった特殊な治療方法が含まれます。病理検査にてホルモン受容体や、乳がんの増殖に関わる「HER2」と呼ばれるタンパク質の有無を検索します。これらの結果に応じて内分泌療法を行うかどうか、分子標的薬を加えるかどうかを決定します。

遠隔転移がある場合は、根治を得るのは難しく、生存期間の延長とQOLの向上が治療目標となります。手術などの局所治療よりも、全身治療である薬物療法が治療の中心となります。

乳がんでは乳房の摘出を余儀なくされることもあります。乳房を摘出した場合、乳房再建と呼ばれる方法で、乳房を新しくよみがえらせることもできます。

乳がんの治療方法は複雑な面もあり、病状を踏まえた治療方針の決定が重要です。そのためにも患者さんと医療従事者が密なコミュニケーションをはかることが大切です。

 

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